若村麻由美にインタビュー 今『メアリー・ステュアート』を上演する意味

2026.2.7
インタビュー
舞台

若村麻由美

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演出家・栗山民也のもとに華と実力を兼ね備えた出演者が結集し、2026年4月から5月に東京ほか4都市で上演される『メアリー・ステュアート』。ドイツの劇作家フリードリッヒ・シラーの原作を、イギリス演劇界の気鋭ロバート・アイクが大胆に翻案した本作品は、王権や宗教を巡ってせめぎ合う二人の女王を軸とした謀略渦巻く王室ドラマだ。対極的な二人の女王のうち、スコットランド女王メアリー・ステュアートを演じるのは宮沢りえ。対するイングランド女王・エリザベスを演じるのは、若村麻由美。作品・役柄の印象や公演への期待感、そして今上演する意味を若村に聞いた。

ーー『メアリー・ステュアート』は、ウエストエンドでロングランもされたスリリングな人気作。栗山民也さん演出による、その日本初演版へのオファーを聞いた時は、どう思われましたか?

最初に思ったのは「どうして私がエリザベス役に?」でした。栗山さんが「(エリザベス役は)若村がいい」とおっしゃったと、プロデューサーから伺ったので、栗山さんに今度お会いした時に、どうしてそう思われたのか聞いてみたいと思っています。栗山さんには、パルコ・プロデュースの『チルドレン』(2018年)のほか、『頭痛肩こり樋口一葉』で3回演出していただいています。どちらの作品も戯曲がまず素晴らしくて、「これを栗山さんはどうやって演出されるのだろう?」と思っていたら、お稽古では「なるほど」と思うことばかりで、いつの間にか演じる上での不安が払拭されていたんです。そんな経験値があるので、このちょっと分厚い今回の台本にも、期待感をもって楽しみに臨もうと思っています。

若村麻由美

ーー今日はこの取材の後、作品のビジュアル撮影をなさるとのこと。現在公演中(取材時)の『飛び立つ前に』で演じていらっしゃる役と、かなりギャップがありますね。

そうなんです。フランスの田舎の夫思いのおばあちゃんから、急にエリザベス女王にならなければいけないので、自分の中の軸を立て直すのが大変で。メイクと衣裳に上手く引っ張ってもらおうと思っています。『飛び立つ前に』のおばあちゃんは、既にこの世にいない人の役なんですね。その前に出演した『陽気な幽霊』も幽霊の役だったので、さすがに次は生きている人間の役だろうと思っていたら、まさかのエリザベス1世(笑)。3作品ともお芝居のタイプもキャラクターも全然違うので、改めて演劇の面白さを感じています。

ーーメアリー・ステュアートとエリザベスをモチーフにした作品はたくさんあります。その一つであるイザベル・ユペール主演の舞台『Mary Said What She Said』(2025年/ロバート・ウィルソン演出)を、『飛び立つ前に』のメンバーで観劇されていましたが、どんな感想を持たれましたか?

面白かったですね。ある意味、演劇であり、アートでもあるなとすごく感じました。ラッド(『飛び立つ前に』演出のラディスラス・ショラー)は、ユペールさんに「戦争兵器みたいだ」と言っていたんですが、それぐらい、一人で弾丸のようにしゃべり続けて、しかも1歩も退かないユペールさんのすごさに圧倒されました。私は感想以外に、今度エリザベスをやるという話もさせていただいたんです。ユペールさんは二人芝居のほうの『メアリー・ステュアート』(ダーチャ・マライーニ作)をなさっているそうで、「それは良かった、楽しみだね」というふうに言っていただきました。

ーー同時代に生きた従姉妹でもある二人の女王が、これだけ多くの作品の題材となっているのは、どういった魅力があるからだと思われますか?

やっぱり、それぞれの国家と宗教を背負った対照的な二人のクイーンだというところと、特にこの戯曲に関していえば、“二人の幽閉されたクイーン”の話だというところだと思います。もちろん、捕まって悲劇的な最期を迎えるメアリーに比べれば、エリザベスのほうが力もあっていろいろな差配もできますけれども、エリザベスもある意味、国家に幽閉されているようなものなので。戯曲を読んでいると、一体どちらが自由のない牢獄にいるんだろう? と思えてくるんですよ。

若村麻由美

ーーエリザベスにどんな印象をお持ちですか?

