遠藤正明独占インタビュー 歌との出会いから現在を語る

インタビュー
音楽
アニメ/ゲーム
2015.11.27
遠藤正明 撮影-内野秀之

遠藤正明 撮影-内野秀之

画像を全て表示(8件)

圧倒的な声量、歌唱力でアニソン界に凛と立ち続ける「若獅子」遠藤正明。今年7年ぶりになるカバーアルバム「ENSON3」を発売するなどデビュー20周年の活動は活発だ、「20周年なにもする気がなかったけど、周りがやってくれるっていうから」とほほ笑む遠藤正明に独占インタビューを行った。音楽のルーツ、上京からデビュー、そして現在に、遠藤正明のこれまでとこれからを聞いてみた。

――遠藤さんといえばアニソン界の若獅子、と言われておりますが、あまりアニメ見られないと?

「そうですね、そんなにアニメ好きって言うことじゃなく、一般の人と同じで小さい頃はアニメ見てたし、アニソン歌ってたし。自分が携わった作品や話題作は見ますけど、何でも見るわけではないかもしれませんね」

――最近の声優さんやアニソン歌手の人に聞くと本当にアニメが好きで!という人が多い気がしますが。

「多いと思いますね、JAM Project​だと、きただに君なんかは放送中のアニメほとんど見てますよ。大人が見れる作品が増えたってことですかね」

――遠藤さんがアニソンやりだしたきっかけはやっぱり『勇者王ガオガイガー』主題歌「勇者王誕生!」なんでしょうか?

「そうですね、アニソン歌わせてもらって今年で20年なんですけど、初めて主題歌やらせてもらったのはガオガイガーで、これが大きなキッカケかな。たまたま入った事務所にうちの影山ヒロノブ兄さんが居て、そこから今のランティス社長の井上さんを紹介してもらって、「アニソン歌ってみないか」ッて言われて…そこから1~2年たってガオガイガーですね」

――「勇者王誕生!」は当時久々に出てきた超正統派の熱いアニソンだったと思います。

「王道というかね、でもぶっちゃけ、当時の僕はアニソンはバイト感覚で歌ってたんです。自分の中にこういう音楽の引き出しなかったんですよ、だから新鮮で気がついたらのめり込んでましたね。今でも思うのは日本のアニソンって世界でも一番難しいことやってるんじゃないかな、って。ジャンルも超越してるし、最先端なんじゃないですかね」

――なるほど。

「当時もガオガイガーは懐かしい王道ソングといわれてましたけど、自分には新鮮で。デモテープ聞いたら転調8回してるんですよ(笑)これはおかしいぞと!当時はファックスで歌詞が送られてくるんですけど、ガガガガーって紙が出てきたらそこにも「ガガガ」しか書いて無くて(笑)間違えてんじゃねえか?って思いましたね」

――本当に全部「ガ」しかないんですね(笑)

「そうそう!「投げ込み」といわれる技の名前を叫ぶところも、たぶんこの曲が初めてだったんじゃないかな?今は「投げ込み」やってくれって言われることも多いですけど、これが最初のはずですね。熱い熱血ソングのイメージが自分についたのも、この歌から始まったと思いますね」
 

遠藤正明 撮影-内野秀之

遠藤正明 撮影-内野秀之

――確かにそうですね、ここで音楽のルーツというか、デビューまでのお話をお伺いできれば。

「僕は沢田研二さんが大好きで、小学校の時に「将来の夢はジュリー」って書くくらいだったんです。すごいセクシーだし奇抜な衣装も着こなすし、かっこよかったんですよね。僕は三人兄弟の末っ子なんでチャンネル権も無かったんで、兄貴の聞いていた音楽の影響もあるかな。二人目の兄貴がフォークソングが好きで、井上陽水さんとか聞いてギターでコピーしましたね」

――ご自身が歌いだしたのは何時頃なんでしょう?

「先輩たちの影響もあって、文化祭で歌う!ってのは一つのステータスだったんですよ。その時はツェッペリンとかやったりね、そこでバンドを組んだのが初めてかな。うちの高校は進学か就職しないと卒業できなかったんですけど、進路決まらないと卒業できないから公務員試験を受けたんです」

――意外ですね!

