「台風19号被災地支援のための がんばろうナガノ!チャリティ・リレー・コンサート」第1弾スタート

インタビュー
クラシック
2019.11.28

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長野県内を中心に「社会包摂」を目的としたクラシックの音楽活動を展開するCクレフコンサートマネジメントでは、10月12日から13日に東日本を直撃した台風19号により、甚大な被害を受けた長野県北東部を支援する「台風19号被災地支援のための がんばろうナガノ!チャリティ・リレー・コンサート」を東京・銀座NAGANO(中央区銀座5-6-5)で開催する。

Cクレフコンサートマネジメントには、長野市や長野県内にゆかりがある東京在住のクラシック・アーティストたち、サイトウ・キネン・オーケストラや久石譲フューチャー・オーケストラ・クラシックなどに参加する演奏家からも、「被災地の力になりたい」という声がたくさん届いているとのこと。ニュースなどで取り上げられる機会が減っている被災地の状況を風化させないようにという思いを込めて、継続的な実施を決めたそう。

第1弾は、2019年12月4日(水)、5日(木)、19日(木)。入場料は無料だが、銀座NAGANOに設置される募金箱への寄付していただくスタイル。収入はすべて被災地に届けるという。開催を決めた牟禮(むれ)美華子代表に話を聞いた。

■出演者は「長野愛」にあふれる面々ばかり

――まず、Cクレフの活動について教えてください。

牟禮 アウトリーチや、社会包摂を目的とした音楽イベントに演奏家を派遣することを目指して、2018年の秋に事務所を立ち上げました。ただ長野県内では、「社会包摂」については理解を得られる公共文化施設、行政機関などが少なく、まだ探し切れていないのが現状です。日本国内どこでも似たような状況だとは思うのですが、音楽は「厳かに鑑賞すべき芸術」などの意識が強く、社会のために活用するという意味では、これから種まきをしていくところです。とはいえ、クラシックのコンサートに社会貢献的なことも盛り込みたい、といった企画のお手伝いをしたりと、少しずつではありますが動き始めてもいます。

――チャリティコンサートを開こうと思ったきっかけは?

牟禮 私は松本市出身ですが、大学進学以来ずっと東京で音楽の仕事をしておりました。東日本大震災のときは横浜にいて、1人で外出していたときでしたのでずいぶん怖い思いをしました。でも、付近を歩いていた大勢の見知らぬ人たちと励まし合ったり、助け合ったりという経験をしました。その数カ月後に故郷の松本でも大きな地震が起こり、あの恐怖がよみがえりました。このまま故郷に何も貢献しないままでいいのだろうかという気持ちが強くなり、その年末に、仕事のあてもないまま松本の実家に戻ったんです。今回の台風でも以前の気持ちが思い起こされて、そのときに長野市出身の演奏家から「長野駅でチャリティの駅コンをやりたいが、方法がわからず困っている」という相談が私のもとに届きました。その話を聞いて「地元を離れている演奏家たちも何かできないかと思っているのでは?」と感じ、弊社所属の演奏家たちにも意見を聞いたところ、誰もが長野を心配し、支援をしたがっていることがわかったんです。中には、泥の片づけのボランティアに行くことを予定している演奏家もいました。

――アーティストにはアーティストだからこそできることがあると思います。

牟禮 そう思います。福島県いわき市の文化施設「いわきアリオス」の職員の方々と、事業企画のことで話し合ったことが度々あって、東日本大震災の経験から「支援が必要な状況であることを、知らせ続けることが大事」と聞いたことも思い出しました。ならば長野の現状についてお知らせするチャリティ・コンサートを東京で行おう、ということで動き出しました。止むを得ないことではありますが、メディアでは、日々新たなニュースが流れ、長野の被害状況を報道で目にすることは少なくなっていると聞きます。しかし現場はまだまだ大変な状況が続いており、そのことを東京の方々に今一度、コンサートを通してお伝えしようと思ったわけです。

 私が長野市で仕事をしていたときに、アウトリーチで行った地域も大きな被害を受けていることを知りました。私自身こそ泥やがれきの片付けに行こうと思えばすぐに向かえる距離に住んでいるにもかかわらず、日々のことに追われて行くことができていません。そのことで迷った時期もありますが、どんな形でも、被災者の方々の助けになることならやろうと思い直し、私が一番大切にしている方法で支援活動をしようと決めました。そこから県庁の担当課に連絡するなどを経て、会場として考えていた銀座NAGANOさんに直接電話を入れました。担当者の方が私どもへの感謝の言葉とともに県庁を説得してくださるとおっしゃってくださったんです。そして会場を無料提供してくださり、また「すぐにやりましょう!」と日程も提示してくださった。私が最初に銀座NAGANOさんに電話をしてから日程と出演者を決めるまで1週間もかからないという速さで、銀座NAGANOさんへは感謝してもしきれません。

――どんなコンサートになる予定ですか?

