舞台『恐るべき子供たち』開幕! 思春期の子どもの心を南沢奈央らが懸命に演じ切る

2019.5.18
レポート
舞台

画像を全て表示(11件)

KAAT芸術監督・白井晃が手掛ける近現代戯曲シリーズ最新作となる舞台『恐るべき子供たち』が2019年5月18日(土)よりKAAT神奈川芸術劇場にて開幕する。初日に先駆けて5月17日、囲み取材とゲネプロ(通し稽古)が公開され、出演する南沢奈央柾木玲弥松岡広大馬場ふみか、そして演出の白井が出席した。

本作はフランスの劇作家ジャン・コクトーの中編小説を原作に、ノゾエ征爾が上演台本を手がけた。4月に同劇場で上演された『春のめざめ』同様、思春期の少年・少女を描いた作品だ。

白井は本作について、「思春期は誰しもが通過するものですから、自分を確立していく過程の物語にはどこか惹かれるものがある」と前置きしたうえで、「『春のめざめ』は大人や学校、社会にプレッシャーをかけられる子供たちが、そこからどう抜け出るのかという話でしたが、『恐るべき子供たち』は、大人になることを拒絶した子供たちが、社会から自分たちを切り離し、自分たちだけの『繭』の中で生を終えようとする様子が描かれます」と2作品の違いについて解説した。

白井晃

弟との世界を守ろうとする姉・エリザベートを演じる南沢は、座長としてカンパニーの雰囲気を聞かれたところ、「今回皆子供役で、喧嘩したりとか遊んだりって感じなので私がリーダーって感じでもなく、和気あいあいとやってますね」と笑顔を見せる。「皆それぞれのポジションにはまり役。特に松岡くんは一番歳下なんですけど、一番間に立って取り持ってくれてて助かってます」と松岡を褒めると隣で松岡が「いや、何もやってないですよ」小声で謙遜。一方、弟・ポールを演じる柾木については「本当に弟みたいで。ちょっと優しくすると照れるというか。のど飴あげようとすると『いらない』って逃げるので、私が『受け取ってよ!』って言ったり(笑)」と劇中の姉弟の関係のようなエピソードを披露した。

南沢奈央

そして自身について、南沢は「稽古が始まって何日かして、皆と打ち解けて遠慮しなくなってから。壁を解いた時があったんですけど、その時、白井さんに『エリザベートっぽくなってきた』って言われて。白井さんのヒントを頼りにエリザベートを作ってる感じですね」と振り返っていた。

エリザベートの弟。ポール役の柾木は役作りについて「あ、これがポールか、というような具体的な事はなかったですが、皆と稽古をやっていく中で掴んできました」とコメント。

柾木玲弥

これが初のストレートプレイとなる松岡は、今までの舞台との違いについて「しっかりと言葉の意味を伝えるという事については、今まで以上にエネルギーを持って考えなければいけないなと。今までの作品で考えていなかった訳ではないんですけど、より作品として昇華していくためには言葉を伝え、届けることと、観ている人に伝えることが非常に大切だと思いました」と力を込めた。

松岡広大

男女2役を演じる馬場は「二役ということで、二つの全然違った目線で作品に対して考えることが出来るのですごく面白いなと。と同時に、二役のスイッチングの難しさを感じています」と率直な気持ちを述べた。

馬場ふみか

改めて白井にキャストたちの印象を聞かれると、「彼らは芝居に対してすごく真面目。本当はうるさいのかもしれないけど、僕の前では静かでした。前回の『春のめざめ』の連中はとてもにぎやかでしたが。タイトルは『恐るべき子供たち』ですが、彼らはとても大人でした」と言うとキャストたちが一斉に笑い出していた。

(左から)白井晃、松岡広大、南沢奈央、柾木玲弥、馬場ふみか

ゲネプロの様子もレポートしよう。
劇場に入るとそこには真っ白い布のようなもので覆われた正方形の舞台だけが存在していた。真っ白な布は幾重にも重なり、時には四隅を吊られて宙に浮き上がったり、波のように子供たちを覆いかぶさり、柔らかく包み込む。また、子どもたちが遊ぶ道具にもなる。白井が会見で語ったように子どもたちを外の世界から守っている「繭」のようだった。その中で子供たちは無邪気にはしゃぎ、笑い、時には誰かにちょっかいをかけている。やがて真っ白な布が1枚、また1枚と剥がれていく中、外の世界からの刺激、あるいは自ら芽生えた何かに動かされるように新しい世界を垣間見ようと動きだす。繭からむき出しの状態になった彼らが選んだ道とは……。
ぜひこの美しく切ない物語の結末を劇場で見ていただきたい。


取材・文・撮影=こむらさき

公演情報

KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『恐るべき子供たち』
 
原作:ジャン・コクトー
[コクトー 中条省平・中条志穂:訳「恐るべき子供たち」/光文社古典新訳文庫)]
上演台本:ノゾエ征爾
演出:白井晃
 
出演:
南沢奈央、柾木玲弥、松岡広大 馬場ふみか
デシルバ安奈、斉藤悠、内田淳子、真那胡敬二
 
会場:KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ
公演日程:2019年5月18日(土)~6月2日(日)
(プレビュー公演2回、本公演14回、計16回公演)
 
料金:プレビュー公演(5月18日(土)・19日(日))5,000円(各種割引料金はございません)
(全席指定・税込)本公演 一般 6,500円 U24(24歳以下)3,250円 高校生以下割引(高校生以下)1,000円 シルバー割引(満65歳以上)6,000円
 
公式サイト:http://www.kaat.jp/
 
窓口:KAAT神奈川芸術劇場2F(10:00~18:00) ほか
企画製作・主催 KAAT神奈川芸術劇場
著作権代理 (株)フランス著作権事務所
ジャン・コクトー委員会会長 ユーグ・シャンボノ氏提供
 
お問い合わせ:かながわ 0570-015-415(10:00~18:00)
  • イープラス
  • 白井晃
  • 舞台『恐るべき子供たち』開幕! 思春期の子どもの心を南沢奈央らが懸命に演じ切る