東京バレエ団人気のプロダクション『ドン・キホーテ』が満を持して上演、弾けるエネルギーに期待
photo:Kiyonori Hasegawa
2020年9月26日(土)・27日(日)から東京バレエ団による『ドン・キホーテ』がはじまる。振付・演出はボリショイ劇場で活躍し、同劇場で監督も務めたソ連時代の伝説のダンサー、ウラジーミル・ワシーリエフ。2001年にバレエ団によって初演されて以来人気演目として、また3年に一度の祭典「世界バレエフェスティバル」の全幕特別プログラムとして、バレエファンに広く親しまれているプロダクションだ。
2020年の今年はバレエ団を代表するペア、上野水香&柄本弾に加え、沖香菜子&宮川新大、秋山瑛&秋元康臣の3組が登場する。またコロナ禍による自粛明けの全幕舞台としては、「子どものためのバレエ『ねむれる森の美女』」の上演を経て、本公演としてはこれが初となる。そもそもこの演目は7月の上演予定が、9月に延期となったもの。満を持してのこの公演、ダンサー達のバレエにかける思いや踊れる喜びが弾ける、エネルギッシュな舞台となるに違いない。(文章中敬称略)
photo:Kiyonori Hasegawa
■レジェンド・ワシーリエフ振付の演目はバレエ団の宝物
とにかくこの東京バレエ団の「ドン・キ」はテンポがよく、見ていて本当に楽しい。一般的には全3幕として上演される作品を、本作は全2幕としているが、だからといって物語が端折られているわけでもなく、プロローグのドン・キホーテとサンチョ・パンサの旅立ち、バルセロナの広場でのキトリとバジルの掛け合い、エスパーダを中心とする闘牛士たちの踊りやジプシーの踊り、風車に跳ね飛ばされたドン・キホーテが見た夢、2幕の酒場と狂言自殺からの華やかな結婚式等々、このバレエならではの見せ場は余すところなく盛り込まれている。一つひとつのシーンが濃厚で、また場面転換がスピーディー。登場人物たちの熱気や見事なテクニック、華麗な夢心地のシーンなどメリハリの効いた展開に、我々観客はいつの間にか物語に引き込まれているのだ。
そもそもマリウス・プティパ振付による『ドン・キホーテ』初演は1869年、ボリショイ劇場でのことであり、まさに本家といえるボリショイで活躍したワシーリエフは、無論この演目を知り尽くしているだろう。東京バレエ団が上演するのは、そのワシーリエフが現代的なエッセンスも盛り込んで振付・演出した作品であり、2014年には初演以来久しぶりにワシーリエフ本人が来日し、指導を行った。作品のスピリットはバレエ団の宝物として息づき、初演時にキトリを踊った斎藤友佳理監督の指導のもと、今年もまたブラッシュアップされていることだろう。
■ベテランからフレッシュな顔ぶれまで。3キャストに期待
今回は9月26日に2公演、27日に1公演の計3公演が予定されている。キャストは初回を踊る秋山&秋元は初顔合わせ。とくに秋山はワシーリエフ版をベースとした子ども向けバレエ『ドン・キホーテの夢』で主演キトリを踊っているが、本公演では初役。ロシアで研鑽を積んできた秋元とのペアリングも非常に楽しみだ。
沖 香菜子、宮川新大 photo:Kiyonori Hasegawa
2回目公演はバレエ団の看板ペアともいえる上野&柄本。幾度となくこの演目を踊りこなしてきた2人の、息の合った丁々発止のやり取りや熟練の味わいはまず間違いのないところ。公演の最後を締める沖&宮川ペアは、宮川がやはり本公演では初主演となる。技術的にも定評のある沖&宮川ペアは、1幕やグラン・パ・ド・ドゥのダイナミックな大技にも大いに期待が持てる。
なおこの演目の舞台装置と衣裳はモスクワの舞台芸術専門の工房で製作されたものだ。ロシアの伝統的美術とスペインの鮮やかな光が彩られた舞台空間にも、ぜひ注目していただきたい。
公演情報
東京バレエ団
『ドン・キホーテ』全2幕
■会場:東京文化会館(東京・上野)
■振付:ウラジーミル・ワシーリエフ(マリウス・プティパ/アレクサンドル・ゴールスキーによる)
■音楽:レオン・ミンクス
■美術:ヴィクトル・ヴォリスキー
■衣裳:ラファイル・ヴォリスキー
9月26日(土)13:30/キトリ:秋山 瑛、バジル:秋元康臣
9月26日(土)18:30/キトリ:上野水香、バジル:柄本 弾
9月27日(日)14:30/キトリ:沖 香菜子、バジル:宮川新大
■指揮:井田勝大
■演奏:シアターオーケストラトーキョー