トップ披露公演『レビュー 春のおどり』に臨む、OSK日本歌劇団新トップスター桐生麻耶インタビュー

2019年劇団創立97周年を迎えたOSK日本歌劇団。1922年大阪で誕生し、宝塚歌劇団、姉妹劇団の松竹歌劇団(SKD)と共に、日本の三大少女歌劇団のひとつとして、日本のレビュー文化を牽引してきた。

その後、経営危機に見舞われる等、幾多の困難を乗り越えたOSK日本歌劇団は、栄光の劇団創立100周年への道を力強く歩み続けている。

そのOSK日本歌劇団で、この春新トップスターとなったのが桐生麻耶。エキゾチックな顔立ちと、恵まれたプロポーションに加え、歌、ダンス、芝居と三拍子揃った男役スターとして、劇団を力強く牽引する存在だ。

その新トップ桐生麻耶の披露公演となるのが、3月28日（木）～31日（日）東京・新橋演舞場、４月13日（土）～21日（日）大阪松竹座で上演される『レビュー 春のおどり』。新トップお披露目公演に相応しく、第1部「春爛漫桐生祝祭(はるらんまんきりゅうのまつり)」は、山村友五郎作・演出・振付の〈祭り〉をテーマにした和ものレビュー。劇場中が一体となるフィナーレ「桐生八木節」を頂点に、多彩な和の踊りが繰り広げられる。

また第2部「STORM of APPLAUSE」は、平澤智作・演出・振付の〈喝采〉をテーマにした洋舞レビューで、桐生率いる新OSKの門出を祝う豪華絢爛な内容となっている。

そんな大阪を本拠地とするOSK日本歌劇団としては珍しく、東京が初演となる期待の二本立て公演の開幕を前に、新トップスター桐生麻耶が公演への意気込み、また100周年へのカウントダウンがはじまった今、新たにトップスターとして存在することへの想いを語ってくれた。

桐生麻耶

１人ひとりのエネルギーが創りあげる『レビュー 春のおどり』

ーーいよいよ初日が近づいてきましたが、改めて、二作品の見どころを教えてください。

第１部の和ものレビューは「春爛漫桐生祝祭(はるらんまんきりゅうのまつり)」ということで、シックな場面もありつつ、人が持っている躍動感、どこかにお祭りに通じるものを引き出せないかな？ と思っています。民謡的な部分は文句なく盛り上がるのですが、そうではない部分で何を見せていくか？ というところで勝負していて。例えば私はこれまで、弁慶に代表されるような、両足を広げて立って大立廻りをする役柄を多く務めてきたのですが、そうではなく、高貴な身分の役柄でスッと立っていることもまた、魅力のひとつになるようにと取り組んでいる最中です。第2部の洋舞レビュー「STORM of APPLAUSE」は、ライブ的な要素のあるシーンが多いレビューになっていて、41名の出演者一人ひとり異なるフィーリングや、エネルギーが出ないといけないんです。それは１年目の子でも、私でも同様で、その人なりのエネルギーが出るようにと、今闘っています。どうしても下級生には上級生に倣って、揃えてという感覚が強いのですが、それではお客様に楽しんで頂けない場面も多いので、そこは全員が共通して取り組んでいるところです。

桐生麻耶

ーーそこには、下級生の方達も舞台に立つ上では対等だという桐生さんのトップとしての姿勢もありますか？

やはり早く舞台側の人間になって欲しいという想いはあります。皆「歌劇」に憧れてOSK日本歌劇団に入ってきた訳ですけれども、その気持ちのままに下級生としている１年間と、立場は下級生だけれども舞台人であるという意識を持って過ごす１年には大きな違いがあると思うんです。そこをできるだけ早く変えていきたい。そうすることによって感じ方も変わっていくと思いますし、私は、劇団員は全員即戦力であるべきだと思っているので、そういう意味も含めて、一人の舞台を選んだ人間として向き合っていって欲しいなと。皆本当にすごい根性を持っているので、その根性を使って、私も含めてひたすら上を目指していきたいです。今年、新橋演舞場大阪松竹座で『レビュー 春のおどり』をさせて頂ける。それは本当に嬉しく、ありがたいことだからこそ、今年が最後にならないようにしなければいけない。それは言葉だけではなくて、良い舞台を務めることでお客様に満足していただき、それを少しでも広げて、次につなげていきたいです。本当にすごい数の舞台が世の中にはありますから、そこからOSK日本歌劇団の舞台を観たい！ と言って頂く為には、初日に向けてさらに努力を重ねるしかないですね。​

