第四十四回菊田一夫演劇賞授賞式開催! 大竹しのぶ、古川雄大らが喜びを語る
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『ピアフ』
演劇界に偉大なる足跡を残した菊田一夫の業績を永く伝えるとともに、氏の念願であった演劇の発展のための一助として、大衆演劇の舞台ですぐれた業績を示した芸術家(作家、演出家、俳優、舞台美術家、照明、効果、音楽、振付、その他のスタッフ)を表彰する「菊田一夫演劇賞」の授賞式が都内にて行われた。大賞を受賞した大竹しのぶをはじめ、演劇賞の橋爪功、若村麻由美、古川雄大、生田絵梨花、特別賞の松竹新喜劇の高田次郎が出席し、受賞の喜びを語った。
以下、受賞者の受賞スピーチと共に紹介する。
【演劇大賞】
大竹しのぶ:『ピアフ』のエディット・ピアフの役の演技に対して
ピアフという作品に出会え、スタッフや共演者と共にやり続けていけたこと、多くのお客様に喜んでいただけたこと、そしてこのようなすばらしい賞をいただけた事をありがたく思っています。20歳の頃、宇野重吉さんの演出で日生劇場の舞台に立ったのが初舞台。稽古が本当に楽しくて、初日の幕が開くときもワクワクして舞台に立つ事がこんなに楽しいのか、と。今もその気持ちは続いてます。41年が経ちましたが20歳の時と同じで、舞台に立っている時が一番エネルギーに溢れています。それだけでも幸せなのに、ピアフという人と出会えた事が私の人生に大きな大きなエネルギーとなりました。以前の公演でカーテンコールの時に客席の後ろから一人の女性が走ってきて「もう一度『愛の讃歌』を歌ってほしい」と涙しながら言ってくださったことは忘れられません。演劇というのは一瞬かもしれませんが人の心に光を与えるものなんだと。演劇をやっていてよかった。これからも頑張りたい。ピアフは「歌うことは私の精神であり、肉体であり、魂だ」と言ってました。私はまだそこまではいってませんが、魂をこめてこれからも演劇をやっていきたいです。
大竹しのぶ
【演劇賞】
橋爪功:『Le Père 父』のアンドレの役の演技に対して
「忘却とは忘れ去ることなり」(菊田が手掛けたTVドラマ『君の名は』の冒頭の名台詞)今もその言葉が耳から離れません。そんな菊田先生の賞をいただけることになるとは。天才・大竹しのぶとは違って、私は舞台に出る事が楽しくはありません(会場から笑い声)。役者を辞めようと思った事はないのですが、毎回なんでこんな商売を選んだのかと思います。でもこんな賞をいただくと、もっとやれと言われているような嫌~な気がして(笑)。とんでもないものをいただいたと感じています。
橋爪功
『Le Père 父』 撮影:引地信彦
若村麻由美:『チルドレン』のローズの役の演技に対して
この賞をいただくと言う話を聞き、最初は他の人なんじゃないかと思いました。『チルドレン』は高畑淳子さん、鶴見辰吾さんとの3人芝居でしたが、この2人がいなければ私はどうなっていたかわかりません。そして演出の栗山民也さん。本当に信頼ができ尊敬できる演出家さんのもと、東日本大震災のあと原発の処理をする3人の科学者を描きました。これはイギリスの女性が書いた話で、イギリスを舞台にしてますが中身はまさに日本。全世界で上演されていますが、やはりこの日本で上演されることに何よりも意味があった、そうお客様から言っていただいた作品でした。
18歳の時に演劇を志してから、こういう演劇の力があるんだと感じています。最近、お芝居ってどういうものかわからなくなって、あまり自信のない数年を過ごしていたのですが、こんな素晴らしい賞をもらったので、もっと精進しなければ、と思っています。
若村麻由美
『チルドレン』
古川雄大:『モーツァルト!』のヴォルフガング・モーツァルト、『マリー・アントワネット』のフェルセン伯爵、『ロミオ&ジュリエット』のロミオの役の演技に対して
僕は2012年にミュージカル『エリザベート』でルドルフという役をやらせていただきました。その時同じ作品のトートという役に憧れ、いつかこういう役がやりたい、ミュージカルを頑張っていこうと思うようになりました。ただ、僕自身音楽を一切学んでこなかったので、全く基礎がない状態でした。だからそれからの数年間はかなり難しい道のりでしたが、少しでも前に進もうとしていきました。そして念願のトート役をやらせていただけることになり、さらにこのような素晴らしい賞をいただき本当に幸せな気持ちです。今、幸せな気持ちなんですがそれと共に一人でいただいた賞ではないと思っています。お客様に支えていただき、この場所に立たせていただいてると思っています。これからも感謝の気持ちを忘れずに、またたくさんの方々のお力を借りながら前に進んでいきたいです。
古川雄大
『マリー・アントワネット』
生田絵梨花:『モーツァルト!』のコンスタンツェ、『ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』のナターシャの役の演技に対して
ここに立っているようで立っていないような、でも立っている……夢の中にいるような気持ちでいます。受賞を聞いてすぐのときはおめでとうと言われても「いやいやいや……」とか「恐ろしい……」という気持ちが勝っていましたが、だんだん嬉しさ、感謝が込み上げてきました。至らない点は山積みですが、きっとこのタイミングで偉大な先人から贈り物をいただいたことには大きな意味があるのではないかなと思います。今の功績や実力というより、新しい時代に向けてがんばっておくれ、というエールをいただいたのだと思います。令和の時代は、私たちの世代が先輩方からバトンを引き継いで、少しでも演劇界の活性化に貢献できるようがんばります。
生田絵梨花
「ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812」
【特別賞】
高田次郎:永年の松竹新喜劇における舞台の功績に対して
菊田一夫先生の賞をいただけると聞き、何かの間違いなんやないか? と思ったんですが、間違いであったとしてもいただけるものは素直にいただこうと決心して参りました(笑)。私は上方喜劇しか知りません。涙と笑いの人情喜劇。それだけを頑張って生きてきました。受賞理由は長年の舞台の功績に対して、と聞きましたがなあんも功績を残しておりません。もう嫌味ばっかりで今で言ったらパワハラです(笑)。そんな迷惑ばっかりかけております。でも後輩から優しく親切に介護をしていただいてます。私、現在87歳ですが皆様のご支援で頑張らせていただいております。これからも涙と笑いの人情喜劇を大事にして頑張ってきたいと思います。
高田次郎
取材・文・撮影=こむらさき
公演情報
『三婆』
原作:有吉佐和子
脚本:小幡欣治
演出:齋藤雅文
三婆<三幕>