第70回読売文学賞贈賞式、桑原裕子が感謝語る「思いもよらない作品が書けた」

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2019.2.21
第70回読売文学賞贈賞式より。桑原裕子。

第70回読売文学賞贈賞式より。桑原裕子。

第70回読売文学賞の贈賞式が本日2月20日に東京・帝国ホテル 東京で行われ、戯曲・シナリオ賞を受賞した桑原裕子らが出席した。

桑原は、団地の一室に集まる6人の男女を描いた「荒れ野」で本賞を受賞。なお本作は、昨年2018年には第5回ハヤカワ「悲劇喜劇」賞にも輝いている。受賞者挨拶のために登壇した桑原は、自身も団地で幼少期を過ごしてきたと語り、「時代が変わり、家族の形も変わってきた中で、時代から取り残されているような感覚を団地に少し抱いていました。その感覚に、時代に若干追いつけないでいる私自身を重ねて、“微妙な行き場のなさ”みたいなものを描きました」と執筆に至った思いを明かす。

また、本作を17年に愛知・穂の国とよはし芸術劇場PLAT、福岡・北九州芸術劇場、東京・SPACE 雑遊で上演してきたことを振り返り、「自分でも思いもよらないところに旅をするようなこの作品が書けたのは、キャスト・スタッフの皆さんの力があったからこそだと思います」とコメント。「1人でも舞台を掌握できるような存在感と実力を持つ6人のキャストの皆さんと、濃密な作品を作る贅沢な体験させていただきました」と平田満ら出演者と、関係者に謝辞を述べる。さらに「一念発起してマイホームを買ったのに、私が『にぎやかな団地のほうがよかった、団地に帰りたい』と言って困らせたであろう両親にも、改めてお礼を言いたいと思います」と感謝の言葉を口にし、挨拶を締めくくった。なお桑原率いるKAKUTAは、6月に東京・本多劇場で新作「らぶゆ」を上演する。

小説、戯曲・シナリオ、随筆・紀行、評論・伝記、詩歌俳句、研究・翻訳の全6部門からなる読売文学賞は、戦後の文芸復興の一助とするため、1949年度に創設された総合文学賞。かつては三島由紀夫、安部公房、井上ひさしが小説と戯曲・シナリオの両賞を受賞している。70回目の開催となる今回は、桑原のほか、平野啓一郎「ある男」や、古井戸秀夫「評伝 鶴屋南北」などが各賞を獲得した。

第70回読売文学賞

小説賞

平野啓一郎「ある男」(文藝春秋)

戯曲・シナリオ賞

桑原裕子「荒れ野」(「悲劇喜劇」2018年5月号)

随筆・紀行賞

西成彦「外地巡礼『越境的』日本語文学論」(みすず書房)

評論・伝記賞

渡辺京二「バテレンの世紀」(新潮社)

詩歌俳句賞

時里二郎 詩集「名井島」(思潮社)

研究・翻訳賞

古井戸秀夫「評伝 鶴屋南北」全2巻(白水社)

ステージナタリー
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