テニスコートのコント公演『パリドライビングスクール』開幕直前、記念座談会

小出圭祐、神谷圭介、吉田正幸の3名が武蔵野美術大学在学中に結成したコントグループ、テニスコート。彼らの新作コント公演『パリドライビングスクール』が、2019年1月24日（木）より27日（日）にかけて上演される。2017年『水をたくさん飲んできたので結構』、2018年『浮遊牛』に続き、今回も会場は渋谷のユーロライブ。

出演者には、テニスコートの3名に加え、第一回公演以降、すべての本公演に出演してきた山口ともこも名前を連ねる。構成・演出は、ポテンシャル聡。初日を間近に控えた出演者4人が、今回の上演を記念して、各々の運転免許証を片手に、教習所に込める思いを語った。

なお座談会では、公演内容や彼らの作風について語られることはほとんどなかった。テニスコートに興味はあるけれどまだ観たことがない方、作風を知りたい方は、文末に紹介する前回公演の動画を参考にしてほしい。

ドライビングスクールの思い出

神谷　テニスコートのコント公演『パリドライビングスクール』が、1月24日からはじまるわけですが、皆さん、教習場の思い出ってありますか？ 僕と吉田君は、大学一年の夏、一緒に合宿で免許をとったんだよね。

吉田　鳥取の自動車教習所に、2週間くらいの合宿で。思い出は色々あるけれど、鳥取っていうのが……。

神谷　そう。鳥取というのが良くなかった。鳥取という県の印象が悪くなる合宿だったね。

吉田　そうは言ってません。

神谷　言ってない？

吉田　一番記憶に残っているのは、教習所の周りに繁華街も観光できるところも何もなかったこと。あまりにも何もないから鳥取出身の知り合いに電話をして、鳥取の人はどこで遊ぶのかを聞いたら「島根」ってアドバイスされて。

神谷　学生服くらいまでの子供と、おじいちゃんおばあちゃんしかいないらしいんです。若者は中学高校を卒業すると他県にいってしまうから、遊ぶ場所もない。鳥取は。

小出　鳥取ではなく、教習所の話は？

吉田　路上教習中に、教官が急に車を停めさせて「ちょっと待ってろ」ってどこかにいっちゃったことがありました。しばらくしたら診療所の看板がある建物から処方薬をもって出てきて。

山口　私用？

吉田　牧歌的だなと思いました。

神谷　そういうところなんですよ、鳥取は。

食事の思い出

小出　鳥取じゃない話はないの？

神谷　あと、記憶に残っているのは食事。宿泊先はビジネスホテルだったけれど、食事は、近くのさびれた旅館の洗濯物が干してあるような和室で用意される。それが毎食、本当においしくない。しなびたケチャップライスと、全然美味しくないひじきの小鉢。必ずひじきがついてくる。

吉田　だから1回だけ反抗したんだよね。「今日は僕らはいりません」って。

小出　わかった。焼肉に行ったんだ。

神谷　いや。町の中華屋さん。でも1週間ぶりの外の食事だったから「食べ物で、こんなにも人の気持ちは明るくなるんだ」って体感した。

小出　映画『免許がない！』だと、舘ひろしが2日目に1人で焼肉を食べにいくんだよね。帰ってきたら匂いでバレて、「お前！」って周りにやられるんだけれど……。やられた？

吉田　やられない。

神谷　小出さん、映画の話をしたかっただけだよね。

免許合宿の娯楽

小出　じゃあ、楽しかった思い出は？

吉田　意識なし。

小出　意識なし？

神谷　人命救助の講習ね。人形を相手に、みんなやったでしょ？

山口　人命救助はやったけど、「意識なし」は記憶にない。

神谷　（肩を叩く仕草で）とんとんとん。大丈夫ですかー。とんとんとん。大丈夫ですかー。とんとんとん。大丈夫ですかー。3回やって返事がなければ「意識なし」って指差し確認。

吉田　流行ったよね。

神谷　すごく流行った。この「意識なし」をハキハキやることが、どんどん楽しくなってきて。

小出　本当に娯楽がなかったんだね。

厳しい教官に打ち克つ話

吉田　山口さんは、車、好き？

山口　車は好きです。運転もします。

神谷　僕らの頃って、男はマニュアル、女性はオートマみたいな風潮があったよね。山口さんは、オートマ？ マニュアル？

山口　マニュアルです。私がマニュアルもっているっていうと格好良いと思ったんです。

神谷　たしかに。スムーズにとれましたか？

山口　一応。でも嫌な教官がいたのを思い出しました。試験に落ちることはなかったんですが、私の運転がイマイチだったみたいで、路上教習の時に「誰が（試験）通したんだろうね」って嫌な感じで言われました。わざわざ前回の記録まで確認されて、「なんだ、俺か」って。