「中央公務員と地方公務員受けて、それは受かったんですけど勿論行かず(笑)それでこっちに出てきたんです、お金無かったけどプロになりたいって思いだけでしたね。当時兄貴と一緒に住んでたんですけど、卒業式の後すぐ兄貴が誕生日で、お世話になったからネクタイ買ったんですね。三万円しか持ってないのに(笑)そこからいざ地元を出るって時に、地元の仲間がみんな見送りに来てくれて。ちょっと見栄張って金無いのに新幹線乗っちゃったんですよ(笑)本当は博多に行きたかったんですけど、東京までしか行けなくて」

――最初の目的地は東京じゃないんですね。

「あの頃はめんたいロックってのが流行ってて、HOUND DOGさんとかARBさんとかTHE MODS​さんとか。博多には何があるんだろうと思って行きたかったんですけど、お金なくて東京になりまして。そこで先輩とか友達の家を転々としてたんです。みんな最初は快く受け入れてくれるんですけど、二週間も過ぎると「まだいるの?」って言われるんですよ(笑)それで最後に行きついたのが横須賀なんです。先輩がいて、海上自衛隊に勤めてたので演習に行くと、三か月くらい居なくなるのでちょうどいいかな、と。でも尋ねた時演習終わったばっかりで」

――タイミングが悪い。

「そうなんです、だから六本木のガソリンスタンドに住み込みで応募しようとしたんですけど、日曜日で休みで(笑)履歴書持ったまま横須賀に帰ってきたら、横須賀のどぶ板通り商店街にある『ROCK CITY』ってライブハウスに従業員募集が出てまして、持っていた履歴書そのまま出しに行ったんです。面接でいきなり「パート何?」って聞かれて、ボーカルですって言ったら今日から来いと(笑)」

――急ですね!

「店のバンドがあるんですけど、ちょうどボーカルが辞めたタイミングだったんですね。そこには米軍兵がよく来るから、下手だとブーイングも凄いんです。僕はスタンダードなロックしか聞いたことなかったので「歌えるだろ?」と言われても知らなくて(笑)そこでハードロックはめちゃくちゃ勉強しましたね」
 

遠藤正明 撮影-内野秀之

遠藤正明 撮影-内野秀之

――でも、最初お金があって博多まで行ってたら、今の遠藤正明はなかったかもしれないという…

「そうですね!でも『ROCK CITY』では色んな先輩に凄くお世話になりました。当時一緒に働いてた人がサーベルタイガーのドラムのKenさん、あとベースが先日お亡くなりになったんですけど、UNITEDの横山明裕さん。その当時いつも店に遊びに来たのがX JAPANのhide君で、今思うとすごい面子だったなと思いますね」

――そこから事務所所属にと。

「当時イカ天(編集部注 当時ブームとなっていたテレビ番組『イカすバンド天国』)ブームで、ブームだからこそ色物じゃないとダメ、みたいな風潮もあったんですよ。だから僕はちゃんとレコード会社から契約してくれ!って言ってくるのを待とうと。まあそんなことあるわけないんですけど(笑)その時のギターの相方が僕に内緒でオーディション応募してて。僕はライブだと思っていったんですけど、実はそれ最終オーディションで。騙された!と思って2曲歌う予定なのに4曲歌ってやったんですよ」

――掟破りですね、どんな曲をやられたんですか?

「日本人ってアコギ持つとみんなフォークになっちゃうじゃないですか。それをひっくり返してやろうって、僕はアコースティックハードロックって言ってやってたんです。アコギもってるけど上半身裸で金髪ロンゲ(笑)オーディションが終わって新宿の飲み屋で飲んでたら、そこに電話が来て「グランプリとったよ」って。そこから所属した事務所に影山ヒロノブ兄さんがいたんですよ。僕は地元いたときは兄貴の買った「明星」とか読んでて、僕はアイドルの水着が見たいのに開くとレイジーが出てきて。ミッシェルが決めポーズなんですよ!(笑)」

――確かに当時のレイジーはアイドル的人気ありましたね。

「影山兄さん最初口きいてくれなかったんですよ、僕が失礼な態度だったんですけど(笑)その後兄さんがライブDVDを出すからコーラスを入れたいって話があって、僕の歌聞いてくれて「あいついいじゃん」って言ってくれたみたいなんです。マネージャーから依頼来たんですけど、僕別にコーラスなんてやりたくもないし、断ってたんです。そしたら急に家に電話来て」

