mille baisers(ミルベゼ)、ライブの魅力溢れるニューアルバム完成!5月26日のワンマンライブに向けて酒場と音楽への愛とこだわりを語る

2019.5.1
インタビュー
音楽
クラシック

mille baisers(ミルベゼ) ヴァイオリン横山千晶(右)とギター小久保徳道(左)のデュオ。

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渋谷・eplus LIVING ROOM CAFE & DINING(以下リビングルームカフェ)がオープン間もない頃より毎月ライブを行い、これまでに同店にて二度のワンマンライブを大成功させたヴァイオリン横山千晶(よこやまちあき)とギター小久保徳道(こくぼのりみち)のデュオ、mille baisers(ミルベゼ)。リビングルームカフェに訪れる者を幾度となく酔わせてきた彼らだが、昨年には初のホールワンマンも開催し、憧れのアーティストとの共演が実現。さらに今年からは“酒場音楽プロジェクト”も始動させ、自身の信じる道への追及を続けてきた。誰よりもリビングルームカフェのステージを知り尽くし、酒場と音楽を愛する彼らのワンマンライブ「Welcome To our Living Room vol.3」が5月26日に行われる。そして同日には彼らの7枚目のアルバム『AMBIANCE』がリリースされる。今夜(4/18)もリビングルームカフェに訪れ、パーカッションに小山田和正を迎えた編成でのライブを終えた彼らに話を訊いた。



尊敬するアーティスト、マルクベルトミューとの共演が実現

――前回のインタビューから3年経つので、まずはミルベゼのここ最近の活動についてお聞きしたいのですが。

小久保:最近でいうとやっぱりマルクですね。

横山:私たちが尊敬するフランスのアコーディオニストでマルクベルトミューという人がいるんですけど、その人を私たちが日本に招聘して12月にHakujuHALLで開催したワンマンライブで共演して。それはもう人生観が変わるというか、今までのライブの中で一番幸せな時間でしたね、私にとって。元々彼の音楽がきっかけでミルベゼが結成されたと言っても過言ではないくらい、私たちにとって目指すところでもあり、超えたいところでもあるというか、いつか一緒に演奏するのは夢だったので、共演できたことで人生が変わったなと思って。

小久保:出会ったころに僕が彼のCDを(横山に)紹介して、「すごくいい」っていう反応があってね。

横山:こんな音楽があるんだと思って衝撃を受けました。ミルベゼ結成のきっかけになったアーティストで、元々は会えると思っていなかったですから。そんな人とミルベゼの活動を続ける中で共演できたことで、望めば世の中いろんなことができちゃうんだというか、もちろんうまくいかないこともありますけど、このまま活動を続けていればミルベゼは、私たちが望むもっといい世界に行けるなっていうのが確信できたライブでした。

小久保:実は去年の4月にミルベゼがオーケストラ編成でやった2回目の単独公演(Welcome To our Living Room vol.2)の動画をYouTubeに載せていたら、マルク本人が「素晴らしい!私は彼らを応援しているよ」と動画にコメントしてくれたんです。

横山:それがあったからダメ元で声かけて呼んでみようという流れになったので、vol.2は私たちにとってかなり大きなことでした。

小久保:マルクとの最初の共演は去年12月のHakujuHALLで、そのすぐ後にリビングルームカフェでも3人だけで演奏したんです。ホールではお客さんも、自分たちも、普段とは違う気持ちでライブができたけど、リビングルームカフェでは本当に家のリビングで演奏している感じをマルクも作ってくれて、まぁやたら盛り上がりましたね(笑)。

