グロリア・エステファンの楽曲で彼女のトゥルー・ストーリーを描くミュージカル『オン・ユア・フィート!』 主演の朝夏まなと、相手役の渡辺大輔を直撃
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(右から)朝夏まなと、渡辺大輔
世界的歌姫グロリア・エステファン。キューバからアメリカに移住した彼女は、夫となるエミリオが率いるバンドと共に「コンガ」を始めとする数々のヒットを飛ばし、スターになるが、大事故に遭ってしまう――。実話をもとに、彼女のナンバーでつづるブロードウェイ・ミュージカル『オン・ユア・フィート!』日本初演でグロリアを演じる朝夏まなとと、エミリオ役をダブルキャストで演じる渡辺大輔が作品への思いを語った。
ーーグロリア&エミリオ・エステファンにはどんなイメージがありましたか。
朝夏:宝塚時代に「コンガ」を歌い踊ったときがあるのですが、ノリノリ、アゲアゲのラテン・ミュージックで、とても楽しくて。今回この作品のお話をいただき、あの方の曲だったんだと再確認したという感じです。
渡辺:僕も同じで、お名前より先に曲を知っていたという状態です。いろいろ調べていくと、とても明るいオーラで人を包み込む方なのかなと。グロリアも、その周りの人たちも、波乱万丈な中で彼が支えている。探してもなかなかいないような存在だなという印象を受けました。
朝夏:それが実在の人で、しかもご健在ですもんね。
渡辺:すでに亡くなってしまった伝説の方を描く作品は多いですけど、まだ実在し活躍されている方が題材という点が作品としても珍しいなと。朝夏さんはアメリカまで観に行かれたんですよね?
朝夏:そうなんです。先にCDを聴いていて、実際に観たら、舞台からのエネルギーとパワーがすごくて、思わず立ち上がってしまう感じでした。最後も歓声がフォーってあがって!
朝夏まなと
渡辺:日本でもお客さんがそうなるといいですよね。
朝夏:これ、向こうでエミリオさんを演じていた方とのツーショットです(と、渡辺に写真を見せる)。
渡辺:うわ~、まさに僕のイメージするエミリオって感じだ~(笑)。このエミリオ感、出せるかな。まずは大人っぽい雰囲気を醸し出せるようになるのが目標ですね。事故後のグロリアを支えるところでは、ぐっと大人の男性の雰囲気を出していきたいなと。実年齢は朝夏さんより上なので、引っ張れるところはしっかり引っ張っていきたいと思っています。同じくエミリオ役でダブルキャストの相葉裕樹くんも含め、周りのすばらしいキャストの方々ともしっかりセッションして作っていきたいですよね。
ーー楽曲についてはいかがですか。
渡辺:知っているのはやっぱり「コンガ」かな。
朝夏:一番メジャーですよね。
渡辺:日本でもどこかしらで流れていて。
朝夏:この前入ったお店で流れてました(笑)。
渡辺:よく聞きますよね。勝手にステップを踏んでしまいたくなる雰囲気で、そういう曲がこの作品では非常に多いので、最初から最後まで観る方には楽しんでいただけると思います。シリアスな場面ももちろんありますが。
朝夏:私、ブロードウェイで観たときけっこう泣いたんですよ。彼女が音楽と向き合うところ、それから、家族問題のところ。歌手になることに反対していたお母さんとうまく行かなくて、でも歌いたくて、エミリオに見出されて歌手になるんだけれども、お母さんとの確執がずっとある。それから忙しくなりすぎて家族の間がぎくしゃくしたりということがあって、そして事故に遭う。そこでグロリアも、エミリオも、お母さんも、いろいろなこと、本当に大切なものって何なのかということに気づいていくんです。愛情が深い家族の話だから、そこで泣きましたね。そしてダンス・ナンバーもすごいんですよ。
渡辺:激しそうですよね。一つひとつきっちり構築していって、家族愛の話もしっかり描き出しつつ、毎公演とにかくお客様にラストは立ち上がって楽しんでいってほしいです。
(左から)朝夏まなと、渡辺大輔
ーー渡辺さんからさきほど「引っ張っていきたい」発言も出ました。
朝夏:『マイ・フェア・レディ』では相手役が年上の方だったので、同世代の方々と一緒にセッションして作品を作っていくという経験も初めてで、とても楽しみです。渡辺さんも相葉さんも全然カラーが違う感じになるのかなと思うので。
渡辺:そうですね。絶対両バージョン楽しめるものになると思うので、お客様には二回観ていただいて(笑)。
ーー今回初共演になりますが、お互いの印象はいかがですか。
渡辺:『1789 -バスティーユの恋人たち-』を観に来てくださって、ご挨拶したのが初めてです。今日もそうですがとても華やかな印象です。僕は一度壁がなくなると全然距離のない状態になるので、逆に、「暑苦しいからやめて」と言われないように気を付けます(笑)。
朝夏:(笑)
渡辺:夫婦役ですし、それだけ熱くいきたいっていうのがあります。
朝夏:『1789 -バスティーユの恋人たち-』を拝見したときも、すごく熱い方だなって思ったんですよね。すてきだなと思って楽屋に行ったら、すごく腰の低い方で。そのギャップにびっくりしました(笑)。ものすごく深いお辞儀で、挨拶してくださって。渡辺さんは『京の螢火』にも出演されていましたけれども、そのとき共演していた桜乃彩音ちゃん、私の同期なんです。それで、渡辺さんのこと、「すごくいい方だよ」って言っていて。
