森公美子「オダ・メイが私を選んでくれたのかも」ミュージカル『ゴースト』インタビュー
森公美子
1990年に公開され、世界中で大ヒットした映画『ゴースト/ニューヨークの幻』のミュージカル版がついに日本初演される。2018年8月5日(日)から東京・日比谷シアタークリエにて上演されるミュージカル『ゴースト』にて、映画版ではウーピー・ゴールドバーグが演じた占い師オダ・メイ役を森公美子が演じることとなった。ウーピーを尊敬してやまない森が本作にどのような想いを抱いているのか。話を伺ってきた。
なんて私にぴったりの役!
ーーまずはお話がきた時のお気持ちからお聞かせください。
「『ゴースト』を日本でやるんだけど……」と聞いたときに「イェーイ!」って思いました。だって、私にモリーの役が来るとは思えないでしょ? もしも私がモリー役をやったら、あの有名なろくろを回すシーンで後ろからサム役の人がバックハグした時に「腕が届かなーい!」ってなっちゃうでしょ?(笑)
ーー(笑)。
そうなるとウーピーがやったオダ・メイ役しかないでしょう! インチキ占い師の役ね。これ、映画版だけでなくブロードウェイ版のオダ・メイ役の人も皆体格のいい年配の女優がやっているんですよ!
森公美子
ーー森さんにとっては『天使にラブソングを~シスター・アクト~』に続いて、またまたウーピーさんがやった役をゲットされたんですね。
はい、射止めました(笑)。
ーーものすごく嬉しそうですね!
もちろんですよ! なんて私にぴったりの役を選んでくれたんだろうって思いました。
ーーそれならば、この調子でウーピーさんの出演作を制覇していく、というのもおもしろいかも!?
それが出来るなら本当にいいですよね。でも絶対射止められない役があるんですよ。『カラー・パープル』のセリー役。あれは15歳くらいの役だからさすがに無理だわ(笑)。
ーー確かにそれは(笑)。
でも、何故この作品を8月に上演することにしたんだろう……まさかお盆の時期だから!? 霊が戻ってくる時期だから、わざとこの時期にぶつけたのかしら!?
ーーシアタークリエに古今東西のゴーストが大集合してしまいそうです(笑)。
オダ・メイの「かわいらしさ」を伝えたい
ーー元々映画作品をミュージカル化したのが本作ですが、ミュージカル化したことでさらに作品の魅力が増した、と感じる部分がありますか?
例えばオダ・メイが初めて登場するシーン。モータウン系のノリのいい音楽の中、「ハレルヤ~私はオダ・メイ~呼びましょう会いたい人を~♪」などと気持ちよく歌っているところに、ゴーストになったサムが「いんちき!」と横から声をかけるんです。その場にいるオダ・メイの姉妹たちをはじめ、オダ・メイ以外の人にはその声が聞こえてないから、「え!? 何を言ってるの! いなくなってよ!」などと一人空を見つめながらサムとバトルしている場面は映画版以上に楽しくなっていると思いますよ!
また、モリーが昔の写真を見てふと想いにふけっているときの気持ちがそのまま歌になっていたり、サムが運ばれた病院で出会った他のゴーストとの会話なども歌になっているんです。登場人物の愛情表現や想いがうまく歌になっているんです。
ーー森さんから見たオダ・メイってどんな人物と捉えていますか? これから始まる役作りにも関わってくると思いますが。
オダ・メイは本当にかわいい人なんです。サムと手を組んで、銀行で詐欺をする場面があるんですが、ものすごい金額が記載された銀行小切手を手にした後、ショッピングに行こう! あれもこれも買おう! どこかに旅行しよう! などとオダ・メイが浮かれちゃうんですが、そのお金は教会への寄付に使うようサムに言われしぶしぶ従う……でも寄付金を集めているシスターに小切手を手渡す時、最後の最後までぎゅーっと小切手を掴んだまま離さないんです。その表情や心情も含めてものすごくかわいいんです。
オダ・メイ
ーー本作で演出を担当するダレン・ヤップさんとは作品作りについて今はどのような話をしていらっしゃいますか?
今はまだ歌稽古の段階ですが、歌詞についてダレンにこんなリクエストをしているんです。例えば「オーマイガー!」とか「オッケー!」「カモン!」って表現は英語だけど、日本人でも普通に分かるし使うこともあるでしょ? だから無理に日本語に訳さないでそのままでやるほうがいいよって話をしたんです。ダレンは「ええっ、そうなの?」って驚いていましたが。「日本初演」となる作品は皆で細かいところまで考え、相談しながら進めていかないといけないと思うんです。『シスターアクト』の時にも感じましたが、なんでもかんでも日本語に訳すと歌のリズムが崩れてしまうんです。すべての言葉を日本語にしなくてもいいんです。今の日本人が自然に楽しめるような作品にしていければ、と思います。
ーー映画版で表現されていた、様々な超常現象をこの舞台ではどのように見せるんでしょうか? その辺りの演出案は聞いていますか?
