野田秀樹 潤色戯曲×ルーマニア演劇の巨匠 シルヴィウ・プルカレーテ演出『真夏の夜の夢』上演決定
『真夏の夜の夢』メインビジュアル画像
2020年10月15日(木)~11月1日(日)、東京芸術劇場プレイハウス、その後、新潟・松本・兵庫・札幌・宮城にて野田秀樹潤色、シルヴィウ・プルカレーテ演出による『真夏の夜の夢』が上演されることが決定した。
演出を手がけるシルヴィウ・プルカレーテは、ルーマニア演劇界を代表する演出家の一人で、歌舞伎の『桜姫東文章』を原案に作品を生み出すなど、日本の文化にも深く精通している。ヨーロッパ三大演劇祭のひとつであるルーマニアのシビウ国際演劇祭では、毎年プルカレーテ作品がハイライトとして注目を集めるほか、世界中の演劇祭にも数多く招聘されており、戯曲の核心を鷲掴みにして大胆に色づけしていく演出手法は、刺激的で奇想にあふれ、放たれる鮮烈なパワーとエネルギーは観る者を惹きつけて圧倒している。
演出:シルヴィウ・プルカレーテ
野田とプルカレーテはこれまで、お互いの国での上演のたびに親交を深めてきた。野田が芸術監督を務める東京芸術劇場では、2013年に『ルル』、15年に『ガリバー旅行記』『オイディプス』と3作のプルカレーテ作品を招聘。17年には、プルカレーテが初めて日本人俳優を演出して『リチャード三世』を上演。佐々木蔵之介が蠱惑的なリチャード三世を演じ、大きな興奮と熱狂を巻き起こした。そして今回、ついにプルカレーテと野田が初タッグを組むこととなる。
本作は、シェイクスピアの喜劇『真夏の夜の夢』を野田秀樹がダイナミックに翻案した作品で、1992年に初演された。舞台を日本に置き換えただけでなく、全くの別作品であるゲーテの『ファウスト』に登場するキャラクターである悪魔・メフィストフェレスを乱入させたり、原作ではあまり表現されていない嫉妬や憎悪といった負の感情の表現で終末論を感じさせたりと、大胆に換骨奪胎。野田の真骨頂である言葉遊びと重層的な物語に浸っているうち、切なく美しい喜劇へ集束していく。
出演は、シェイクスピアの原作ではヘレナにあたる娘〈そぼろ〉役に、確かな演技力で名だたる劇作家・演出家から高く評価されている鈴木杏。原作でハーミアにあたる、割烹料理屋の娘〈ときたまご〉役は北乃きい。原作ではデミトリアスにあたる、ときたまごの許嫁・板前の〈デミ〉役に、様々なキャラクターを個性豊かに演じる加治将樹。原作ではライサンダーにあたる、ときたまごと愛し合う青年・板前の〈ライ〉役は矢崎広。さらに、今井朋彦、加藤諒、手塚とおる、壤晴彦ら、若手からベテランまで実力派が揃う。なお、今井、手塚、壤は17年の『リチャード三世』以来、再びのプルカレーテ作品への出演となる。
◆あらすじ
創業130年の割烹料理屋「ハナキン」。その娘・ときたまご(ハーミア)には許婚がいた。板前のデミ(デミトーリアス)である。デミはときたまごを愛していたが、彼女は板前のライ(ライサンダー)に恋心を寄せていた。ときたまごとライは〈富士の麓〉の「知られざる森」(アーデンの森)へ駆け落ちする。それを追いかけるのはデミと、彼に恋をしている娘・そぼろ(ヘレナ)。森では妖精のオーベロンとタイテーニアが可愛い拾い子をめぐって喧嘩をしている。オーベロンは媚薬を使ってタイテーニアに悪戯をしようと企み、妖精のパックに命令する。ついでにそぼろに冷たくするデミにも媚薬を使おうと思いつく。しかし悪魔メフィストフェレスが現れ、パックの役目を盗みとる。そこに「ハナキン」に出入りしている業者の面々が結婚式の余興の稽古にやって来て、事態はてんやわんやに…。