渡辺:嘘つけ~って連絡しなきゃ(笑)。お会いしたのは今日が二回目。これからお稽古を通じて関係をもっともっと深めて、いろいろ吸収し、切磋琢磨していけたらいいなと思います。
ーー朝夏さんはブロードウェイ版をご覧になって、グロリアの生き様についてはどう感じられましたか。
朝夏:お仕事と家族の狭間で揺れ動くことって、多くの女性にあることだなとも思いますし、そこで彼女がすごいところは、周りの方が彼女を絶対に放っておかないというくらい、才能も含め、すごくまっすぐなものをもっているからなんですよね。事故にあっても、そこで決してあきらめない、絶対に自分の力で立ち上がろうとする。その強い精神力が、今でも愛されている所以、世界でも、日本でも広く知られている所以なんだろうなと。その意志の強さは女性として憧れます。そこを体現していきたいですね。
渡辺:最初こそエミリオがグロリアの才能を見出して引っ張っていくのですが、歌が上手いだけではなくて、彼女に人としての魅力があるから誰も放っておけないのだろうなと。いつの時代も女性っていざとなったら強いですよね。そういう意味では、エミリオの方が支えられている部分もたくさんあるのかもしれない。結婚して、子供が生まれ、ぎくしゃくする時期もある、そのあたりのリアルな夫婦像を描き出していきたいですよね。エミリオの懐の深さも出していきたいですし、朝夏さんが体現するグロリア像を、一言一句逃すことなくとらえて寄り添っていきたいです。あとはすばらしい楽曲を聴いていただきたいですよね。
渡辺大輔
朝夏:バラードもすごくいい曲が多いですよね。最初にCDを聴いたときも、舞台でもすごく心に残ったのが、1991年のアメリカン・ミュージック・アワードで歌う『Coming Out of The Dark』なんです。実際と同じブルーのドレスで歌って、すべての苦難を乗り越えた先に見える光みたいなものが描かれていて、感動しました。
ーー移民問題や、音楽業界における人種問題といったものが描かれる作品でもあります。
渡辺:現実に今もそういった問題と闘いながら生きていらっしゃる方が多いと思います。乗り越えていく上で大切になってくるのが、人と人とのつながりなんじゃないでしょうか。この作品でいえば、グロリアとエミリオの夫婦愛であったり、人を助けたり、助けられたりして、支え合う様子が描かれています。
朝夏:あと、この作品ってこのシチュエーションではこの曲という感じで、グロリアの曲が場面場面で物語に見事に当てはまっているのがすごいなと。ダンス・ナンバーもすごくて、その上で、芝居部分も充実しているなと思ったんです。笑えるところもあるし、泣けるところもあるし、ちょっとハラハラしたり、本当にいろいろな要素が含まれていて。でも、これが実話なんだと思ったら、ものすごいことだなと感じて。いろいろな感情が芽生える、完成されているミュージカルだなと思います。
渡辺:曲だけでなくそういう芝居部分、ストーリーが充実しているミュージカル作品っていいですよね。
朝夏:グロリアとエミリオの出会いから、好きになって、結婚して、そこが繊細に赤裸々に描かれていて。そのシチュエーションにはけっこうキュンキュンしますよね。お母さんの反対も乗り越えていく、それはやっぱり、熱いラテンの血が流れているからだと思うんです。そこを私たちも血をたぎらせて演じたいなと。発散系を舞台で演じるのは大好きなので、ノリノリで取り組みたいですね。
渡辺:ノリノリで楽しめるところとシリアスなところ、その幅を広く表現できる作品にしたいですよね。
朝夏:私はリアルな感情、そのとき生まれたものを積み重ねていって大事にしたいタイプなので、一緒にお芝居できるのがとても楽しみです。私自身、この作品への出演が決まったときからうずうずしていて、すばらしいキャストの方々と一緒に日本初演の舞台を作り上げていくのが楽しみで仕方ないです。12月で外は寒いですけれども、シアタークリエの中は暑いぞという感じで、『オン・ユア・フィート!』旋風が巻き起こるくらいのパワーを体感しに来ていただければと思っています。
(右から)朝夏まなと、渡辺大輔
ヘアメイク=タナベ コウタ(朝夏まなと)
スタイリング=菊池志真(朝夏まなと)
ヘアメイク=高橋純子(渡辺大輔)
スタイリスト=永尾将宗(渡辺大輔)
取材・文=藤本真由(舞台評論家) 撮影=岩間辰徳
公演情報
音楽/歌詞/編曲:グロリア・エステファン/エミリオ・エステファン
翻訳/訳詞/演出:上田一豪
振付:TAKAHIRO/藤林美沙/金光進陪
<福岡公演>
2019年1月4日(金)~6日(日)博多座
お問い合わせ:博多座電話予約センター 092-263-5555
<愛知公演>
2019年1月9日(水)~10日(木)刈谷市総合文化センターアイリス 大ホール
お問い合わせ:キョードー東海 052-972-7466
<大阪公演>
2019年1月17日(木)~20日(日)梅田芸術劇場シアタードラマシティ
お問い合わせ:梅田芸術劇場 06-6377-3888