【訃報】俳優の常田富士男さん 享年81

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2018.7.19
常田富士男さん 『スパイものがたり』(1997年、再演)より

常田富士男さん 『スパイものがたり』(1997年、再演)より


俳優の常田富士男(ときた・ふじお)さんが2018年7月18日(水)午後、東京都内の病院で死去した。81歳だった。数カ月前から脳出血で入院していた。通夜、葬儀は近親者のみで執り行う。

常田さんは1937年1月30日長野県で生まれ、各地を転々とした後、小学3年時より熊本県阿蘇郡南小国町で育った。熊本県立済々黌高等学校定時制を卒業後、上京し劇団民芸の養成所に入所。1969年に米倉斉加年らと劇団青年芸術劇場(青芸)の結成に参加、劇作家・別役実の『象』(1965、改作再演)等で主演。また、古林逸朗の演劇企画集団66に参加し、『堕天使』(1966、初演)、『赤い鳥の居る風景』(1967、初演)、『スパイものがたり』(1970、初演)等、数多くの別役実作品に出演した。また、別役実のエッセイ『虫づくし』をNHK-FMのラジオドラマ枠で朗読(1979)、好評を博している。唐十郎が主宰し作・演出を務める劇団状況劇場の『時夜無銀髪風人(ジョン・シルバー)』(1967)、『ユニコン物語 台東区篇』(1978)にも出演している。

『スパイものがたり』1970年初演当時の宣伝写真

『スパイものがたり』1970年初演当時の宣伝写真

名だたるテレビドラマや映画に数多く出演、とくに市川昆監督に重用され、計13本の作品に出演した。一方、1969年からテレビ放送されたギャグ番組『巨泉・前武のゲバゲバ90分!!』や、その子供向き版ともいうべき『カリキュラマシーン』(1974~1978)における独特の喜劇演技はお茶の間の注目を大いに集めた。さらに、味わいのある声と語りによって、常田さんの存在感を不動のものへと高めたのが、市原悦子と共に声優を務めたアニメ『まんが日本昔ばなし』(1975~1994)だった。近年は「常田富士男の民話劇場」などの朗読公演を各地で精力的におこなった。

ミュージカル『スパイものがたり』などでも喉を披露していたが、歌手としてシングルレコード『私のビートルズ』(1970)をリリースしたこともある。また、1977年には保谷市長選挙に無所属で立候補したが落選した。

常田富士男「私のビートルズ」(日本コロンビア)

常田富士男「私のビートルズ」(日本コロンビア)

1986年、第4回日本アニメ大賞声優部門特別演技賞受賞。1995年、第30回モービル児童文化賞受賞。

(左から)宮沢章夫、平田オリザ、別役実、ケラリーノ・サンドロヴィッチ、常田富士男、古林逸朗、小室等(1997年、青山円形劇場)

(左から)宮沢章夫、平田オリザ、別役実、ケラリーノ・サンドロヴィッチ、常田富士男、古林逸朗、小室等(1997年、青山円形劇場)

SPICE編集部は、ここに謹んでお悔やみ申し上げます

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