「ダイナミック琉球」で「平川のおじさん」から平川美香へ~ 独自のジャンル開拓で、ブレイクの兆し
「今回のアルバムでは、大人の平川美香を聴いてもらいたい」と、収録曲の「ダイナミック琉球」を熱唱
歌う「平川のおじさん」こと、シンガーソングライター・平川美香が、沖縄のニュースタンダード「ダイナミック琉球」をカバー。パワフルでスケール感のある歌唱で、2月に配信し始めたミュージックビデオは日増しに評判を呼び、YouTubeですでに21万PVを突破。この曲を含む新アルバム『Meekaa Holic(ミーカーホリック)』の発売(22日)に先だって、2019年4月30日、ライブツアーが東京からスタートした。
新アルバムは「ダイナミック琉球」「口笛」「かんぱい!」など7曲入り(サンミュージック)
オープニング。平川が、力強くて伸びのあるアルトで朗々と「ダイナミック琉球」を歌い出すや、観客が一斉に歌の世界に没入していく。
前日のインタビューで、どうしてカバーしたのか尋ねたら「この曲を聴いたとき、心臓を突き抜けるようなインパクトがあって、しかも、もし自分が歌ったら違う表現ができるなと、胸躍る好奇心が湧いてきたからです。それで、試しにライヴで歌ってみたらマネジャーが『これいいね、合ってるね』って言ってくれて」 マネ氏の後押しもあって、カバーできることになり「とてもうれしかったです」と。
この曲は、沖縄を拠点に活躍のイクマあきら作曲、平田大一作詞で、イクマの歌唱によるメジャー発売は09年、徳間ジャパンから。また、石垣島出身の歌手・成底ゆう子が、11年からキングレコードでカバーを複数リリースしている。最近は、全国高校野球選手権大会で、仙台育英学園、大阪桐蔭高校、沖学園といった強豪校が、応援に演奏したり歌ったりして若年層からも注目されている。
「沖縄的なアレンジは複数あるので、私のは縦笛を入れたりして“和テイスト”との融合です。日本中の人に聴いてもらいたいからです。私は沖縄で生まれ育っているから、沖縄の魂は伝わると思います。歌うときに大事にしているのは“力強さ”と“柔らかさ”です」
中盤の聴かせどころの口説(くどぅち)は、七七調のパンチの効いた小気味よい節回しで琉球を表現した「剛」、広がりのあるサビの旋律などは「柔」。「自分の今日までを注ぎ込んで歌っています。例えば“剛”は、荒波が来ても負けじと頑張って前進してきたこと、“柔”は困難を乗り越えた先で出会う人たちの笑顔とか」
実はこれまで苦難の連続だった。子供の頃から歌が好きだったが、一緒にユニットを組んでいた母方のいとこ・仲宗根泉はHYのキーボード奏者&ボーカリストとして10代でデビューし人気者に。平川は大学で福祉を学び、教師になった。しかし心の底でくすぶり続けていた「歌いたい気持ち」は時を経て再燃。意を決して上京した。20代後半になっていた。待ち構えていたのは、混沌とした日々。オーディションで評価されず、やっと声がかかった事務所の条件は「HYのいとことして売り出す」というもの。
「泉に話したら『それだと美香を育ててくれないから、よくない』と断られました」
もっともだと理解できたが、デビュー話はご破算となり、落ち込んで、荷物をまとめて帰ろうかとも思ったという。だがそんな時に、半身麻痺の友人から電話が入る。「私の歌を聴けば病気から立ち上がれそうだからと、必死の思いで『みーか(美香)、歌って』って。その時、思ったんです。歌を評価してもらえないくらいで、私は何をやっているのだと。事務所の偉い人が認めてくれないなら、身近な人から私を知ってもらおう」
メイクや早変わりを披露し「平川のおじサンバ」で絶好調の「平川のおじさん」。傍らの釣り竿とクーラーボックスは必携品。
今やステージを沸かせている青ヒゲの釣りおじさんこと「平川のおじさん」や、レディー・ガガをパロッた「レディー・ブブ」などのコスプレは、楽しく認知してもらう手段。おじさんは、プライベートの海行きでウケたのがきっかけで、都心の繁華街などにもちょいちょい出没。取材の時もおじさんスタイルだった。つまり、普段から本気でパフォーマンスしているのだ。この日のライヴでは、舞台上でおじさんメイクをしたり、筒状のカーテンの中で早変わりしたり。
踊るというより、躍ると表現したくなる、パフォーマンスも最後までパワフル
サンバ、レゲエ、R&Bなど、さまざまなリズムを生かし、バリエーション豊かな楽曲を作って歌うようになったのもワケがある。「どんなジャンルの歌を歌うのかではなく、平川美香というジャンルを確立したいんです。歌の表現力をもっと高めたいし、キャラクターのバリエーションも増やして、コントや演技も身につけたい。できるようになったら、エンターテイナーでしょ! ニューアルバムでは、諦めずに生きてきた半生を歌った『口笛』とか、R&Bの『Can you call me?』とか、じっくり聴いてもらえるとうれしいな」 「ドタバタ劇場一丁目」と題したライヴの東京編は、終始盛り上がり、約1時間半、予定の14曲を熱唱して、和やかに終演となった。ツアーは6月下旬までだが、その後もさまざまなバリエーションのライヴを考えているようで目が離せない。
沖縄某所で、雲の切れ間から光が差してきたタイミングに熱唱。ドローンを使っての撮影も見事。
取材・文=原納暢子
ライブ情報
■4月30日(火・祝)
OPEN 16:00 / START 16:30
東京 / SPACE ODD(東京都渋谷区猿楽町2-11 氷川ビル302号)
スタンディング ¥4,000 、当日 ¥4,500(tax in、+ドリンク代 500、12歳以下無料)
OPEN 16:00 / START 16:30
大阪 / 心斎橋SUNHALL(大阪府大阪市中央区西心斎橋2-9-28)
スタンディング ¥4,000、当日 ¥4,500 (tax in、+ドリンク代 600、12歳以下無料)
OPEN 16:00 / START 16:30
愛知 / ell.SIZE(愛知県名古屋市中区大須2-10-35)
スタンディング ¥4,000、当日 ¥4,500 (tax in、+ドリンク代 500、12歳以下無料)
OPEN 16:00 / START 16:30
福岡 / INSA(福岡県福岡市中央区春吉3-5-7 Barbizon103 RIVA HAKATA B1F)
スタンディング ¥4,000、当日 ¥4,500 (tax in、+ドリンク代 500、12歳以下無料)
OPEN 18:30 / START 19:00
札幌 / BESSIE HALL
スタンディング ¥4,000 / 当日券 ¥4,500 (tax in,+ドリンク代 500,12歳以下無料)
OPEN 16:00 / START 16:30
沖縄 / 桜坂セントラル(那覇市牧志3-9-26)
スタンディング ¥4,000 / 当日券 ¥4,500 (tax in,+ドリンク代 500,12歳以下無料)
①13:00〜 ②15:00〜
【会場】イオンモール成田(千葉県成田市ウイング土屋24)
「はいさいFESTA 2019」16:30〜 中央噴水広場
【会場】ラ チッタデッラ(神奈川県川崎市川崎区小川町4-1)
5月18日(土) 代々木公園野外音楽堂広場 メインステージ(東京都渋谷区神南2-3)
Instagram:@mikabu5919