横山:ホールにはホールの良さがあったけど、リビングルームカフェで3人で演奏できたのは特別なものですね。

小久保:ホールでは音楽をやったけど、リビングでは音で会話しているのを聞いてもらったような気がする。ここ最近の一番大きなできごとでした。

お酒と音楽の幸せな融合を目指して

――なるほど。では次に今年からはじめられた"酒場音楽プロジェクト”についてもお聞かせください。

小久保:ミルベゼのお酒好きの部分に特化して始めた新しいプロジェクトです。

横山:リビングルームカフェで毎月演奏させてもらってる中で、私たちのキーワードは“お酒を楽しく飲みながら音楽を楽しめる空間”。音楽だけが出てもダメだし、音楽がただのBGMになってもダメで、ちょうどその中間で良い空間というのを、リビングルームカフェでたくさんライブする中で感覚として身につけてきたところがあったんです。普段飲んでいる時より、体温が二度上がるような感覚というか、しっかりみんな音楽を聴いているけど、お酒も進んで会話も弾んでみたいな、そういうものをもっと日本に広めていきたいなという気持ちがここで(リビングルームカフェ)演奏している中で強くなってきて、今年から"酒場音楽プロジェクト”というのを立ち上げました。このプロジェクトでは飲食店で演奏する活動をしていて、もちろん私たち以外のアーティストも仲間に入っていて演奏してもらってます。

――音楽をやるっていうことに加えて酒場でやる、酒を飲む場所で楽しくやる、というところがコンセプトとして強いと思いますが、場所やお店の選定はどのようにされているのでしょうか?

横山:お店の選定に関していうと、客席が少なすぎると音楽だけがうるさくて会話もろくにできなくなっちゃうから、ある程度の広さがあることと、ライブをすることをイベントとして特別に扱わない、というところですね。

――ライブって非日常とも言われますけど、あくまで日常の中で楽しむということにしておきたいと。

横山:日常の中に非日常が入るというか、日本にこういう文化を広めたいという気持ちではじめたので、イベントとしてやっても根付かないんじゃないかという。普通に、仕事して疲れて帰って来て、自分の好きなお店で一杯やろう、ご飯食べようという中に最高の音楽があったらもっと豊かになるじゃないですか。そういうことを広めていきたい。日本ってライブを観に行くってハードルが高いんですよ。観に行かなきゃっていうものになっている。アートもですけど、日常に寄り添っているものではないんです。でも海外を見て来るたびに思うのは、アートや音楽がもっと身近にある。

小久保:海外の日常が日本人にとって非日常に見えるのと同じ感じだよね。

横山:特別だから、聴き方がわからない人もたくさんいるじゃないですか。静かにしなきゃいけないという人がいたり、まったく聴かない人がいたり、その中間を知っている人がまだ少なくて、ライブは非日常といいながらも、もっと日常になったらいいかなと思いますね。

小久保:毎日が非日常だったらそれは日常になるからね。

横山:あとは、良いものはいい、好きじゃないものは好きじゃない、という個人の物差しをみんなが持てるようになったらいいなと思って、それを実現するためにこのプロジェクトで取り入れたのが"ぽち袋制度”なんですよ。ミュージックチャージは取らずに、お客さん全員にぽち袋を配って楽しかった分だけ入れてくださいって渡しています。海外みたいに見える形のチップボックスがあったらみんなが入れてるから入れなきゃとなるけど、ぽち袋を渡すと金額は本当に様々で、1万円入れる人もいれば100円の人もいて。お客さんがちゃんと自分で評価した感覚を持ってもらえることで、もっと生演奏を楽しめるようになると思うんですよ。

2019.5.26 RELEASE 7th アルバム『AMBIANCE』

ニューアルバムはミルベゼの“ライブ”の魅力がたっぷり

――では次は5月26日にリリースされるニューアルバムのことをお聞きしていきたいのですが、今回で7枚目ですよね?アルバムのコンセプトなどもお聞かせください。

横山:7枚目ですね。いよいよ。

小久保:このアルバムは名前が『AMBIANCE』(アンビオンス)というフランス語で、英語のアンビエンスと同じような意味なんですけど、“雰囲気”っていうものを大事にして作っています。

――どういう雰囲気を大事にされたのでしょうか?

横山:とにかくミルベゼのライブで二人でやっている雰囲気や、空気感をそのまま楽しんでもらえるアルバムにしたかったんです。これまでのアルバムはいろんな音を入れていて、ギターとバイオリンのデュオってわからないくらい色々入っていたのですが、去年オーケストラ編成のライブもやって、大好きなマルクさんとのライブもやったあとで、何がやりたいかなと思ったらやっぱり二人だけの初期みたいな作品だったんです。私たちの1枚目のアルバムがわりとそういう雰囲気だったのですが、またそういうものを今の自分たちで作ってみたいと思って。なのでシンプルな内容になっているし、生感(なまかん)、臨場感があると思います。

――シンプルというのは音や編成のことを指していると思いますが、先ほど言われていた生感というのはどのようなものでしょう?

