ワッツ・オン・ブロードウェイ?~B’wayミュージカル非公式ガイド【2019年10月編】
『キャロライン、オア・チェンジ』と『カンパニー』のリバイバル、故ダイアナ妃の人生をミュージカル化する『ダイアナ』、ジェイムス・ラパイン(脚本・演出)とトム・キット(音楽)が組む『フライング・オーバー・サンセット』、ロンドンで大人気の『シックス・ザ・ミュージカル』など、来春オープンの気になる新作情報は続々と入ってくるものの、現状としては相変わらず閑散期な10月のブロードウェイ。それに足並みを揃えるかのように(?)、そろそろ観劇旅行未経験者からの質問も尽きてきたので、緩いネタで行かせていただく。
Q.プレイビルの楽しみ方は?
劇場に行くと観客一人ひとりに配られる無料のパンフレット、プレイビル。最近では電子版も出ていて、どちらがいいか案内係に聞かれたりもするが、筆者的には大切なコレクションなので必ず紙でもらうようにしている。早めに行ってじっくり眺め、キャストの顔と役名を一致させ、ナンバーに登場する地名を頭に入れておく、という“予習”としての使い方は連載第2回でお伝えした通り。今回は、終演後の“復習”としての楽しみ方を紹介してみたい。
プレイビルは、作品ごとに固有のページと、全作品共通のインタビュー記事などのページから成る月刊誌。よって、インタビューが観た作品に関するものだったらじっくり読むのももちろん面白いが、そうでない場合や英語がそんなに得意でない場合は、そこをすっ飛ばしても十分楽しめる。最も初歩的な楽しみ方はやはり、キャストやクリエイティブ陣のプロフィールをチェックすること。「この役者さん、あの役もやってた人なのか」とか、「この演出家、前に観たあの作品もやってるじゃん、ってことは私の好みかも」などと発見していくうちに、あなたもきっといつの間にかブロードウェイ沼にハマっていることだろう。
自慢のコレクションの一部
そしてもう一つオススメなのが、代役クレジット。ブロードウェイの公演は基本的にロングランなので、どの役にも必ず代役が存在する。その形はアルターネイト(週に何回か必ず登板するセカンドキャスト)、アンダースタディ(ほかの役で出演しながら、もっと大きな役をカバーする)、スタンバイ(主役に何かあった時のために待機する)、スウィング(アンダースタディの代役)など様々で、一人で何役もカバーできるよう準備しているキャストも数多い。そのクレジットを確認するだけで、ブロードウェイの層の厚さとともに、何があっても公演は行うのだ!という逞しさを感じて、筆者などは胸がアツくなるのだった。また普段からこれをしておくと、いざ自分が代役公演の回に当たってしまった時にもそうがっかりすることなく、それも含めてブロードウェイだと思えるので、その意味でもオススメだ。
【今シーズンの新作】
■10月に始まる作品
『David Byrne’s American Utopia』10月4日プレビュー開始/10月20日開幕
ミュージカルではなく「一生に一度の」「シアトリカルなコンサート」とのこと。果たして。
https://americanutopiabroadway.com/
『Tina:ザ・ティナ・ターナー・ミュージカル』10月12日プレビュー開始/11月7日開幕
ロンドンでの好評を受けてBW入り。オリヴィエ賞ノミネートの主演女優が続投!
https://tinaonbroadway.com/
■既に上演中の作品
『Freestyle Love Supreme』プレビュー中/10月2日開幕
『ハミルトン』のT・カイルとLM・ミランダがプロデュースする即興(!)ミュージカル。
https://freestylelovesupreme.com/
『The Lightning Thief』プレビュー中/10月16日開幕
ファンタジー小説「パーシー・ジャクソン」シリーズが原作。ツアーを経てBW入り。
https://www.lightningthiefmusical.com/
『ムーラン・ルージュ!』
バズ・ラーマン監督映画をアレックス・ティンバースが演出する話題作。人気沸騰中!