“ヴァージン・クイーン”と言われた国家と結婚した女王で、“鎧を着た女性”というようなイメージがあったので、台本を読んで、より人間的な印象を持ちました。全く思うようにはならないけれども、エリザベスにも恋愛面を含めて、いろいろと思っていることがあるんですね。そんな一女性としての思いを捨てて、国家と国民のために与えられた使命を全うする覚悟を持ったことを思うと、より愛おしくなるというか、改めてすごい人だなと感じます。そういう覚悟を持った人は滅多にいないからこそ語り継がれてきたのだろうし、エリザベスのような役は、ほかになかなかないですよね。子どもの頃に母親が処刑されたり、幽閉されたり、いろんな苦労もしているし、突然女王になれと言われて、自由にできることがない中、それでも責務を果たそうとする人。なかなかそうは生きられないだけに、憧れる部分もあります。演じられることがとても楽しみです。

ーーメアリーとの対比については、どうお感じですか?

作品名が『メアリー・ステュアート』ですからね。メアリーを描くためにエリザベスがいるのだろうし、逆に、メアリーを感じることで、よりエリザベスの立ち位置やキャラクターが見えてくるところがあるなと感じています。メアリーはカトリック、エリザベスはプロテスタントというように、二人の背景には、それぞれ絶対的に大きな力を持ったものがあって、その対立は、日本人にはなかなか肌感覚ではわかりづらい気がするので、そこを栗山さんがどういうふうに演出されるのか興味津々です。

ーーすでにたくさんの付箋が台本に貼られていますね。台本を読んで、ほかにはどんな印象を持たれたでしょう?

今この作品を上演する意味を強く感じて、すごく面白いなと思いました。16世紀のイングランドとスコットランドの話ですし、つい“女性と女性の対決”という視点で見てしまいがちですけど、きっと女性のトップリーダーとしての苦悩みたいなものも浮かび上がってくると思うんです。そういう意味では、お客様にとっても“今だから見えてくるもの”がある舞台になるんじゃないかなと。それがすごく楽しみです。

若村麻由美

ーーなるほど。日本にも昨秋、初の女性総理大臣が誕生したばかりですし。

実はここ最近の私の気分転換法は、家に帰ってYouTubeで国会中継を見ることでした。今まさに日本は変革の時だと感じている人たちがたくさんいるんだなと感じたり、女性のリーダーたちがいろいろ頑張っているのを見るのが面白くて。国会質疑で、それぞれの思惑と答弁みたいなことを聞いていたので、『メアリー・ステュアート』の台本をもらって読んだ時もすごく面白く感じたんです。国会中継は以前から時々見てはいたんですけれども、最近は、台本の次のページをめくるような気持ちで見られるんですよ。
でも、政治的なことだけじゃなく、たとえば、二人の女王の数奇な運命を見て「仕事と家庭を持つことをどう両立したらいいのか」と思う方や、仕事を進める上での戦略や駆け引きについて思いを巡らす方も、きっといると思います。この二人の女王の話が、時代や国を問わず注目されるのは、そんなふうに現代にも通じることが描かれていて、いろいろ考えさせられるからなんでしょうね。まだ栗山さんがどんな演出をされるかわからないんですが、どこかよその国の古い話ではなく、今を感じる舞台になるんじゃないかと思います。

ーー栗山さんも、この作品を上演するにあたって、「二人の女性の全身を賭けたぶつかり合いは、権力、王権、宗教を背負いながらずっと響き合ってきた二人の人間の孤独な魂の衝突であり、その様相は現在の地球上の様々な対立をそのまま鏡に映し出しているようで、とてもリアルだ」といったことをコメントされています。

それをどんなふうに演出なさっていくのか、稽古が本当に楽しみです。エリザベスを演じる身としては、特に“孤独な魂のぶつかり合い”という言葉が響きますね。思惑や陰謀が渦巻いていて、メアリーもエリザベスも、誰を信じていいのかわからないような状況ですし。そんな孤独な魂のぶつかり合いを客観的に見ることで、新たに見えてくるものもある気がします。それも一つの演劇の力ということになるのかなと思います。

