みんなが苦手な“アノ昆虫”にも魅力はある!?東京で44万人来場の特別展『昆虫』、大阪開催について松本吏樹郎学芸員にインタビュー

インタビュー
イベント/レジャー
2019.7.12

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2018年に東京の国立科学博物館で44万人の来場者数を記録した特別展『昆虫』がついに大阪上陸! 7月13日(土)から9月29日(日)までの期間、大阪市立自然史博物館ネイチャーホールで開催される。2メートルもの巨大模型で昆虫の体のつくりを知ることができたり、日本初公開となる琥珀に閉じ込められた「絶滅目の昆虫」を見て神秘を感じたり、私たちが普段あまり意識をしていない「昆虫のおもしろさ」がぎっしり詰まったものばかり。中でも、本展を担当する松本吏樹郎学芸員が発見した新種の展示は大きな見どころだ。実は世の中には未知の昆虫の方がまだまだたくさんいて、誰でも「新たな発見」ができるチャンスがある。ということで今回は、松本氏に本展の見どころだけではなく、新種を発見したときの心境などの話を訊いた。

――松本先生は今回、大阪での特別展『昆虫』を担当していらっしゃいますが、東京展との違いは何かあるのでしょうか。

はい。大阪の昆虫を紹介するコーナーを設けています。住んでいる場所が違えば、昆虫の生活も変わってきます。たとえば大阪は、東京よりも馬蝉(うまぜみ)が多かったりします。

――ちなみに松本先生は嫌いな昆虫っていないのですか。ゴキブリが苦手とか……。

ないですね!

――今回の特別展では、多くの人に嫌われているゴキブリのおもしろさを知ることができる「Gの部屋」もあります。「心臓が弱い方は迂回ルートへ」という注意書きもありますが。

たしかにゴキブリは、家に突然出現すると嫌ですよね。僕もさすがにびっくりしちゃいます。苦手な人は多い。だけど、森の中で暮らしているものは決して汚くはないんです。よく見てあげると、模様がおもしろかったり、形が変わっていたり。実は興味深い生き物です。

――まじまじと見たことがないから、それは知らなかったです。でも、昆虫はやっぱり解明されていないことや謎がまだまだ多いんですか。

かなり多いですね。昆虫について調べようとしたら、まず現地へ行き、どういう生活を送っているのかなど、しっかり観察をしなくてはいけません。解明するために非常に時間と手間がかかります。昆虫自体も種の数が多く、それぞれに違いがあるので、調べ上げるにはものすごく時間を要するんです。普段何を食べて、どういう生活をしているのか分からないもの、そしてまだ名前が付いていない虫も結構います。

――たとえば昆虫って、猫や犬のように「遊ぶ」ということをしたりするんですか。

うーん、遊ぶという意思を持って行動をしているかどうかは分かりません。やはり昆虫は、究極的には食べて、自分が生きることを最優先し、そして子孫を残すということに集中していますから。

――今回の特別展には新種も展示されるということで、これは松本先生が発見されたものなんですよね。

はい。ヒメバチという蜂の仲間です。お腹に産卵管がついていて、木の中に卵を産みこんで、そこにいるカミキリムシなどの幼虫を食べて育つんです。

――どういう経緯で発見されたんですか。

博物館で、昆虫採集をして標本を作り、名前をつけようという行事をしているんですが、その催しのために兵庫県にある渓谷へ行ったとき、木に集まっているのを見つけて採集しました。「あれ? 見たことがない蜂がいるぞ」と思って。ヒメバチは日本には約1400種いるんですが、それを調べ上げて、また海外のものも調査し、「これはまだ見つかっていないもの」だと確認をとりました。

――見つけたときはやっぱり興奮しますよね!

いや、「知られていないものもまだまだいるよね」くらいの感覚でした。

――え、そんな軽い感じなんですか。

蜂、蠅なんかは、確認されている種の倍以上は未確認のものがいるだろうと言われているんです。だから、「まあ、まだまだいるだろうな」という感じでしたね。

――素朴な疑問なのですが、新種を発見したときって、国などからご褒美はあるんですか。

ないですね!

――ハハハ(笑)。そうなんですね!

僕たちも、「自分が暮らしている身の周りにはどういう生き物がいるんだろう」という部分に興味があるんで、それを研究すること対して大きな満足感があります。それが自然を保護する上で何が必要かにつながっていきますし。

――昆虫もやはり絶滅危惧種など増えていますよね。

そうですね。生息環境がなくなってしまうということが、かなり多いです。草原だけに生えている植物を食べている昆虫だったら、そこに建物ができるといなくなりますし。近年は暑いですが、暑さが大好きな虫は喜びます。しかし、人為的なものは自然に対して良いとは言えませんよね。

――今回の特別展では、我々人間と昆虫の関係性について見つめ直す良い機会になりそうです。

普段暮らしていると、虫ってそんなに意識はしないはず。だけど、実は私たちの生活にちゃんと影響を与えてくれていることを知ってほしい。人間と昆虫の結びつきを感じてもらえるのではないでしょうか。

取材・文・撮影=田辺ユウキ

イベント情報

特別展『昆虫』
会場:大阪市立自然史博物館 ネイチャーホール(花と緑と自然の情報センター2階)
会期:2019年7月13日(土)~9月29日(日)
休館日 :7月16日(火)、22日(月)、29日(月)、8月19日(月)、26日(月)、9月2日(月)、9日(月)、17日(火)、24日(火)
時間:9:30~17:00 (入場は16:30まで)
お問合せ:06-6697-6221(大阪市立自然史博物館)
展覧会公式サイト:https://www.ktv.jp/konchu/
公式Twitter:@konchuten

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