古着や傘などをモティーフにした繊細なインスタレーション 平野薫の美術館初個展『記憶と歴史』開催

2018.5.21
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Photo by LWL-Industriemuseum / Martin Holtappels

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ポーラ美術館(神奈川県・箱根町)の現代美術を展示するスペース「アトリウム ギャラリー」 第5回目の展示として、『平野薫―記憶と歴史』展が、2018年7月22日(日)〜9月24日(月)まで開催される。

《untitled –rain DDR–》(部分)2014年 素材:傘 Installation view : Arts Maebashi, Gunma Photo by Shinya KIGURE

平野薫は、古着や布製の小物などを糸の一本一本にまで分解し、それらを展示空間の中に再構成する繊細なインスタレーションを手がけてきた。ドレスや下着、靴、傘といった身の回りのモティーフは、元々の素材である糸の状態に戻されることで、撚れ(よれ)や色褪せを一層顕在化させ、それを身に付けていた人の「気配」や「身体性」、そして個人の「記憶」を強く感じさせる。

《untitled –rain DDR–》 2014年 素材:傘 Installation view : tim|State Textil and Industry Museum Augsburg Photo by Felix Weinold

《untitled –rain DDR–》 2014年 素材:傘 Installation view : tim|State Textil and Industry Museum Augsburg Photo by Felix Weinold

本展覧会では、身近なモティーフから漂う個人の記憶や経験を扱いながらも、それを歴史という大きな流れの中に還元していくことをテーマとし、新作3点を含む計4点を展示。3点の傘(旧作1点、新作2点)を組み合わせたインスタレーションでは、作家が留学したドイツの傘(旧東ドイツ製)と、故郷・長崎、そして現住地・広島で入手した傘を使用している。3つの都市で出会ったモティーフのインスタレーションが重なることで、これらが歴史的に強い意味を持つ場所であることを想起させる。

新作参考イメージ

また本展では、工業用のミシンや糸を使った新作インスタレーションも発表する。本作品はこれまでの平野の作風とは大きく異なる、新たな展開を予見させるもの。戦時中の重機製造にルーツをもつメーカーのミシンを用い、戦後日本の高度経済成長を支えた工業機器と、私たちが日々消費する衣服や繊維との関係性、そして近代日本の歴史を暗示するかのような作品を試みる。個人の記憶を歴史の中に還元すると同時に、歴史という漠然とした概念が「誰かの記憶や経験の集積」であることを、観る者に強く訴えかけることだろう。

 

アーティスト情報

平野 薫(ひらの・かおる)

Photo by LWL-Industriemuseum / Martin Holtappels

1975年長崎県生まれ。広島市立大学大学院修了(2003年)。古着などを糸の一本一本にまで解き、再構成する繊細なインスタレーションを手がける。第1回shiseido art egg賞受賞(2007年)。ACC日米芸術交流プログラムによりニューヨークにて研修(2008年)、文化庁新進芸術家海外研修制度によりベルリンにて研修(2009年)、ポーラ美術振興財団在外研修員としてベルリンにて研修(2010年)。主な展覧会に、「Re-Dress」SCAI THE BATHHOUSE(東京、2012年)、「服の記憶」アーツ前橋(2014年)、「Remembering Textiles」LWL-Industriemuseum TextilWerk Bocholt(ボホルト(ドイツ)、2016年)、「交わるいと」広島市現代美術館(2017年)など。

イベント情報

『平野薫―記憶と歴史』展
会期:2018年7月22日(日)~9月24日(月)
開館時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:無休※展示替えのための臨時休館あり
会場:ポーラ美術館「アトリウム ギャラリー」
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