マーティン・マクドナーの最新戯曲『ハングマン HANGMEN』(演出:長塚圭史)東京公演が開幕
『ハングマン HANGMEN』のゲネプロの様子
鬼才マーティン・マクドナーによる最新戯曲『ハングマン HANGMEN』の東京での公演が、2018年5月16日に世田谷パブリックシアターにて始まった。翻訳を小川絵梨子、演出を長塚圭史という強力タッグで臨む。東京初日公演の直前に行われたゲネプロ(※総通し稽古)と囲み取材の様子を写真とともにお伝えする。
富田望生、長塚圭史、秋山菜津子、田中哲司、大東駿介、羽場裕一(左から)
1965年の英国における絞首刑の廃止の余波をマクドナー特有のブラックユーモアを以て描いている本作。2004年以降、かねてから希望していた映画界で創作活動を続けていたマクドナーのロンドンでの待望の演劇復帰作で、15年9月にロンドンのロイヤルコートシアターで幕を開けるや忽ち評判を呼び、同年12月からウエストエンドで上演開始、16年英国演劇界最高の名誉であるローレンス・オリヴィエ賞「BEST PLAY」に輝いた話題作だ。
『ハングマン HANGMEN』のゲネプロの様子
『ハングマン HANGMEN』のゲネプロの様子
『ウィー・トーマス』(03年・06年)、『ピローマン』(04年)、『ビューティー・クイーン・オブ・リナーン』(07年)に続き11年ぶりにマクドナー作品を演出する長塚は、地方紙記者であるクレッグ役として出演もする。
「マクドナーはもともと過激な戯曲を書くかただが、その中でも一番激しく毒々しい作品なのではないかと思う。それでいてコメディーに仕上がっているので、マクドナーの可笑しみを味わっていただけるのではないか。見る人も試される部分がある。楽しみにしていてほしい」と見どころを語った。
『ハングマン HANGMEN』のゲネプロの様子
『ハングマン HANGMEN』のゲネプロの様子
主人公のハリーを演じるのは田中哲司。現在はパブのオーナーだが、最後のハングマン(※絞首刑執行人)だったという難しい役どころ。田中は「稽古を重ねて、僕らができる範囲の最高のものが仕上がったと思う」と自信を見せる。
作品の魅力について尋ねると、出演者からは戯曲の面白さを称賛する声が多く聞かれた。
ハリーの妻・アリスを演じる秋山菜津子は「独特で、とても完成された本。長塚さんの演出にしっかりついてみんなで仕上げていきたい」と語り、ムーニーという謎めいた若い男を演じる大東駿介も「本当に本が面白い。今回、日本初演いうことで、製作段階からみんなで関わらせてもらった。そういう経験が初めてなので、すごく楽しかった」。
『ハングマン HANGMEN』のゲネプロの様子
『ハングマン HANGMEN』のゲネプロの様子
ハリーの娘・シャーリーを演じる富田望生は本作が初舞台。「大先輩の皆さんにたくさん支えられて、素敵な愛をたくさんいただきながら、可愛らしいシャーリーが育ったなぁと思うと、すごく嬉しい」とフレッシュなコメント。舞台上では15歳の思春期の女の子という難しい年代の芝居を丁寧かつ可笑しみ溢れる演技で見せてくれた。
※関連記事:『ハングマン』で舞台初出演の富田望生がSPICE編集部にやってきた!「ずっと舞台をやりたかったんです」
『ハングマン HANGMEN』のゲネプロの様子
『ハングマン HANGMEN』のゲネプロの様子
1幕80分、2幕60分(途中休憩あり)。ユーモアと毒が満載の本作をぜひ劇場でご覧いただきたい。
取材・文・撮影=五月女菜穂
公演情報
■作:マーティン・マクドナー
■翻訳:小川絵梨子
■演出:長塚圭史
■出演:田中哲司 秋山菜津子 大東駿介 宮崎吐夢 大森博史 長塚圭史 市川しんぺー 谷川昭一朗 村上 航 富田望生 三上市朗 羽場裕一
■公演日程:2018年5月12日 (土) ~2018年5月13日 (日)
■会場:彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
【東京公演】
■公演日程:2018年5月16日 (水) ~2018年5月27日 (日)
■会場:世田谷パブリックシアター
【豊橋公演】
■公演日程:2018年6月9日(土)〜6月10日(日)
■会場:穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
【京都公演】
■公演日程:018年6月15日(金)〜6月17日(日)
■会場:ロームシアター京都 サウスホール
【北九州公演】
■公演日程:2018年6月21日(木)〜6月22日(金)
■会場:北九州芸術劇場 中劇場
1963年。イングランドの刑務所。ハングマン=絞首刑執行人のハリー(田中哲司)は、連続婦女殺人犯ヘネシー(村上航)の刑を執行しようとしていた。しかし、ヘネシーは冤罪を訴えベッドにしがみつき叫ぶ。「せめてピアポイント(三上市朗)を呼べ!」。ピアポイントに次いで「二番目に有名」なハングマンであることを刺激され、乱暴に刑を執行するのだった。
2年後。1965年。イングランド北西部の町・オールダムにある小さなパブ。死刑制度が廃止になった日、ハングマン・ハリーと妻アリス(秋山菜津子)が切り盛りする店では、常連客(羽場裕一・大森博史・市川しんぺー・谷川昭一朗)がいつもと変わらずビールを飲んでいた。新聞記者のクレッグ(長塚圭史)は最後のハングマンであるハリーからコメントを引き出そうと躍起になっている。そこに、見慣れない若いロンドン訛りの男、ムーニー(大東駿介)が入ってくる。不穏な空気を纏い、不思議な存在感を放ちながら。
翌朝、ムーニーは再び店に現れる。ハリーの娘シャーリー(富田望生)に近づいて一緒に出かける約束をとりつけるが、その後姿を消すムーニーと、夜になっても帰って来ないシャーリー。そんな中、ハリーのかつての助手シド(宮崎吐夢)が店を訪れ、「ロンドン訛りのあやしい男が『ヘネシー事件』の真犯人であることを匂わせて、オールダムに向かった」と告げる。娘と男が 接触していたことを知ったハリーは…!
謎の男ムーニーと消えたシャーリーを巡り、事態はスリリングに加速する。