「ガルパン」、オーケストラにパンツァー・フォー!
「ガールズ&パンツァー」オリジナル・サウンドトラック
「ガールズ&パンツァー」オーケストラ・コンサート開催決定!
これは私見だが、とまずお断りさせていただきたい。「少女とミリタリーを組合せた、最近ありがちなアニメ」、2012年秋の放送前には少なくないファンがそう見ていたアニメ「ガールズ&パンツァー」は、その放送が始まってすぐに化けた。この上なく見事に。
第一話が放送されて「思ってたのと違う(いい意味で)」と多くのファンが感じた。「乙女の嗜み、戦車道」という耳につくフレーズ。そして奇妙な世界観の中、廃校の危機に立ち向かう少女たち。そしてネタバレは避けるがまさかの大オチで終わる第一話、いろいろな意味で「なんだこれ」、である。もちろん、いい意味で。
その後、チームの立ち上げから最初の対外練習試合へと話が進んだところで、制作上の理由から苦肉の策の総集編が放送されてしまう。しかし、この総集編は作品世界の設定をうまく説明し、作品の根幹にある「競技としての戦車道」が多くの視聴者に飲み込めるものとなり、ここからさらにその人気の高まりは加速する。同年12月に発売された第一巻のパッケージソフトは発売直後に各地で完売、見事な快進撃である。
だがしかし、なのだ。ストーリーがクライマックスを迎えたところで最終二話の放送が先送りになるという、まさかのアクシデントが起こる。そこから約三ヶ月ファンは信じて待った、そして放送された最終二話はファンの期待のさらに上を行ってみせた。まさかの逆転、大勝利であった。
こんな波瀾万丈すべてを帆に受けて、「ガールズ&パンツァー」は大人気アニメとなった、ファンの支持に応えてTVシリーズでは「あえて」描写されなかったアンツィオ高校戦を描くOVAが制作され、ことし11月21日には完全新作の劇場版が公開されるほどに。
そしてその人気はアニメの枠を超えて現実世界にまで広がる。自動車のドリフトでバトルするD-1や、サッカーJリーグの水戸ホーリーホックへのスポンサードももうおなじみ、そしてなにより作品の舞台として描写された茨城県大洗町には日々多くのファンが訪れ、本作のヒロインたちはいまや大洗の「顔」として親しまれている。これを大勝利と言わずしてなんと言おうか。
これもまた、多分に私見だが言い切ってしまおう。人気の理由はひとえに「アニメ作品が素晴らしかったから」だ、と。
戦車を縦横無尽に、そこらの実写映画では真似できないほど魅力的にCGで動かして見せた制作会社グラフィニカ。キャラクターを見事に演じた声優たち、大洗女子学園の面々を演じた彼女たちはいまではすっかり売れっ子だ。その役者の芝居、そして「戦車道」という架空の競技の臨場感を音声面から作りあげた音響スタッフのいい仕事も忘れてはなるまい。
そしてなにより「第二次世界大戦時の戦車を使って、少女たちがチームを組んで戦う競技」を真ん中に据えた、かなりの変化球に思えたこの作品を堂々たる「部活動もの」アニメとして提示した水島努の力量(彼の成功作「おおきく振りかぶって」を思い出そう)、その組合せが生み出した最高のハーモニーなくして、ここまでのヒット作に成長することはなかっただろう。
そしてその成功の一翼を担ったのは、まちがいなく魅力的なサウンドトラックだ。浜口史郎による耳になじむメロディ、大胆にも「戦略大作戦」「ディア・ハンター」など数々の名作戦争映画へのオマージュを込めた選曲、ストリングス&小編成吹奏楽のサウンドは好評となる。今では本作とは別のテレビ番組のBGMに使われたりもしているから、おそらくそれと気づかぬうちにより多くの人々の耳に届いているのだ。
聴いたことがない、という方はぜひ、このサントラを「クラシック音楽を聴く」ように本気で聴いてみてほしい、実にいい演奏をしているから。いまお手元にCDをお持ちの方はライナーで演奏者を確認してほしい、そこには次田心平(読響テューバ奏者)ほか、都内オーケストラなどで活躍する若手管楽器奏者たちがクレジットされているから。上質の演奏が作品を盛り上げ、そしてその音楽そのものが広く愛されているのは喜ばしいことである。
そんな「ガールズ&パンツァー」サウンドトラックのCDは、総出荷枚数4万枚を超えた。この枚数はサウンドトラックのCDとしてはもはや規格外、見事な戦果である。この大勝利を記念して、映画の公開を控えた11月3日に本作品としては初のオーケストラコンサートが開催が決まった。最近ではアニメ作品やゲーム音楽のコンサートも増えてきているが、今回のコンサートは東京フィルハーモニー交響楽団によるフルオーケストラの演奏、本格派の演奏が期待できるだろう。
なお、キャスト勢からは現時点で西住みほ役の渕上舞の出演が発表されている。気分はもう「西住殿と横須賀で握手!」である。……これも私見だが、握手会は開催されないだろうけれど。
日時:11月3日(火・祝) 14:30、18:30開演
会場:よこすか芸術劇場
指揮:栗田博文
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
出演:渕上舞(西住みほ役)