――直接話したこともないのに。

「一言目に「影山だけど、コーラスやってくんない?」って言われて、その瞬間に「はい!」って返事しちゃってましたね(笑)そのライブにランティス社長の井上俊次さんも来てて、アニソン歌ってみないか?って言われたのが今の僕のきっかけですね。影山兄さんにはいろいろ誘ってもらってて、アコギで全国まわったり、鋼鉄兄弟やったり。そこからJAMに繋がったり…兄さんありきですね、今の僕は」
 

遠藤正明 撮影-内野秀之

遠藤正明 撮影-内野秀之

 

――そしてやはりJAM Projectに繋がっていきます。

「もう15周年なんですけど、JAMは一人でかなえきれない夢をかなえてくれる場所ですね。横浜アリーナだったり海外だったり、すごい刺激です。JAMはここ10年くらいの活動で海外に沢山呼んでもらえるようになった気はするんですけど、最初はギャラも無かったり、設備も厳しかったりしたんです。今は後輩の子たちもいい環境で海外でやれるようになったりしてるから、僕たちが海外遠征の地平線を切り開いたんじゃないかな?って思いは少しだけありますね(笑)」

――海外でライブをやってみて、印象とかいかがでしたか?

「日本初で生まれたアニソン、アニメじゃないですか。でも日本人が一番「オタク=暗い」、みたいな印象持ってる感じがしましたね。海外だと「I AM OTAKU !」みたいに胸を張ってステータスにしてるんですよ。当時はなんかマイナスイメージしかなかったアニメですけど、今やっとヒットチャートにも上がるようになったじゃないですか。当時からJAMでは「俺たちがかっこいいものにしていこうぜ」って話はしてましたもんね」

――シンガーとしての遠藤さんのお話も伺いたいんですが、ボイストレーニングなどをされないというお話も聞きました。

「僕が人に教わるってことになんか抵抗があるんですよね、人と同じことしてもつまらないと思っちゃう。まあでも、自分が憧れるアーティストさんになりたいから研究したり、努力したりすると思うし。本気になりたいものがあったらどんなやり方でも努力するものだと思うんです、僕はそうだったし」

――最近はアニソンシンガーになりたい若い人も増えてきた印象があります。

「ファンレターなどで凄い言われますね、今の若者たちの夢の一個になったんだなと。でも僕らの仕事ってある意味博打じゃないですか、実力あっても売れない人もいる。でもやらないと何も残らないんですよね。失敗しても恐れない気持ちというか、反省はしたほうがいいけど、後悔しない人生を送ってもらいたいですね。アニソンに限らず行動したことで夢が広がることも多いですからね、まずはやってみることかな」
 

遠藤正明 撮影-内野秀之

遠藤正明 撮影-内野秀之

――先日出されたカバーアルバムでもかなり「やってみる」という遠藤さんの気持ちが見えてくる選曲でしたが。

「毎回一曲は「えっ?これ?」っていう曲を入れてるんですけど、今回は間違いなく「おジャ魔女カーニバル!!」ですね。これ入れた段階で勝ちだなと(笑)でも茶化す気持ちがあるわけでもなく本気で取り組んでます。選曲も曲順も物凄い考えてます」

――そうですね、本気を感じました。

「僕今年20周年なんですけど、何もやらなくていいかなーって思ってたんです。けどスタッフから、「20周年にやらないでいつやるんですか」と怒られまして(笑)アニソン界女の子のアーティストが躍進してると思うんですが、男性アニソンアーティスト界もっと頑張りたいな!って気持ちもあるので、そういう選曲になりました」

――TOTALFATやUNISON SQUARE GARDENなどJ-ROCK界でも人気のアーティスト曲もカバーしています。

「TOTALFATさんでいうと、JAM通じて凄く僕をリスペクトしてくれてて。試しに一緒にやりましょう、って聞いたら快諾してくれて!なんか垣根はなくなってきたなって感じてますよ」
 

遠藤正明 撮影-内野秀之

遠藤正明 撮影-内野秀之

――ライブも控えております。

「久々ですね、AT-Xさんと『アニぱら音楽館』でやる”LIVE A2”の中で僕の20周年を祝うのも含むって話で、甘えようかなって(笑)」

――見どころとしてはどのへんでしょうか?