牟禮 長野の現状を知らせることが目的ですから、入場は無料とし、どなたでも気軽にお入りいただけるようにしました。出演者は、「長野ゆかり」の「長野愛」にあふれる方々ばかり。コンサートなどで通っていた場所が浸水してしまった、そして長野がまだまだ支援を必要としているという現状をお話ししながら演奏を聴いていただくという内容です。どの出演者も実力派ばかりで、驚くようなビッグネームの演奏家さんが登場するスペシャルな回も予定しています。「こんなにすごいアーティストたちがみんな長野を応援している!」と、東京のお客様がびっくりするようなコンサートにしていきます。募金は、銀座NAGANOさんに設置されている募金箱をご案内しますが、公演時には2階のイベントスペースにも募金箱を設置し、出演者たちがそちらへのご寄付をお願いする予定です。

また銀座NAGANOさんは、セレクトショップと言っていいほど、厳選された長野の名産品を扱っている“しあわせ信州シェアスペース”です。そこで音楽を聴いたり、お買い物をしたりと楽しんでいただいた後で、お釣りを募金していただければうれしく思います。

■ヴァイオリニストの中村里奈さんのボランティア体験談

ヴァイオリニストの中村里奈さんから、次のようなボランティア体験談が届きました。

「今回私がボランティアに向かった先は、長野駅から電車で15分ほどの柳原駅からバスで数分の場所です。長野は私にとって生まれ育った街です。今でもコンサートやイベント、テレビなどで決して多くはありませんがお世話になっています。そんな長野がこのような状況のときに何もせずにはいられず、ボランティアに参加しました。

バスを降りると、先ほどまで見ていたものとは全く違う景色が広がっていました。家の1階部分は壁などすべてなくなり柱のみの状態。納屋などは崩れ落ち、がれきの山でした。土埃が立ち、泥でコンクリートが見えない道路。そんな中に一軒、1階部分はそこまで崩れていないにもかかわらず、屋根の部分が破損している家がありました。なぜあのように高い部分だけ崩れているのかと聞いたところ、あの家はもともと違うところにあったのが、丸ごと流されてここにあると聞き驚きを隠せませんでした。

私が担当したのは、3人のお子様を持つご夫婦のお宅でした。私はもともと体力があるほうなので、そこそこ動けるだろうと自信を持っていたのですが、泥は重く、固く、自分の考えの甘さを痛感しました。泥をかいていると、そのご家庭で使っていたであろう日用品が出てきます。おもちゃの新幹線や、学校で使うコンパスやペン。出てくるたびに奥様が思いをつぶやいていて、胸が締め付けられました。ふと目を向けたとき、肩を落とし、静かに小さなスコップで小石を分けていた奥様の姿が今でも忘れられません。

作業の流れはボランティアに慣れた方が、不慣れな私でもわかりやすいよう丁寧に教えてくださいました。一緒にグループを組んでくださった栄村の皆さんは、以前自分たちが災害にあった際、大勢のボランティアの方に助けられたので、自分たちにもできることがあれば、ということでいらっしゃっていたそうです。あの日は本当にたくさんの人の温かさを感じました。

私は長野で生まれ、長野で育ち、長野の街並みが大好きです。被災された方が普段の生活に戻れるよう、そして長野がもっともっといい街になるよう、1人の演奏家として、そして長野を愛する者として、これからもできることをして行きたいと思っています」

取材・文:いまいこういち

公演情報

台風19号被災地支援のための
がんばろうナガノ!チャリティ・リレー・コンサート

 

 
■日程:2019年12月4日(水)・12月 5日(木)・12月 19日(木)各18:00開演
■会場:銀座NAGANO 2階イベントスペース
■出演:
2019年12月4日(水)岩渕みずき(サクソフォン/無伴奏・CD伴奏/松本市出身)
2019年12月5
(木)松谷明日香(チェロ/無伴奏/長野市出身)
2019年12月19
日(木)デュオ・ドゥ・フルール(中村ゆか里&里奈/ヴァイオリン二重奏/長野市出身)
■上演時間:各公演とも約30分間
:入場無料 
※銀座NAGANO内に設置されている募金箱に募金をお願いします。募金などで得た収入はすべて被災地に送ります。
■問合せ:Cクレフ コンサートマネジメント https://c-clef.wixsite.com/concert
※1月以降の公演予定については決まり次第、Cクレフコンサートマネジメントのホームページ銀座NAGANOの公式ウェブサイトなどで発表します。
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