凄技炸裂!弓アクションとチャーミングなロビンを楽しむ『フッド:ザ・ビギニング』#野水映画“俺たちスーパーウォッチメン”第七十回
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TVアニメ『デート・ア・ライブ DATE A LIVE』シリーズや、『艦隊これくしょん -艦これ-』への出演で知られる声優・野水伊織。女優・歌手としても活躍中の才人だが、彼女の映画フリークとしての顔をご存じだろうか?『ロンドンゾンビ紀行』から『ムカデ人間』シリーズ、スマッシュヒットした『マッドマックス 怒りのデス・ロード』まで……野水は寝る間を惜しんで映画を鑑賞し、その本数は劇場・DVDあわせて年間200本にのぼるという。この企画は、映画に対する尋常ならざる情熱を持つ野水が、独自の観点で今オススメの作品を語るコーナーである。
スパイアクション映画『キングスマン』(15)の新米エージェント・エグジー役で一躍脚光を浴び、『ロケットマン』(19)でエルトン・ジョンを熱演したことも記憶に新しい、タロン・エジャトン。エグジーもお茶目で良かったけど、エルトン役の繊細な感情表現も歌声も素晴らしかった!私もエジャトン君の演技に魅了されたファンの一人である。そして、そんなエジャトンの新たな一面を見せてくれる作品が、現在公開中の『フッド:ザ・ビギニング』だ。
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舞台はイングランド。荘園の若き領主・ロビンは、広大な屋敷で平和に暮らしていた。しかし突然の徴兵通知により、十字軍として異国で戦うことになる。それから四年後。ロビンは上官に反抗したことにより帰国するも、自分が戦死したとされていることに愕然とする。さらには財産を没収され、恋人や領民も鉱山へと追放されたと知る。失意のどん底に落ちたロビンは、戦地では敵だった凄腕の戦士・ジョンとともに、腐敗した政府への反逆を開始する。
ルールにとらわれないアクションと衣装
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ロビン・フッドは、イギリスはノッティンガムの森に住んでいたという伝説上の義賊。『フッド:ザ・ビギニング』は、彼がいかにして誕生したのか……という、タイトル通りの“前日譚”である。
弓の名手としても知られるロビンは、本作で実写とは思えないほどのアクロバティックな弓捌きを展開する。そのアクションは、空中を回転しながら敵を射抜いたり、ジャンプしながら矢を連射したりと、ハイスピードなシーンの連続だ。三本の矢を続々とつがえて撃つ様は超クール! ゲームのスーパープレイのような鮮やかなアクションに、思わず感嘆の息が漏れた。エジャトンはこうした技術を会得するために、現代最高の弓使いと呼び声高いラーズ・アンデルセン氏に指導を受け、撮影に臨んだという。
本作の大きな特徴は、ストーリーは古典がベースだが、前述のバトルアクションに加え、衣装面では時代にとらわれない創意工夫がなされているところ。“モダン・メディーヴァル(現代的中世)”と名付けられた衣装は、中世らしさを残しつつもメタリックな素材を使うなど、現代的な要素も多分に含まれている。確かに「この時代にこれは無かっただろう」と思うものもあるのだが、洗練された衣装はどれもカッコよく、細かいことなど気にならなかった。
古い時代を舞台にした作品だからといって、設定に縛られるようなことはしない。ルールはない、というのが製作現場のルールだったそうだ。こうして現代的な要素も取り入れることにより、“現代の”観客と作品の繋がりを感じられる映画を作ったと、オット・バサースト監督は語る。
タロン・エジャトンが演じるロビンの魅力
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本作のロビンは、タロン・エジャトンの持つ魅力がフルに使われたキャラクターではないかと感じた。義賊として戦っている最中は、きりりと引き締まった表情を見せる。しかし、ひとたび領主の顔に戻れば飄々とした若者に様変わりし、眉毛をクイッと上げて、調子づいて見せたりもする。タロン・エジャトンは、こういった落差の大きな表情の使い分けが上手い役者だと思う。
そして持ち前の人懐っこい笑顔が、ロビンをよりチャーミングに、茶目っ気たっぷりに見せる。彼が演じることで、皆が惹かれるロビンのカリスマ性に説得力を持たせているのだ。今までにない、新しいロビン・フッド像が出来上がったことは間違いない。
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本作はロビン・フッドが誕生するまでの物語だが、最後まで観れば、続編制作の可能性も感じられるだろう。私としては、これほどチャーミングかつクールなヒーローをここで終わらせるのはもったいないと思うので、この“ビギニング”だけでなく“エンディング”まで見てみたいところ。
皆さんも、エジャトン版ロビンの“人たらし”っぷりに魅了されてくれ!
『フッド:ザ・ビギニング』は公開中。