キエフ・バレエが年末年始に『白鳥の湖』『くるみ割り人形』『初夢バレエ・ガラ』を上演~見どころをガイド
エレーナ・フィリピエワ(右)
創立150年の歴史と伝統が息づくウクライナのキエフ・バレエ(タラス・シェフチェンコ記念ウクライナ国立バレエ)が2019年12月~2020年1月に日本ツアーを行い、不滅の名作『白鳥の湖』、クリスマスの風物詩『くるみ割り人形』、新登場の『初夢バレエ・ガラ』を上演する。近年毎冬来日しており、本年もバレエの醍醐味を堪能させてくれそうだ。
■フィリピエワ、全幕最後の『白鳥の湖』
注目はエレーナ・フィリピエワが『白鳥の湖』全幕を踊るのが最後だということ。長年プリマバレリーナの座に君臨し、華やかな存在感と役を生き抜く表現力で多くの観客を魅了してきた名花の極め付きが『白鳥の湖』のオデット/オディール役だ。楚々として透明感のあるオデット(白鳥)、蠱惑的なオーラを振りまくオディール(黒鳥)の演じ分けが鮮烈で、日本ではキエフ・バレエ公演の他、レニングラード国立バレエ(現在の名称はミハイロフスキー劇場バレエ)への客演を含め数多く踊ってきた。その当たり役を一線で踊っているうちに踊り納めにする意向で、今回の日本公演(1月11日17:00東京)が最後となる。雄姿をしかと目に焼きつけたい。
エレーナ・フィリピエワ(手前) ニキータ・スハルコフ(左)『白鳥の湖』
エレーナ・フィリピエワ『白鳥の湖』
■ノヴィコワ&サラファーノフが客演!
『白鳥の湖』には豪華ゲストも出演。オレシア・ノヴィコワ(マリインスキー・バレエ)&レオニード・サラファーノフ(ミハイロフスキー劇場バレエ)という公私にわたるペアである(1月10日東京ほか)。ノヴィコワは絵に描いたように端麗なスタイルを誇り、クラシック・バレエの理想の美を体現するかのような女神で、踊りも繊細かつ優美極まりない。サラファーノフはキエフ・バレエを経てマリインスキー・バレエでも活躍したスターで、滑らかなテクニックと音楽性豊かな踊りを持ち味に客席を沸かせる。キエフ・バレエ日本公演には2年ぶりの客演となり、気心の知れた団員たちと共に本領を発揮するに違いない。この二人が日本で共演するのはじつに8年ぶりで、盤石のパートナーシップから生まれる至上の名演を味わえる貴重な機会になるだろう。
オレシア・ノヴィコワ(左) レオニード・サラファーノフ(右)
■新星ムロムツェワが『白鳥の湖』全幕デビュー!
さらに『白鳥の湖』では若手のアンナ・ムロムツェワが日本では初めて全幕主演を果たす(1月11日12:00東京、12日前橋ほか)。ムロムツェワはキエフ国立バレエ学校を経てキエフ・バレエに入団し、『くるみ割り人形』のクララをはじめとする主役や重要なソリスト役を踊っている。「稀にみる」と形容するほかない抜きん出たプロポーションに恵まれ、愛らしく初々しい踊りを持ち味とする新星が、今回の『白鳥の湖』のオデット/オディールでは、どのような演技を見せるのか。ことにオディール(黒鳥)をいかに演じて王子を魅了するのか大いに見ものである。
アンナ・ムロムツェワ(左) ニキータ・スハルコフ(右)『くるみ割り人形』
アンナ・ムロムツェワ『白鳥の湖』
■『初夢バレエ・ガラ』は「バレエの宝箱」
『初夢バレエ・ガラ』(1月3日12:00/16:00東京)にも注目したい。『ライモンダ』第3幕より、『眠りの森の美女』第1幕よりワルツ、ローズ・アダージョ 、『ウィンナー・ワルツ』より、 『ドン・キホーテ』第2幕より夢の場などだけでなく、ウクライナの民族舞踊ゴパック、ウラジーミル・マラーホフ振付『コッペリア』の一部を日本で初披露するなど多彩で充実した演目が並ぶバレエの宝箱のような公演である。フィリピエワをはじめ来日する劇場所属ソリストが揃い踏みし、管弦楽生演奏も入る本格公演を「お年玉価格」で見ることができる絶好の機会なので、バレエを初めてご覧になる方、家族連れの方にもおすすめだ(4歳から入場可能)。
『初夢バレエ・ガラ』ビジュアルイメージ
■「濃いバレエの血」が流れる熱い舞台
キエフ・バレエにはフィリピエワ、ムロムツェワ以外にも高身長で舞台映えがするヤン・ヴァ―ニャ、気品ある踊りが魅力的なニキータ・スハルコフ、表現力豊かな実力者オレシア・シャイターノワら力のあるダンサーが揃う。さらにアレクサンドラ・パンチェンコ、アンドリー・ガブリシキフといった新世代が台頭中だ(傘下のキエフ国立バレエ学校の芸術監督を寺田宜弘が務める)。旧ソ連時代にはボリショイ・バレエ、キーロフ・バレエ(現マリインスキー・バレエ)と並び称され、ニジンスキーやリファールを皮切りに世界のバレエ界をリードする人材を続々と輩出している名門には、濃いバレエの血が流れている。ミコラ・ジャジューラらが指揮するウクライナ国立歌劇場管弦楽団の名演奏(一部公演を除く)も相まった熱い舞台に期待したい。
2019-20年末年始「キエフ・バレエ」出演 ムロムツェワ&スハルコフからのメッセージ
文=高橋森彦
公演情報
―タラス・シェフチェンコ記念ウクライナ国立バレエ―
音楽:P.チャイコフスキー 原振付:M.プティパ 振付・演出:V.コフトゥン
■日時・会場:
2019年12月26日(木)15:00(シャイターノワ&ガブリシキフ)東京文化会館 大ホール
■料金:SS席18,000円 S席16,000円 A席13,000円 B席11,000円 C席9,000円 D席7,000円
■料金:S席8,500円 A席7,000円 B席5,500円 C席4,000円
■日時・会場:2020年1月3日(金)12:00/16:00 東京国際フォーラム ホールA
■料金:全席指定 一般9,000円 こども(4歳以上~小学生以下)4,500円
■問合せ:光藍社センター 050-3776-6184
『白鳥の湖』
■日時・会場:
2020年1月10日(金)18:30(ノヴィコワ&サラファーノフ)東京文化会館 大ホール
2020年1月11日(土)12:00(ムロムツェワ&ヴァーニャ)東京文化会館 大ホール
2020年1月11日(土)17:00(フィリピエワ&スハルコフ)東京文化会館 大ホール
■料金:SS席18,000円 S席16,000円 A席13,000円 B席11,000円 C席9,000円 D席7,000円
■問合せ:光藍社センター 050-3776-6184
■料金:S席15,000円 A席12,000円 B席10,000円 C席8,000円 D席6,000円
■演奏:ウクライナ国立歌劇場管弦楽団
(※演奏は特別録音音源を使用)
■問合せ:ザ・ヒロサワ・シティ会館 029-241-1166
■日時・会場:2019年12月25日(水)18:30(ムロムツェワ&スハルコフ)いわき芸術文化交流館アリオス 大ホール
■料金:S席8,500円 A席7,000円 B席5,500円 C席4,000円
(※演奏は特別録音音源を使用)
■問合せ:光藍社センター 050-3776-6184
■演奏:ウクライナ国立歌劇場管弦楽団
■問合せ:光藍社センター 050-3776-6184