「また観たい！」「観て良かった！」という声につながる舞台を！

ーー今回の『レビュー 春のおどり』は、東京が初演となるOSK日本歌劇団にとっては珍しい形ですが、開幕を楽しみにしている方達にOSK日本歌劇団の魅力を語るとすると？

群舞をまず楽しみにしていただきたいです。OSKはエネルギッシュにドンと押していく場面が得意な劇団だと思うので、そこを惜しみなく楽しんでいただけたら。また『STORM of APPLAUSE』には、KAORIalive​先生に初めて振り付けていただいた場面があるのですが、振付の初日は皆寝られなかったくらい大変な振りがついています。フォーメーション移動が前後左右にあり、しかもとても至近距離での動きが続き、全体で７分くらいの大きな場面になっていて。KAORIalive​先生の振りの力も音楽の力もとても大きいので、そこにどう向かうか、格闘していますが、でも「OSKだからこの振りをつけました」と言っていただけるように頑張っていますから、ぜひご期待いただきたいです。劇団員同士の中でも、この場面に誰が選ばれるのか？ というものがありましたし、入れなくて悔しいというメンタリティーを持ってくれている子たちがいることもとても嬉しかったので、そうした気持ちを大切に皆で進んでいきたいです。

桐生麻耶

ーー桐生さんが劇団員の皆さんに期待されていること、またその頂点にいるご自身が大切にしていることは？

舞台が好きで入ってきたという気持ちが強い子たちなので、私を含めてその原点を忘れないでいたい、いて欲しいと思います。人に何かをお届けするからには、純粋に舞台を愛する気持ちを忘れては絶対にいけないと思いますし、それを常に確認する為に、いま私はこの立場にいさせていただいているのかな？ と思います。でも彼女たち、男役さんも娘役さんも皆可愛くて、お兄さんではなくて、お父さんみたいな心境になっているのがなんかイヤなのですが(笑)、５年前私が檄を飛ばしていたことを、今、楊琳や、虹架路万がそのまま引き継いで怒っているのを見ると、びっくりしてしまって！ 後から「ちょっと言い過ぎなんじゃないの？」と耳打ちしたら「桐生さん、この倍は怒ってました！」と言われて！(笑)、「あ、そんなに言ってたか？ それは悪かった」みたいな(笑)。今となって(前任トップスターの)高世麻央さんもこんな感じだったのかなと思いますね。本当に皆が愛おしいです。日々ジャッジされる世界ですから、大変なことも本当に多い中で、皆が頑張ってくれていますので、私はなるたけ皆に緊張されないようにと意識しています。すべては舞台につながっているので、礼儀作法ができない子に対してはちゃんと説明した上で怒りますが、まずはオープンマインドでウェルカムな雰囲気を常に出したいなと思っています。

ーー劇団創立100周年のカウントダウンがはじまっている今思うことは？

これまで歴史をつないできてくださった先輩方のことを思うと、なんという時期に私達はここに存在できているのだろうとまず思います。だからこそここからの１日、１日に真摯に向き合って、自分たちの芸事を高めていく、その積み重ねの向こうに、結果として100周年を迎えられるのが理想だと思っています。今、劇団は97周年を迎えましたが、やはりこうした機会に皆さんから「97周年ですね、100周年のカウントダウンがはじまっていますね」と言って頂くことによって、その重みに気づくことも多いので、きちんと噛みしめていきたいです。

ーーでは改めて、『レビュー 春のおどり』への意気込みをお願いします。

97周年を迎え劇団員も58名にまで増えましたが、『レビュー 春のおどり』に出られるのは41人で、全員が出られる訳ではありません。その日々の闘いの中で、年に１度しかないこの『レビュー 春のおどり』の舞台を、劇団員一同、心をこめ、力をこめてお届けしたいです。精一杯頑張りますので、是非１人でも多くの方に観て頂けたらと願っています。劇場でお待ちしております！

桐生麻耶

取材・文＝橘 涼香 撮影＝山本 れお