なるべくアナログでやろうとしているみたいです。ブロードウェイ版やウエストエンド版のように映像技術を使って表現することもできると思いますが、日本公演では極力取り払ってアナログでやりたいようです。例えばセットが透明になっていて、いつもサムが部屋の中を見ることができるようになっているとか……。
あ、でも映画版でオダ・メイがサムに身体を貸す場面はどう表現するんだろう?映画だとオダ・メイの身体にサムが入った直後、サム役の人にすぐ変わっていたけど、舞台だと……オダ・メイの背後からサムがすっと入ってきて、モーリーの手を握る場面で、また「……手が届かなーい!」ってことになるかも(笑)。
ーー冒頭の話に戻ってしまいましたね(爆笑)。
森公美子
サム役・浦井健治との共演は?
ーー先日WOWOWで放送された『生中継!第72回トニー賞授賞式』で、サム役の浦井さんがゲスト出演され、一足早く『ゴースト』の主題歌「アンチェインド・メロディ」を歌っていらっしゃいました。聴いていてふと思ったんですが、この楽曲、結構音域が広くて難しいんじゃないでしょうか?
そうですよね。この歌は声の音域が広い人でないと大変だと思うんです。何より高音ですから、なかなか手強い楽曲でしょうね。私も音域は広い方ですが、それでも大変なので、今から喉を整えておかないと、と思っています。TV番組用の声とミュージカル用の声は全然違うんです。まあ、一週間もあれば元に戻るんですけどね。あとは歌のどの部分で「うなり」を入れたらいいのかを探していかないとね。
ーーところで、サムはモリーの彼氏ですが、死んでゴーストになってからは自分の言葉が聞こえるオダ・メイの側にいちばん長くいる存在になりますよね……イケメンの浦井さんがずっとそばにいてくれるのは、芝居とはいえちょっと嬉しいものですか(笑)?
そうね(笑)。本来はゴーストだからサムが見えない(という設定の)はずなんですが、浦井くんのまぶしいオーラで私が見えなくなってしまうかも! あ、逆に、私の後ろに浦井くんがいたら「(森さんに)かぶって見えませーん」ってなるかも!? あのイケメンオーラを私が全身で隠してしまうかもしれない(笑)。
森公美子
オダ・メイが私を選んでくれたのかもしれない
ーー森さんはこれまでの様々なインタビューの中でゴーストのような存在が見えてしまう、とお話されてきましたが、本当なんですか?
見えてしまうんです。私だけでなく、母もそのまた母もそのまたまた先の母も……ひいおばあちゃんまでがそういう存在を見る力を持っていたと聞いています。私は比較的見えていて、「そこに男の子、いるよね?」マネージャーが「いません」「黄色いコートを着ている子がそこにいる……」ってやり取りがしょっちゅうあるんです。怖いタイプのゴーストはバシッと切りますが、その男の子のような悪さをしないゴーストとは「じゃあまたねー!」と明るく手を振っています。ああ、そういう意味ではゴーストではないけど、“オダ・メイ”という存在が私を選んでくれたのかもしれないですね。運命と言う方が正しいかもしれないですが。
ーー最後に本作に向けての意気込みをお願いします。
私としましては、この日本初演となるミュージカル『ゴースト』を、いつか帝国劇場で上演できるくらいの大作にしたいと思っています。何より音楽がどれも最高に素敵で! 最後のあの場面の曲なんてきゅーっと涙が出るくらい素晴らしいんですよ!
森公美子
取材・文・撮影=こむらさき
ヘアメイク:中田有美
公演情報
■日時:
【東京公演】2018年8月5日(日)~31日(金)日比谷シアタークリエ
【大阪公演】2018年9月8日(土)~10日(月)サンケイホールブリーゼ
■音楽・歌詞:デイヴ・スチュワート&グレン・バラード
■演出:ダレン・ヤップ
浦井健治、咲妃みゆ/秋元才加(Wキャスト)、平間壮一、森公美子
松原凜子、松田岳、栗山絵美、ひのあらた
大津裕哉、岡本悠紀、小川善太郎、木南清香、コリ伽路、島田彩、丹宗立峰、千葉直生、土倉有貴、西川大貴、湊陽奈