シンセ番長・齋藤久師が送る愛と狂気の大人気コラム・第六十二沼 『一年総集沼!』

コラム
音楽
2019.12.30

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「welcome to THE沼!」

沼。

皆さんはこの言葉にどのようなイメージをお持ちだろうか?

私の中の沼といえば、足を取られたら、底なしの泥の深みへゆっくりとゆっくりと引きずり込まれ、抵抗すればするほど強く深くなすすべもなく、息をしたまま意識を抹消されるという恐怖のイメージだ。

一方、ある物事に心奪われ、取り憑かれたようにはまり込み、その世界にどっぷりと溺れること

という言葉で比喩される。

底なしの「収集」が愛と快感というある種の麻痺を伴い増幅する。

これは病か苦行か、あるいは究極の癒しなのか。

毒のスパイスをたっぷり含んだあらゆる世界の「沼」をご紹介しよう。

第六十二沼(ろくじゅうにしょう) 『一年総集沼!!』

今日は、今年一年を振り返ってみよう。

今年は、まるで親の仇を打つかのごとく多忙を極める活動をしまくった。

そして、世の中や周りの環境も大きく変動する一年だった。

クリスマスイヴにはテレビ東京番組「東京交差点」という、日本、東京の文化をあらゆる角度から検証する番組に出演するというハプニングもあり、パッチコードだらけのユーロラックモジュラーと私、さらにはその過激なサウンドが三位一体になって放映され放送事故だと思った方も多いのではないか。

夏には瀬戸内芸術祭にお招きいただき、DOMMUNE瀬戸内でシンセサイザー開発の神である菊本忠男さんとのトークも実現した。

菊本さんは言わずと知れたTR-808、TB-303、TR-909など、世界中の電子音楽家のマストアイテムである神電子楽器の生みの親だ。

また、私のプロデュースするgalcidもありがたい事に世界中からオファーを頂き、ドイツ、アメリカ、イタリア、スウェーデン、中国、日本と多くのレコードレーベルからのリリースが決まった。

しかもその殆どがアナログレコードとデジタル配信という、電子音楽家冥利につきる事態に驚きを隠せなかった。

しかし、働き蟻の我々日本人からすると、海外とのやりとりは、いささか時間の問題が常につきまとう。

今では地球の反対側でも、スマートフォンさえ持っていれば顔を見て話す事ができるようになった。

しかし、「休む」という一大行事にたいしての根本的な概念が各国様々である。

ヨーロッパの人たちは、季節のイベントになると各々がバカンスのためにどこかに居なくなっちゃうw

当然レコードプレス工場も全てストップする。

本当は、我々のレコードが出るのは年内の予定だったのだ。。。

しかし、レコードプレスができないとなれば、もちろんリリースする事ができない。

結局のところ、今年から来年にかけてのリリースになってしまった。

しかし、この一例をとってみても、おかしいのは日本人の方だ。。。と思いませんか?

「休む時は休む」と、堂々と休暇を楽しみ英気を養う。そしてまたフレッシュな気持ちで仕事に励む事ができる。

仕事による過労死なんて、本当に悲しい。

かく言う私も遊ぶために働く。だから休暇はとても大切だ。

しかし、性格的(本当は脳の問題)に、一度集中したら仕事から離れられず、終わるまでやってしまうのであった。

結果的には3枚のフルアルバムと数枚の12inch、そしてgalcid初の試みとして、ビートが一切無いambient worksもレコーディングした。

幸いな事に、各国のレコード会社の担当者は超がつくほど早い(奇跡だw)ので、プレス以外はスムーズに進んでいる。ありがとう。

そんな忙しい中、galcidが新しいアプローチを開始した。

「音x 感性」というワークショップを始めたのだ。

これはよくある「機材説明」的なワークショップではなく、音そのものを鑑賞して、言語化し、他者と対話するというもの。

文字にすると難しく感じるが、簡単に言えば、galcid lenaがモジュラーシンセサイザーをつかって出すambientあるいは、ドローンのような環境音楽を聴き、自己の中に秘められた潜在意識を引っ張り出し、再確認するというワークショップだ。

このワークショップは今年の11月から3本行ったが、即日完売の大盛況。

来年は海外展開もするので、是非参加してほしい。

 

また、今年は周囲の状況も激変した。

私たちの愛する文化発信の拠点である宇川直宏氏率いる「DOMMUNE

」も新生PARCOに場所を移動し、「SUPER DOMMUNE」としてリニューアルされた。

秘密の隠れ家が公になってしまうのは少し残念だが、我々のカルチャーがもっとより多くの人々に伝わっていくのはとてもいい事だ。

秋には台風の猛威にヤラれた。

停電なんて何十年ぶりだっただろうか。

電気が無いとただの釣り師の私は、あらためて自然の恐ろしさに驚愕した。

あ、そうそう、今年は魚も良く釣れた。

一晩で20匹釣った時には「もう釣りを引退しよう」と思ったほどだ。

と、いい事ばかり書いてきたが、実は「嫌な事を完全に無視する」という技をつけたのも今年の収穫。

この技は、前号「矢沢沼」でも紹介したが、矢沢永吉さんのあまりのポジティヴ思考に影響を受けたからだ。

人間は前向きでいればいるほど、不思議といい事しか起こらない。悪い事が起こっていても気がつかないw

今年もこのコラムを愛読してくださりありがとう!

また来年もヨロシクね!

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