ウィーン少年合唱団2018年日本公演 癒しのオーラが溢れ出す、「天使の歌声」来日公演がいよいよスタート
「天使の歌声」として知られ、約520年の歴史を持つウィーン少年合唱団が、4月28日の兵庫県伊丹市での公演を皮切りに、6月17日まで日本ツアーを行う。今回来日したのはゲラルト・ヴィルト芸術監督を筆頭に、カペルマイスターのジミー・チャン氏が率いるハイドン組のメンバーたちだ。このほど行われた記者会見でヴィルト監督は「再び日本に来ることができてうれしく思う」と挨拶。チャン氏も「前回の初来日の際、日本の聴衆の素晴らしさに感動した。またこうして来られてうれしい」と語り、ジャパン・アーツの二瓶純一代表取締役社長とともに今回のプログラム構成などについて説明を行った。合唱団の少年たちについて語るヴィルト監督やチャン氏の顔は終始和やか。披露された合唱団の音楽共々、心が癒されるような歌声とオーラが壇上から降り注ぐような、そんなひと時であった。
テーマは「動物たち」と「世界の歴史・音楽」、そして「アニバーサリー」
ジャパン・アーツの二瓶純一取締役社長によると、今年のウィーン少年合唱団 2018年日本公演はAプロが「ウィーン少年合唱団と動物の世界」、Bプロが「ウィーン少年合唱団と世界の歴史・音楽」で構成されている。いずれもウィーン少年合唱団の伝統であるグレゴリオ聖歌や、オーストリアを象徴する『美しき青きドナウ』といった曲に加え、Aプロはシューベルト『ます』『夜うぐいす』や『となりのトトロ』、オーストリア民謡『カッコウ』など動物をテーマとした世界中の曲が並ぶ。チャン氏によると日本や中国、ペルーをはじめ7カ国の曲が取り上げられており、「団員が想像力を駆使して楽しんで歌える、ウィーン少年合唱にぴったりのテーマ」という。
ジャパン・アーツ 二瓶純一取締役社長
「世界の歴史・音楽」をテーマとしたBプロには、もう一つ「アニバーサリー(周年)」というテーマも設けられている。これは特別協賛として13年間にわたりウィーン少年合唱団の来日公演を支援してきたキヤノンマーケティングジャパングループが創立50周年となることから、生誕200周年を迎えたグノー、生誕100周年となるバーンスタインや同じく350周年となるクープランなど周年を迎えた作曲家の曲や、「合唱団にとって重要な象徴でありインスピレーションの源である、南アフリカのネルソン・マンデラ元大統領の生誕100周年」(ヴィルト芸術監督)として、南アフリカの民謡もプログラムに組まれている。
このプログラムを通し、「3000年前から歌われていた民謡から現代の歌までを歌うことで音楽が絶え間なく続いてきた歴史を知り、自分たちが今どの時代にいるか、歌を通して知ることができる。全世界を抱きしめているような音楽を目指している」とチャン氏は話す。
さらに「実は」とヴィルト芸術監督が、今回来日しているハイドン組が設立40周年を迎えること、カペルマイスターのチャン氏が40歳を迎えること、そしてヴィルト芸術監督自身がウィーン少年合唱団のハイドン組のメンバーとして、初めて来日したのが40年前と、さらに様々な周年が重なっていることを披露。多様な「周年」の思いが込められたプログラムとなりそうだ。
ゲラルト・ヴィルト芸術監督
500年以上の伝統と歴史を土台に、よりグローバルに。人の心を動かす音楽を
ウィーン少年合唱団はハプスブルク家の宮廷礼拝堂合唱団として1498年に設立された。約520年の歴史のなか、今でも日曜日に宮廷礼拝堂でミサを行い、100人の団員はウィーンのアウガルテン宮殿で寮生活をしながら、モーツァルト、シューベルト、ハイドン、ブルックナーの4つの組に分かれ、それぞれが海外公演などの活動を行っている。
長い歴史の中で団員は多国籍化し、また現在それぞれの組を指導する4人のカペルマイスターは4人とも国籍が違うそう。様々な個性が520年に渡って積み重ねられてきた伝統のもと、よりグローバルに「ウィーン少年合唱団」の歴史を刻み続けている。
世界中を巡りながら様々な言語の歌曲を歌う合唱団員たちは音楽を通じ、実に様々なことを体験し学んでいる。ヴィルト監督は「現代は変化にとんだワクワクする時代であると同時に、大きな困難にも直面している」としたうえで、「マンデラ元大統領も様々な困難に直面しながらもポジティブに人に接してきた。我々も音楽を通し、そうしたメッセージを発していきたい。聴く人々の心を動かす、そのようなパワーをお届けできれば」と話す。
また今回、特別協賛のキヤノンマーケティングジャパンの松阪喜幸取締役専務執行役員が語ったところによると、合唱団のメンバー全員にデジタルカメラを贈ったそう。彼等がこのカメラを使って撮った写真は来日公演の公式ページにアップされる予定で、松阪氏も「昨年も芸術に秀でた人たちは写真のセンスもいいなと思いながら見ていた」という。ウィーン少年合唱団員たちがどのように「日本」をとらえているのか、実に興味深い。ぜひこちらも楽しみにしていただきたい。
キヤノンマーケティングジャパン 松阪喜幸取締役専務執行役員
一通り会見を終えた後、「合唱団員の大好きな曲」として『となりのトトロ』、そしてウィーンらしい1曲としてヨハンシュトラウス2世『トリッチ・トラッチ・ポルカ』を披露した。「世界の今」を全身で体感する団員の歌声は透明で、癒しのオーラが舞台からこぼれてくるよう。その姿を眺めるヴィルト芸術監督と、ピアノを弾き指揮を執るチャン氏の、時々見せる父親のような表情がまた和ましく、ほっこりとさせられた。
ジミー・チャン
ウィーン少年合唱団
ウィーン少年合唱団
ウィーン少年合唱団の日本ツアーは東京をはじめ札幌から福岡まで18都市で開催される。
また5月3日、4日に東京・サントリーホールで行われる公演ではパイプオルガン奏者の鈴木優人氏も参加した特別公演となる。さらにプログラム中に合唱団員によるパフォーマンスも含まれた曲も予定されているそうなので「こちらもお楽しみに」とチャン氏。
ぜひこの機会に「天使の歌声」に癒されていただきたい。
ウィーン少年合唱団