小久保:それはレコーディングの環境とミックスの問題になるんですけど、このCDを持って帰って家のスピーカーで聴いたら、目の前でライブをやっているように感じられる音作りにしています。マイクを一人に対して数本立てて、ヴァイオリンの弓をこする音だったりも録音できる環境を作りました。

横山:個人的な演奏面で言うと、元々クラシックをやってたのもあって、録音するなら雑味のない綺麗な音で残したいと思っていたけど、実際のライブでは私は荒ぶるので(笑)。そんなライブの感じをそのままをアルバムでも出そうと思って、ライブの弾き方でやりました。だから荒く演奏している曲もありますね。アタック強めというか。

小久保:録ったまんまの音量で、ほとんどコントロールは加えていないですね。

――なるほど。ではそんなニューアルバムの中でもそれぞれ印象に残っている曲を教えてください。

横山:私は「sakaba ambiance」と「un ciel bleu clair」のバイオリンを重ねてるところ。「sakaba ambiance」はサビ終わりで静かになるところのギターとバイオリンのハーモニーが気に入っています。

小久保:そこはダンスタイムと名付けていて、お客さんにぜひ踊ってほしいです。あとは8曲目の「lac」。これはサビでハーフテンポになる曲で、うまくできました(笑)。

横山:最初はなんでわざわざハーフテンポ?と思ったけど。

小久保:それはメロディーがそうなっているから。ミルベゼの曲は基本的にはメロディーからというよりは全部同時に作っていますけど、メロディーが強くないと曲としては弱くなる。ただ単純にメロディーだけがあって、それにバックを付けるということはしていないんです。あと12曲目の「A bientot」はクラシックギターに鉄の素材を弦に巻いて、スチールパンのイメージの音にしています。カリプソとかレゲエの曲はミルベゼとして新しくて夏っぽいイメージで作った曲ですが、サビでは少しイメージを変えています。ブラジル的に、少し切ない雰囲気から明るいイメージになる。またね、みたいな感じです。海沿いで聴けるような雰囲気になっていると思います。

5月26日のワンマンライブの見どころとは

――そして5月26日に開催されるワンマンライブ「Welcome To our Living Room vol.3」はニューアルバムとは違い、ピアノとベースとドラムが加わる5人編成になるとのことですが、どのような経緯から5人編成でライブをすることになったのでしょうか?

横山:この編成でやろうと思ったのは、とにかくドラムが欲しかったからですね。マルクさんとやった時にそれを感じて、マルクさんからもドラムがいたらいいよって言われたんですね。でもバイオリンという楽器がいるから、どうしても音量調節はしながら、グルーブも出してって人で、さらにあらゆるジャンルに対応できてってなるとなかなかいなくて。探そうともあんまりしていなかったんですけど。

小久保:そんな中で「Circle」(ミルベゼの曲)を覚えているドラマーがいると…。

横山:今回ドラムを叩いてもらう小山田君(小山田和正)のことは前から知っていたけど、とにかく「Circle」をすごい好きだって言ってくれたことが頭に残ってて。「Circle」は変拍子で一筋縄じゃいかない曲なのに、それすら楽しんで、もう覚えたよって言ってくれたんです。その時、小山田君とは1回も一緒に演奏したことはなかったですけど、自分たちの曲を愛して理解してくれる人なら、目指すところが一緒なら細かいところはすり合わせて行けるかな、と思ったのが決め手です。それで小山田君にお願いしようとなって、今回はバンド編成で行こうとなりました。ドラムの存在は私たちにとっては大きくて、決めた時は冒険でした。ダメかいいか賭けでした。

――マルクさんからドラムがいた方がいいと言われたことと、小山田さんがミルベゼの楽曲を覚えてくれた、ということ以外に自分たちでも改めてドラムを入れてみようと思われたのはどういったところからなのでしょうか?

