野沢直子とプリンセス天功が『スラバのスノーショー』の魅力を語る サプライズでクラウンが飛び入り参加
シルク・ドゥ・ソレイユの名作『アレグレア』の一場面を制作し、世界最高峰のクラウンと言われるスラバ・ポルニンが創作・演出する体感型ファンタジーショー『スラバのスノーショー』が2019年7月19日から大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホールで上演中だ(8月7日まで)。その後、8月10日~8月25日には東京・シアター1010でも上演される。1993年の初演以来、世界35カ国以上225を超える都市で上演され、ローレンス・オリヴィエ賞をはじめとする国際演劇賞を総なめにしてきた作品で、日本では3度目の上演となる。
本作品に出演するのはクラウンのみでせりふは一切なく、動きと表情だけで人間の喜怒哀楽を表現していく。また舞台と客席を一体化させた演出が特徴で、クラウンが客席を巻き込んだ掛け合いをするところが見どころだ。
今回スノーショースペシャルサポーターの野沢直子とプリンセス天功(以下、天功)に話を伺うことができた。サプライズでクラウンが飛び入り参加をし、紙吹雪を降らせたりハーモニカで演奏したりする中、和やかな雰囲気でインタビューが行われた。舞台上では一切言葉を語らないクラウンが作品の魅力を語る場面もあったので紹介する。
――このショーを観ていない方に向けて、改めて面白さ、楽しさを教えてください。
野沢 私は3年前に観たのですが、すごく楽しかったです。大きい風船が客席にいっぱい転がってきたり、客席にクラウンの方たちが降りてきたり、お客さんもついつい参加しなくちゃという雰囲気になるのがすごくいいですね。吹雪や蜘蛛の巣など、いろいろなものがステージからどんどん客席にくるので、口をあんぐり開けて観ていました。
天功 私は最初にフランスで観たのですが、ものすごく技術が高いので、まずはそこに感心しましたし、エンターテインメントとしてすごいと思いました。この作品が日本に来ることになって、日本でも絶対にうけると感じました。このショーはクラウンの物語が詰まっていて、すごく胸が熱くなる場面があります。一緒に観る人によって感情に変化があるので、恋人と観たり家族と観たりすると、いろいろな楽しみ方ができると思います。
――天功さんはスラバさんと親しいと伺いましたが、スラバさんはどんな方ですか?
天功 ステージに出られている時は大胆に演技されていますが、とても繊細な方です。情熱家で研究熱心ですので、そういうところに全世界のエンターテインメントの方たちが感動するのだと思いますし、細心のところまでショーを工夫される方だと感じます。
――お二人ともエンターテイナーとして活躍されていますが、この作品で刺激を受けたところはありますか?
野沢 お客さんと絡むのって、日本では結構大変だと思うんです。こちらが客席に降りても反応してくれないことがありますから。実際に私はやりすぎてお客さんが怒って帰っちゃったことがあったんですよ(笑)。でもクラウンたちがお客さんを怒らせないようにうまくのせられるところはすごいと思いました。
天功 クラウンたちの感情表現がすごいなと思いました。(インタビューしている横で、クラウンが紙吹雪を降らせているのを見て)今、こうしてインタビューを受けていても、いろいろと楽しませてくれますからね。
――(クラウンに向けて)舞台ではせりふがありませんが、そういった難しさや楽しさはありますか?
クラウン 体で表現するということはインターナショナルなので、どこの国でも使えることが一つの良い点だと思います。ただしそれぞれの国でそれぞれのジェスチャー、リズム、動きがありますので、理解のされ方が違いますし国に合わせなければならないというのはあるかと思います。
例えば日本で最初に公演をしたとき、お客様はシーンとしていました。でも目は輝いていたので、楽しんでくれているということが分かりました。その時に心の鍵を開けてあげること、扉を開けるための鍵を見つけてあげなければいけないということを感じました。日本の観客の方は、笑っていいんだよという許しを待っていたのだとその時に思いました。
――日本での上演を重ねて、観客に何か変化を感じることはありましたか?
クラウン 少しずつ私たちに慣れてきてくれたのではないかと思います。よりオープンになってきたと思いますし、私たちのことを受け入れてくれるようになったと感じます。かつては日本のお客様は心を閉ざしていると感じましたが、私たちは日本の皆さんを教育してきましたし(笑)、ウォーミングアップしてきたと思っています。日本の皆さんは世界一の観客だと思います。もちろん慣れてくれるまでかなり時間はかかりましたが、それを経て私たちを愛してくれるようになり、恋をしてくれたと感じています。これは着物と同じで、作るのにはすごく長い時間がかかるけれども素晴らしいものができるということです。私は日本の観客の方々を粘土のように揉んでウォームアップをさせてきたのです。
――野沢さんと天功さんは、クラウンに関する思い出はありますか?
野沢 米国だと子どもたちの誕生パーティーにクラウンを呼べるので来てもらったことがあるんですよ。そうしたら旦那が怖がっちゃって(笑)。小さい時に両親の寝室にクラウンの絵がかかっていてその顔が怖かったみたいなんです。子どもたちは喜んでいたのですが、旦那が「二度と呼ばない」と言っていました(笑)。
天功 やはりスラバのショーを観た時の印象が強かったです。それが私のクラウンの原点ですね。私はスラバのことをとても尊敬していますし、まわりのフランス人は芸術を高く評価していましたので、その時の感激と感覚があります。この作品においても、クラウンの動きを見ていると手先の動きが柔らかくて芸術性が高いところに目がいきます。スラバさんがおっしゃっていましたが、訓練をする時にバレエなどの基本を念頭においているようなので、そういうところもすごいなと思っています。
――改めてこのショーのおすすめポイントをお願いします。
野沢 受け身で観に来るのではなくて、参加して楽しもうという気持ちで来るといいですね。いじられる覚悟で、遊びに行くみたいな感じで(笑)。それを考えると一人よりはお友達や一緒に盛り上がれる家族と一緒に観るといいかもしれないです。
天功 このショーはなかなか日本では観ることができない大規模なショーなんです。それを日本で観られるのがやはりすごいことだと思いますね。
クラウン 先ほど野沢さんが家族で観に行くといいとおっしゃいましたが、それは正しいと思います。ただもう一つ見方があると私は思っていて、特に大人の方にこそ来ていただきたいです。というのは、子どもは十分にファンタジーにあふれていて、想像力や楽しむ力がありますが、大人は必ずしもそうではありません。私たちは大人の方たちに子どもの頃に感じたファンタジーをもう一度思い出してもらいたいと思っているのです。
野沢 確かに年齢に関係なく、びっくりするショーなので、童心に帰ることができますね。
ここでクラウンから「皆さんは雪が降った時にどんなことを願いますか?」という質問が投げかけられた。天功が「もっと降れと思いますね。8メートルや10メートル降ったほうが楽しいですから」と答えると、「あなたはシベリアに住んだほうがいいかもしれないです」と笑いをとったうえで、このように語った。
クラウン 雪が降り、月が光っている中でクラウンは生まれます。スラバも言っているのですが、空から降ってくる雪というのは幸せのシンボルです。雪は幸せであり笑いなんです。そして私たちが降らせる雪は、心を温める雪なのです。
取材・文=秋乃麻桔