https://moulinrougemusical.com/
【ロングラン作品】
■日本で既に上演された/されている作品
『アラジン』
ディズニーアニメが舞台ならではの手法で表現された秀作。魔法の絨毯もスゴイ。
https://www.aladdinthemusical.com/
『ビューティフル』
キャロル・キングの半生を彼女自身の楽曲で綴る系。10月27日でクローズ。ラストチャンス!
https://beautifulonbroadway.com/
『シカゴ』
オペラ座の怪人に次ぐロングラン記録を更新中の名物作。出来は割とキャスト次第。
https://chicagothemusical.com/
『ライオンキング』
開幕から20年以上経つというのに、未だ入場率がほぼ毎週100%を超える大ヒット作。
https://www.lionking.com/
『オクラホマ!』
1943年初演の名作を21世紀の解釈でリバイバル。2019年トニー賞。来年1月19日まで。
https://oklahomabroadway.com/
『オペラ座の怪人』
言わずと知れた世界的メガヒット作。圧倒的な知名度ゆえ、劇場では日本人に遭遇しがち。
http://www.thephantomoftheopera.com/
『ウィキッド』
開幕から15年が経ち、ようやくに多少の余裕が。定期的に観たい傑作。
https://wickedthemusical.com/
■日本未上演の作品
『Ain’t Too Proud』
『ジャージー・ボーイズ』チームが描くテンプテーションズの軌跡。振付とキャストが最高。
https://www.ainttooproudmusical.com/
『ビートルジュース』
ティム・バートン監督映画の舞台化。原作を知らないとノリについていけない可能性高し。
https://beetlejuicebroadway.com/
『ブック・オブ・モルモン』
日本では永遠に上演されなさそうだが超絶面白い。モルモン教だけwikiで調べて観るべし。
https://bookofmormonbroadway.com/
『カム・フロム・アウェイ』
「911」の日、カナダの小さな町に起こった実話をシンプルだが力強い演出で描く感動作。
https://comefromaway.com/
『ディア・エヴァン・ハンセン』
深遠なテーマをスタイリッシュに描く、2017年のトニー賞受賞作。絶対日本でやると思う。
https://dearevanhansen.com/
『アナと雪の女王』
舞台ならではの表現が見当たらない残念作だが、満足感は保証する。生レリゴー最高。
https://frozenthemusical.com/
祝!日本での上演決定
『Hadestown』
『グレコメ』の演出家が現代的に描くギリシャ神話。2019年のトニー賞で8冠を達成。
https://www.hadestown.com/
『ハミルトン』
開幕5年目にして未だ超入手困難なモンスター級ヒット作。文句なしに革新的。観るべし。
https://hamiltonmusical.com/
同名映画の舞台化。なぜか人気。アメリカ的なノリについていける自信があればどうぞ。
https://meangirlsonbroadway.com/
『トッツィー』
主演俳優を筆頭に大変チャーミングな舞台。東宝出資中につき、日本版妄想も進む。
https://tootsiemusical.com/
同名映画の舞台化。完全に女子向け。来年1月5日でのクローズが決定。
https://waitressthemusical.com
【10月のミュージカルイベント】
11月2日なんてほぼ10月だろう(?)というのと、11月にはほかに紹介したいビッグイベントもあるということで、少々早いがこちらの「ブロードウェイ・ラン(RUN=走る)」を。ニューヨークシティマラソンの興奮を42.195キロ走ることなく味わおう、5キロだけ走って同じ場所にゴールしちゃおう!というよく分からないイベントに、「ブロードウェイ・ケアーズ」を通してチャリティとして参加するというもの。よく分からないが、歩いてもいいそうだし、土曜の朝なら観劇ができる時間帯でもないし、いつもゴミゴミしていてまっすぐ歩くことも難しい劇場街を駆け抜けられるのだとしたら、ちょっと楽しそうだ。
https://broadwaycares.org/pre-event/broadway-run-2019/