ーー最後に、豪華で実力派揃いの共演の皆さんの印象と意気込みをお願いします。

もう本当に素晴らしいキャスティングですよね。皆さん個性豊かで、丁々発止のやりとりを想像しただけでワクワクするといいますか、面白くならないわけがないと思っています。楽しみです! と同時に、エリザベス女王としては、皆さんが演じられるそれぞれの人物と、対峙したり、駆け引きをしたり、従えたりしなければならないので、「負けないぞ」という気持ちです(笑)。役としての軸をしっかり持って演じなければなと思っています。孤独な魂のぶつかり合いを、ぜひ観ていただけたら嬉しいです。

若村麻由美


 

ヘアメイク:保坂ユミ(éclat)
スタイリスト:岡のぞみ
衣装:THURIUM

 

取材・文=岡﨑 香                      撮影=福岡諒祠

公演情報

パルコ・プロデュース 2026『メアリー・ステュアート』

原作=フリードリッヒ・シラー
翻案=ロバート・アイク
翻訳=小田島則子
演出=栗山民也
 
出演=宮沢りえ 若村麻由美 橋本淳 木村達成 犬山イヌコ 谷田歩 大場泰正
宮﨑秋人 釆澤靖起 阿南健治 久保酎吉/伊藤麗 上野恵佳 松本祐華/段田安則
 
公式HP=https://stage.parco.jp/program/marystuart2026
ハッシュタグ=#メアリー・ステュアート
企画・製作=株式会社パルコ

【東京公演】
[日程・会場] 2026年4月8日(水)~5月1日(金)PARCO劇場
[入場料金(全席指定・税込)] マチネ12,000円 ソワレ11,000円
ペア=マチネ23,000円 ソワレ21,000円
[一般発売日]2026年2月14日(土) 
[に関するお問合せ]
サンライズプロモーション 0570-00-3337(平日12:00~15:00)
[公演に関するお問合せ]
パルコステージ 03-3477-5858 https://stage.parco.jp/
[東京公演後援]TOKYO FM
[企画製作]株式会社パルコ
 
<地方公演>
【福岡公演】
[日程・会場] 2026年5月9日(土)~5月10日(日)J:COM 北九州芸術劇場 大ホール
[入場料金(全席指定・税込)]
S席マチネ12,000円/A席マチネ(当日引換券)9,000円  S席ソワレ11,000円/A席ソワレ(当日引換券)8,000円 
[一般発売日]2026年2月14日(土)  
[お問合せ]サンライズプロモーション 0570-00-3337(平日12:00~15:00)
[主催]TNCテレビ西日本/サンライズプロモーション/シアターマネジメント福岡 協力=北九州芸術劇場
 
【兵庫公演】
[日程・会場] 2026年5月14日(木)~5月17日(日)兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
[入場料金(全席指定・税込)]12,500円
※未就学児入場不可
[一般発売日]2026年4月12日(土)
[お問合せ]キョードーインフォメーション 0570-200-888(12:00~17:00 ※土日・祝除く)
[主催]関西テレビ放送/兵庫県、兵庫県立芸術文化センター/サンライズプロモーション大阪
 
[愛知公演]
[日程・会場] 2026年5月21日(木)~5月23日(土)穂の国とよはし芸術劇場 PLAT 主ホール
[入場料金(全席指定・税込)] S席12,000円 A席9,000円 U25(A席)4,500円 
高校生以下(A席)1,000円※未就学児入場不可
[一般発売日]2026年2月21日(土)
[お問合せ]プラットセンター 0532-39-3090(10:00〜19:00 休館日を除く)
[主催]公益財団法人豊橋文化振興財団
 
【北海道公演】
[日程・会場] 2026年5月30日(土)~5月31日(日)カナモトホール(札幌市民ホール)
[入場料金(全席指定・税込)] S席マチネ12,000円/A席マチネ9,000円  S席ソワレ11,000円/A席ソワレ8,000円
[一般発売日] 2026年2月14日(土)
[お問合せ]サンライズプロモーション 0570-00-3337(平日12:00~15:00)