一同　(笑)

吉田　厳しい教官って、必ずいるんだよね。

小出　映画『免許がない！』だと、教官は全員厳しい。みんなの力で、それにいかに打ち克つかっていう話。

野良の教官とプルタブの思い出

神谷　小出さんは通っていた教習所で、毎回、教官にジュースを買ってもらってたね。

小出　教習所というか、個人が車一台ではじめたような野良の教習所っていうのかな。駅で師匠と待ち合わせをして、師匠の車で、タクシーの運転手さんが二種免許に向けて練習する時に運転を練習する場所に移動してっていう……。

山口　教官ではなく、師匠なんだ。

神谷　教習所って、試験だけを受けて一発で合格ということもあるんですよね。通わなくても。運転ができれば。

小出　毎回飲み物をおごってくれるんだけれど、師匠が缶のプルタブを集めていて、必ず回収していく。飲み始めると同時に、手を出してプルタブを待ってる。だんだん、ジュースを開けると同時に黙って、師匠の手にプルタブをおくようになって。でも、教習所ってそういうものだよね。

神谷　違うと思う。でも、フランスだと実際の路上で、野良教官が教えるのが普通なんでしょ？

小出　僕がみた映画では、そうだった。

免許の写真、夏の言い訳

神谷　免許証の写真って、酷くないですか？　絶対に良くは写らないようになってるんですよね。

山口　私は、割とふだんと変わらないです。

（免許証を見せあうことになった4人）

吉田　ちょっと待って。言い訳いい？ みせる前に、みんな言い訳あるよね？

神谷　ある。それぞれの言い訳を聞こう。

小出　僕から先にいい？

吉田　（遮って）じゃあ僕から。僕は免許更新のタイミングが夏だったの。本当に暑くって、汗だくになって髪は、もうじっとりして。という写真が、コレ。

（吉田、免許証を出す）

神谷・小出・山口　ほー。

吉田　髪がもうじっとりして。

神谷　髪がね。

小出　次、僕。まず言い訳をすると……。

神谷　（遮って）俺も夏だったんだよね。だから日に焼けて黒くなっているし、入国管理局の写真みたいになっているよ。という言い訳で、ハイ。

（神谷、免許証を出す）

小出　偽造免許っぽい。

吉田　何かを密輸している人だね。

神谷　密輸顔になっちゃうんだよね。

山口　密輸顔？

小出　僕も夏なの。僕の言い訳は、ほら、去年のあの日。一番強い台風が来た日。

吉田　本当に？

神谷　台風の影響を、感じさせてくれるんだろうね？

小出　新宿駅から都庁にある免許更新センターまで、迷いながら走っていって。それがコレ。

（小出、免許証を出す）

吉田　風を感じる。

神谷　ブータレてる？

吉田　ふつうの、汚い人？

小出　シャツが良くなかったな。

山口　私も夏でした。でも、わりと普通です。

吉田　言い訳はなし？

山口　言い訳が見つからなかったので。

神谷　俺たちに、これだけ言い訳をさせておいて……。

（山口、免許証を出す）

吉田　普段どおり。

小出　口に、何かいれているよね。飲み物かな。

山口　入れてません。

神谷　目線がカメラの、その先をみてる感じがする。

山口：かすかに笑おうとしたんです。

吉田　笑っちゃだめだよ。

神谷　だからやっぱり、免許証の写真って、いい感じに撮れないようになってるんだよ。

小出　というわけで、人にはそれぞれ教習所に色々な思い出があるのではないでしょうか。『パリドライビングスクール』、1月24日から。

神谷　この流れで？

小出　会場は、渋谷、ユーロライブ。ぜひ『パリドライビングスクール』に入学して。

神谷　「入学して」とかダサくない？

小出　入学して、僕にプルタブをください。

吉田　よろしくお願いします。

山口　よろしくお願いします。

テニスコートのコント『パリドライビングスクール』は、ユーロライブ2019年1月24日（木）より27日（日）までの4日間5公演。

取材・文・撮影＝塚田史香