「東京・春・音楽祭 -東京オペラの森 2016-」プレス懇親会レポート
写真左より、二木忠男上野観光連盟会長、鈴木幸一実行委員長、ドメニコ・ジョルジ駐日イタリア大使 (c)堀田力丸
11月25日に「東京・春・音楽祭 -東京オペラの森 2016-」のプレス懇親会が開催され、来年の同音楽祭のプログラムが紹介された。
最大の聴きものは、「リッカルド・ムーティ指揮日伊国交樹立150周年記念オーケストラ」の演奏会に違いない。ミラノ・スカラ座を長く率い、現在はシカゴ交響楽団の音楽監督を務めるムーティと東京・春・音楽祭との結び付きは深く、2006年、07年、10年、13年に続いて、5度目の来演となる。鈴木幸一実行委員長は、聴衆の集まらなかった初期の頃、ムーティから「始めからうまくいく音楽祭はない。協力するからずっと続けなさい」と励まされたという。
鈴木幸一実行委員長 (c)堀田力丸
今回は、ムーティがイタリアの若くて優秀な音楽家を集めて創設したルイージ・ケルビーニ・ジョヴァニーレ管弦楽団の40人が来日し、日本の若手演奏家45人とともに記念オーケストラが特別に編成される。ムーティは、十八番であるヴェルディのオペラから、「ナブッコ」、「アッティラ」、「マクベス」、「運命の力」、「第1回十字軍のロンバルディア人」の名曲・名場面を、そして、ボイトの「メフィストフェレ」のプロローグを取り上げる。この日伊国交樹立150周年を祝うオーケストラを、ドメニコ・ジョルジ駐日イタリア大使は「日本とイタリアの音楽家による夢のような共演」と語る。彼らは、3月の東京・春・音楽祭のあと、夏にはイタリアのラヴェンナ音楽祭にも出演する予定である。
もう一つのビッグ・プロジェクト、東京春祭ワーグナー・シリーズの第7弾は、「ニーベルングの指環」4部作から第3作「ジークフリート」。指揮は、2014年の「ラインの黄金」、15年の「ワルキューレ」に引き続き、名匠マレク・ヤノフスキが務める。ヤノフスキは16年からワーグナーの聖地、バイロイト音楽祭でも「ニーベルングの指環」を担うことになり、ますますワーグナー指揮者としての評価を高めている。ジークフリート役にアンドレアス・シャーガー、ブリュンヒルデ役にエリカ・ズンネガルド、さすらい人役にエギルス・シリンスなど、錚々たる顔ぶれ。また、オペラを演奏する機会の少ないNHK交響楽団がワーグナーのオペラ全曲を手掛けるのもこのシリーズの魅力となっている。字幕・映像付きの演奏会形式の上演。
もう一つの音楽祭常連オーケストラである東京都交響楽団は、レオ・フセインの指揮で、ヴォーン・ウィリアムズの「タリスの主題による幻想曲」と「5つの神秘的な歌」、デュリュフレの「レクイエム」を演奏する。ヴォーン・ウィリアムズは、イギリス出身のマエストロの得意とするところ。デュリュフレの「レクイエム」は、フォーレのそれと比較されるほどの美しい音楽。
(c)堀田力丸
紀尾井シンフォニエッタ東京は、古楽界の新世代のリーダーの一人であるリチャード・エガーとともにヘンデルとパーセルの作品を演奏する。普段、あまりバロック音楽を手掛けない紀尾井シンフォニエッタ東京だけに、古楽のスペシャリストとの共演は興味津々である。
そのほか、歌曲シリーズには、タラ・エロート、クリストフ・プレガルディエン、トマス・コニエチュニーが登場する。プレガルディエンは室内楽伴奏で「冬の旅」を歌う。「24の前奏曲」シリーズでは、レーラ・アウエルバッハの「24の前奏曲」を作曲者自身のピアノ演奏で聴く。ポリーニのプロデュースによるベリオ、ブーレーズ、ベートーヴェンの作品による室内楽コンサートもある。
そして恒例となっている、国立科学博物館、東京国立博物館、東京都美術館、国立西洋美術館、上野の森美術館での様々なミュージアム・コンサートも楽しみである。
(文・山田治生)