横山:私の中で決定的だったのは、マルクとライブした時に、小久保君がギターのチャカチャカチャカチャカっていうバッキングで完全にドラムの役割をしていて。メンバーを増やしてやる時は、必ず小久保君がドラムの役割になるんだけど、ドラムがいて小久保君が自由になれたら絶対もっといいと思ったんです。

小久保:僕がバッキングをするのも意外と好きだから。でも自分の曲でやりたいことができないことがあったり、思ったのと違うことがあったりして。だから今回は"救世主現る”という感じですね。ミルベゼがバンド編成でやる時は日本で一番うまいベーシストとピアニストとドラマーが入りましたって確実に言える。

小山田:3日前くらいからそう言われる(笑)。

――今日(インタビューは4月18日のライブ後)はドラムではなくパーカッションでしたけど、小山田さんと3人で演奏してみていかがでしたか?

横山:初めて一緒に音を出した時から何のストレスもなくて。今までいろんな人とやってきた時に、始めの1曲目はちょっとお互い様子を見てるし、感覚のすり合わせみたいなことをやって、後半でグルーブが合ってくるのが多かったけど、一発目から何のストレスも感じなかったです。ただいつもの私たちに一人良い感じな人が増えて、分身みたいに。びっくりしましたねすごく。

――5人で合わせるのはこれからですか?

横山:これからです。

小久保:まったく心配してないです。

――最後にこの記事の読者に向けてメッセージをお願いします。

横山:ミルベゼはリビングルームカフェで演奏させてもらって4年になりますけど、私たちにとってここはホームだし、ずっとここでやってきて成長もして来たから、そういう私たちにしか出せないリビングの空気感はあると思うし、すごい、楽しいと思います。もちろんライブを観るというハードルはあるんだけど、それさえ乗り越えてもらえれば、もうただただ楽しい。美味しいものを食べて、美味しいお酒を飲んで、音楽を楽しんでもらいたいです。この会場の空気感もあるし、絶対に良い一日になると思います。

小久保:いい曲作ってるので、聴いていただければ気に入ってもらえると思います。気に入ってもらえたら、ぜひ普段のリビングライブにも来てください。

5月26日のワンマンライブでは新たなる取り組みである5人編成でミルベゼの楽曲がどのように奏でられるのか。ぜひ足を運んで体感してもらいたい。

(聞き手:熱田哲 構成・文:芳賀郁子)

ライブ情報

mille baisers 『Welcome to our LIVING ROOM』vol.3

日時:2019年5月26日(日)open 17:30/start 18:30
会場:eplus LIVING ROOM CAFE&DINING
(東京都渋谷区道玄坂2-29-5渋谷プライム5階)
 出演:mille baisers  横山千晶(Vln)、小久保徳道(Gt)
   神村晃司(Pf)、鳥越啓介(Ba)、小山田和正 (Dr)
料金:全席指定 前売4,000円(税込、飲食代別途)
※別途1FOOD、1DRINKのオーダーを頂戴いたします。
 
主催:イープラス・ライブ・ワークス
問合せ:eplus LIVING ROOM CAFE&DINING TEL:03-6452-5650(平日11:00~18:00)
 

リリース情報

7th アルバム『AMBIANCE』

2019.5.26 RELEASE
 
収録曲
01.vent colline
02.sakaba ambiance
03.First time
04.soleil couchant
05.Life gose on
06.tamia
07.averse
08.lac
09.DOUCE AMBIANCE
10.un ciel bleu clair
11.over time
12.A bientot

mille baisers(ミルベゼ)【プロフィール】
2013年に結成された横山千晶(ヴァイオリン)と小久保徳道(ギター)のデュオ。mille baisersとはフランス語で大切な人へ手紙などで使う【心を込めて】という意味合いの言葉。その名の通り心を込めて独自の曲世界を色彩豊かに表現している。 2014年にはフランスとオランダに渡りライブを行う。また、2人の憧れのミュージシャンたちに会い交流を深め多くの刺激を受けて帰国。これまでに5枚のオリジナルアルバムをリリース。2018年12月、ハクジュホールにて2人の最も尊敬するアーティストMARC BERTHOUMIEUXをゲストに迎えたミルベゼ初ホールワンマンライブを成功させた。2019年、『酒場音楽プロジェクト』を始動。日本に酒場音楽の文化を広めるため都内を中心に全国各地の飲食店で演奏活動を行う。
 
mille baisersオフィシャルHP:http://www.j-sv.com/chiaki/mbprofile.html
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