シンセ番長・齋藤久師が送る愛と狂気の大人気コラム第四十五沼(だいよんじゅうごしょう) 『鍵!沼』
「welcome to THE沼!」
沼。
皆さんはこの言葉にどのようなイメージをお持ちだろうか?
私の中の沼といえば、足を取られたら、底なしの泥の深みへゆっくりとゆっくりと引きずり込まれ、抵抗すればするほど強く深くなすすべもなく、息をしたまま意識を抹消されるという恐怖のイメージだ。
一方、ある物事に心奪われ、取り憑かれたようにはまり込み、その世界にどっぷりと溺れることを
「沼」
という言葉で比喩される。
底なしの「収集」が愛と快感というある種の麻痺を伴い増幅する。
これは病か苦行か、あるいは究極の癒しなのか。
毒のスパイスをたっぷり含んだあらゆる世界の「沼」をご紹介しよう。
第四十五沼(だいよんじゅうごしょう) 『鍵!沼』
ものに鍵を掛けるという文化はいつから出てきたのだろう。
ものを守るための「鍵」は人類の中でもかなりハイレベルな知恵だろう。
何百年も前から始まったこの素晴らしい知恵の習慣で、人はあらゆる外敵から身を守るため、家に鍵をかける。
また人を束縛する為の手錠。
そして心を束縛するためにシド・ビシャスがナンシーから首につけられた錠。
また、ゴム製のボンテッジスーツや貞操帯などなど・・・。
世の中には実に様々な用途に対応する錠前器具が存在する。
また、そのような錠前で強靭にロックされたものを開錠したいという欲望を持った人々が現れる。
例えば機密情報の入ったコンピューターのロックを解除するハッカー、
他人の家に盗みに入る泥棒などだ。
鍵は閉めるものだが、注意しないと閉め出される
我が家でも鍵の事件は多発している。
まずは車のインロック。
鍵をつけたまま車のドアをロックしてしまう。
それが分かった瞬間の血の気の引きようというと・・・何回やらかしても慣れない。
どのくらいJAFのお世話になったことか。
またある日、次男を出産するために私と家内は病院の分娩室にいた。
破水したのでもう生まれますよ!と言われる寸前、私の携帯電話にマンションの管理会社から連絡が入った。
「お母様がベランダで閉め出しに遭っているようです」と!
出産の間、家で留守番をしていたおばあちゃんと長男。
おばあちゃんがベランダに出て花に水をやっているすきに、2歳の長男がいつもの癖で内鍵をかけ、おばあちゃんが閉め出しをくらったらしい。
おばあちゃんは焦ってベランダから道路を歩く通行人に大声で助けを求めた。
2階だったので幸い、声が外の道路まで届いたそうだ。
そこで気づいてくれた親切な水知らぬ人が管理会社に連絡してくれた。
運悪くその日は日曜日。
いつもいる管理人が不在のため、私は次男が半分生まれかけのところ、分娩室を抜け出し家に鍵を開けに行った。
そのままクイックターンで病院にもどり、ギリギリ出産に立ち会えたのだ。
分娩室にいた全員、私が出産の瞬間には間に合わない、と思っていたに違いない。
パソコン、スマホのキーロック!見えない敵は身近にいる?
次に厄介なのがパソコンなどのパスワードの管理だ。
それぞれのパソコンやサイトのパスワードルールの関係上、同じパスワードが使えない事があり、転々バラバラの設定になっている。
すっかりパスワードを忘れてアクセスできない事も多くある。
スマートフォンやタブレットも同様に、立ち上げる時からパスワードが必要だ。
もちろん、パスワードを入れずに開く設定もできるが、ウチには2人の悪ガキがいる。
パスワードを覚えていて勝手にスマホやタブレットを使いゲームなどをしている。
そのため、こまめにロック解除時のパスワードを変えているのだが、私がスマホを開く時に横目で見ているのだろう。
次の日にはまた勝手に親のスマホを使ってゲームをやっている。
指紋認証もあるのだが、あるライターさんに相談したところ、
「齋藤さん。指紋認証は子どもにとって全く意味ないすよ!むしろ危ないからやめたほうがいい」
という。
事情を聞いたところ思わぬ回答が。
そのライターさんが寝ている時に、子供がライターさんの人差し指をスマホに当て解除!
欲しかったゲームを買いまくられたという。
さすがに「そんなの気づくでしょう?」と聞いてみたが、熟睡していたため全く気づかなかったという。
怖い・・・。
昔は家に鍵なんかかけなくても安心して暮らせた。
近所のネットワークがしっかりしていたからだ。
最近は「挨拶を禁止」にしているマンションもあるという。
古い人間かもしれないが、私は全ての物事が礼に始まり礼に終わるという考えを持っている。
なんか、ちょっと寂しく怖い世の中になったもんだ。
鍵は持ちつつも、近い人との信頼関係は築きたい。
本当にそう思う。
君も人の心をハッキングする代わりに自分の心の「鍵」を開いてみないか?