鈴木杏が激しい憎悪を抱く女性を演じる一人芝居『殺意 ストリップショウ』ビジュアルと公演詳細を発表
-
ポスト -
シェア - 送る
撮影:山添雄彦
2020年7月11日(土)〜 7月26日(日)シアタートラムにおいて、鈴木杏の一人芝居『殺意ストリップショウ』が上演される。このたびビジュアルおよび公演詳細が発表された。
『殺意 ストリップショウ』は、その鋭い筆致で人間の強い生命力や深い業を描いてきた三好十郎が1950年に発表した、 一人の女性ダンサアが語る衝撃的な半生の物語。この刺激的な作品に挑戦するのは、昨年度読売演劇大賞を受賞した、日本を代表する演出家・栗山民也。翻訳劇・現代劇・古典劇 ・ミュージカル などあらゆるジャンルで活躍し、さまざまな劇場でハイクオリティな上演を続けているが、世田谷パブリックシアターでは昨年、天安門事件を題材にし、アメリカと中国の複雑な関係性を描いたセンセーショナルな作品『CHIMERICA チャイメリカ』を見事に立ち上げ、高い評価を受けた。
また、その栗山が大きな信頼を寄せる女優・鈴木杏がこの大役に挑む。蜷川幸雄、ケラリーノ・サンドロヴィッチ、松尾スズキなど多くの著名な演出家の作品に出演するたび、確かな実力を発揮し、抜きん出た存在感を示す鈴木が、強烈な情念を秘めたショウダンサアの喜怒哀楽をどの様に表現するかにも期待が高まる。
目まぐるしい変化を遂げた第二次大戦前後の東京と人々の欲望に飲み込まれ、心を強く通わせた愛する男を失ったことで、この世の不条理に怒りを燃やしていた主人公が、次第に人というものの本質に気づき、受け入れていく様には、現代にも通じる大衆主義の愚かさと、人間存在への諦念、切なさが滲み、2020 年を生きる我々の胸にも深く突き刺さる作品だ。
観客は、高級クラブの客という形式で舞台を見守ることとなり、決して無関係な傍観者ではなく、誰もが「殺意」を持つ・持たれる当事者となりうることを、本作は鋭く投げかける。
「しかし、時には思い出してくださいまし、このような姿をしたこのような声をした緑川美沙という、こんな女がいた事を。」
高級なナイトクラブのステージ、自らのフィナーレを終えたソロダンサア・緑川美沙が、客にその数奇な人生を語りだす。南の国の小さな城下町に生れた美沙は、日華事変、二・二六事件の直後、兄の勧めで東京に行き、急進的な左翼の社会学者・山田先生のもとに身を寄せる。そこで美沙は、自分と同じく、兄である先生を信奉する弟・徹男と運命的に出会う。二人は密やかに気持ちを通わせるが、やがて日本は戦争に突入し、先生が軍国主義に迎合することでその思想を転向する中、ほどなくして徹男は学徒出陣で命を落とす。悲嘆にくれたまま敗戦を迎えた美沙は、愛国を掲げた徹男が悔いなく出征する後押しさえした山田先生が、軽々と再び左翼に鞍替えする様子を見、保身のため思想を捨てるその卑しさに激しく憎悪を燃やす。ついに先生の殺害を決意した美沙は、レビュウダンサアと娼婦に身をやつし、その機会をうかがっていく…。
「――善い悪いが私にとって――人ではない、この私にとって、善い悪いがなにかしら?」