「『アニぱら音楽館』はもうずっとやってる番組なんですけど、番組内では生演奏で様々なコラボをするんです。”LIVE A2”でもそこを売りにしていきたいと思いますね。普段一緒になることはないであろうアーティストが、一緒にやるのは面白いし、ここだけなんじゃないかなって思ったりするんですよね。そこからまた新しいものが生まれてくるんじゃないかなって」

――では最後の質問なんですけど、遠藤正明から見て注目のアニソンアーティストっていらっしゃいます?

「うおー!難しい質問だな!(笑)やっぱり男性アーティストに頑張ってほしいって意味では、Geroくんなんかもそうだし。最近一緒にやった人だと、リハ無しでぶっつけ本番でやらなきゃならない現場があったんです。その時のバックが流田Projectだったんですよ。グルーヴもあるし、凄くいいバンドですよね!頑張ってほしいなぁ。でもちょっと地味なんだよなぁ彼ら(笑)”LIVE A2”に彼らも出演するので見に来て欲しいですよね

――地味(笑)女性だとどうですか?

「女性は本当に素敵なアーティストさん多いですね。その中でも僕が個人的に凄いなぁって思ったのは、Suaraちゃんのバラードの説得力!あとはいとうかなこちゃんのアップ系の歌のピッチの良さとかね!コラボしないかなぁあの二人(笑)」
 

遠藤正明 撮影-内野秀之

遠藤正明 撮影-内野秀之

――遠藤さんセレクトのアーティストで、「遠藤フェス」的なイベントをやったらおもしろそうですね。

「やりたいと思うんですけど、制作大変そうだなって思っちゃうんですよね(笑)でもファンの「やってほしい!」って要望があるのであれば、いつか実現したいなぁ!」

遠藤正明 撮影-内野秀之

遠藤正明 撮影-内野秀之


インタビュー:加東岳史
 

イベント情報

「遠藤正明christmas acoustic night2015 ~present of the voice~」 

 ■ 2015年12月24日(木)東京・第一生命ホール 開場 17:30/開演 18:30 
 ■ 2015年12月26日(土)大阪・エルセラーンホール 開場 16:00/開演 17:00

 


「LIVE A² 2016 -アニぱら音楽館×A-POP PLUS-」​

 ■日時 2016年1月17日
 ■会場 豊洲PIT
 ■出演者 影山ヒロノブ、遠藤正明、angela、織田かおり、Gero、A応P、i☆Ris 、
      みみめめMIMI、田辺留依 、能登有沙、遠藤会、流田Project、
      アフィリア・サーガ、アイドルカレッジ、中川翔子

 

 

リリース情報


遠藤正明カバーアルバム「ENSON3」

■発売中

1.君の知らない物語(テレビアニメ『化物語』エンディングテーマ)
2.カサブタ(テレビアニメ『金色のガッシュベル!!』オープニングテーマ)
3.おジャ魔女カーニバル!!(テレビアニメ『おジャ魔女どれみ』オープニングテーマ)
4.英雄(特撮テレビドラマ『ウルトラマンネクサス』1期オープニングテーマ)
5.Snow halation(テレビアニメ『ラブライブ!』第2期挿入歌)
6.DREAM SOLISTER(テレビアニメ『響け!ユーフォニアム』オープニングテーマ)
7.ペガサス幻想(テレビアニメ『聖闘士星矢』オープニングテーマ)
8.僕たちの行方(テレビアニメ『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』第3期オープニングテーマ)
9.My Soul,Your Beats! (テレビアニメ『Angel Beats!』オープニングテーマ)
10.君が好きだと叫びたい (テレビアニメ『SLAM DUNK』オープニングテーマ)
11.Good Bye,Good Luck (テレビアニメ『NARUTO -ナルト- 少年篇』オープニングテーマ)
12.オリオンをなぞる (テレビアニメ『TIGER & BUNNY』オープニングテーマ)
13.またあした (テレビアニメ『みつどもえ』『本気戦隊ガチレンジャー』主題歌)

シェア / 保存先を選択