東京バレエ団×金森穣『かぐや姫』待望の再演、東京文化会館休館前最後の公演~公開リハーサルレポート

レポート
クラシック
舞台
2026.3.10
photo Shoko Matsuhashi

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2026年5月5日(火・祝)~5月6日(水・振)東京文化会館大ホールで東京バレエ団『かぐや姫』全3幕が再演される。3月上旬、公開リハーサル&囲み取材が行われた。

『かぐや姫』は、東京バレエ団が演出振付家、舞踊家でNoism Company Niigata(Noism)芸術総監督の金森穣に委嘱した全幕バレエ作品。2021年3月にクリエーションが始まり、同年11月に第1幕、2023年4月に第2幕を初演後、同年10月第3幕を加え全幕初演された。

金森は、日本の最古の物語文学「竹取物語」から着想を得て、自ら脚色を加え台本を執筆した。音楽は全編クロード・ドビュッシー。日本の四季の情感が背景にあり、第1幕は春から夏、第2幕は秋、第3幕は冬を舞台とする。幻想的な世界観のもと、人類普遍の愛や憎しみをめぐるドラマが繰り広げられ、東西の伝統芸術、現代ダンスとクラシックバレエの美が融合する大作だ。

■ドビュッシーの名曲にのせた、美しく深いバレエ

秋山瑛、大塚卓  photo Shoko Matsuhashi

秋山瑛、大塚卓  photo Shoko Matsuhashi

公開リハーサルでは、振付指導にあたる演出振付の金森、演出助手の井関佐和子のほか、団長の斎藤友佳理、芸術監督の佐野志織らも見守る。

公開されたのは、主役のかぐや姫(秋山瑛)と道児(大塚卓)が踊る2つのパ・ド・ドゥ。

貧しい翁によって竹林の竹の中から発見され山村で育ったかぐや姫と、働き者で孤児という設定の道児。まず最初に、第1幕で二人が心惹かれ合っていくパ・ド・ドゥを披露した。「月の光」の繊細で研ぎ澄まされたピアノの音色とともにつむがれる。愛らしくも奔放で豊かな踊り心を備えた秋山と、凛とした貴公子もさまになるがそれにとどまらない芸域の広さが光る大塚。身を委ね合う二人の心の会話が、みずみずしく伝わり、心に響く。

かぐや姫が道児目がけて思いっきり飛びつく場面もあり、かぐや姫のやんちゃさと、それを受け止める道児のおおらかで純情な心根が結びつく。金森はそんな二人の踊りに対し「音楽的には凄くいい」と賛辞を贈りつつ秋山に「もっと飛びついてもいい。おてんば感を」とのリクエスト。道児が、かぐや姫を両手で高く掲げる場面では、金森が大塚に対し腕の上げ方に助言する。微修正が入ると、より振付の流れがスムースになり、感情がさらに伝わってくるのを実感できた。

金森穣、大塚卓、秋山瑛  photo Shoko Matsuhashi

金森穣、大塚卓、秋山瑛  photo Shoko Matsuhashi

続いて第2幕のパ・ド・ドゥへ。都で帝の側室となっていたかぐや姫が、月明かりの下で道児と再会し、二人で逃げようとする場面で踊られる。音楽は同じ「月の光」だが、ここでは管弦楽版がもちいられている。この踊りは、2023年10月、全3幕を通しての全幕初演時に新たに加えられた。かぐや姫と道児が、都と山村で物理的に距離が離れていても心に通じ合っている部分があることを物語るパ・ド・ドゥで、大人になった二人の互いの慕情がなんとも味わい深い。

第1幕のパ・ド・ドゥとは違い、かぐや姫役はポワント(トウシューズ)を履く。そうすることによって、振付の幅が広がる。リフトもより精妙になり、金森が手の上げ方の見本を見せた。ポワントを使った振付も初演時から見事な仕上がりだったが、金森の創造のミューズであり同志でもある井関のフォローも大きいようだ。今回さらに洗練を増してきそうな予感がする。

秋山瑛 、大塚卓 photo Shoko Matsuhashi

秋山瑛 、大塚卓 photo Shoko Matsuhashi

■「さらにブラッシュアップができている」(金森)

公開リハーサル終了後、金森と斎藤の囲み取材が行われた。

再演にあたり金森は「さらによくブラッシュアップできているので、ぜひ楽しみにしていただきたいですし、さらに素晴らしい作品になるようにと願っています」とまずは自信をのぞかせる。

斎藤は初演時、芸術監督という立場にあり、金森に創作を依頼した。東京バレエ団のレパートリーの中での位置づけを問われると「(モーリス・)ベジャールさんの『ザ・カブキ』『M』に続いて、東京バレエ団の顔として残り続けていってくれたらいいいなとずっと願っています」と応じ、海外展開ことにドビュッシーの祖国フランスをはじめヨーロッパでの上演を見据える。

金森穣 photo Shoko Matsuhashi

金森穣 photo Shoko Matsuhashi

東京バレエ団×金森の『かぐや姫』は幻想的で美しい舞踊劇だが、そこに人びとの争いや自然破壊なども描かれた。3年ぶりの再演に際し「今の社会情勢が影響をあたえるのか?」という質問に金森は「初演から驚くくらい、そのときに起こってしまった社会情勢みたいなものが反映されている部分があって、個人的にショックだったりしました」と顧みる。「そういうものなんですよ、創作って。未知な、どこにもないようなものを創っているはずなんだけれども、まるで何かを予見していたような演出・展開があったりします。数年たって社会情勢が変わると、その意味合いがまた色濃くなったり、褪せていったり、逆に明示的になったりということがある。だから、あえて演出を変えようとしなくても、響き合っていく部分があります。それと同時に、私自身も生きていますから、問題として感じること、人間として訴えたいこと、共有したい疑問みたいなものが今回の新しい演出にも入ってくると思います」と考えを述べた。

秋山瑛、大塚卓 photo Shoko Matsuhashi

秋山瑛、大塚卓 photo Shoko Matsuhashi

■東京文化会館休館前、最後の公演

東京バレエ団のダンサーたちの成長について金森は「最初はお見合いみたいな感じなんですよ」と5年前の第1幕初演の頃を振り返る。「手探りで全3幕初演までできたところで、ようやくお互いを分かったけれど、そこから間が空きました。彼ら自身もあのとき見い出した課題を今回クリアしたいという思いが当然見えるからより深まっていますし、そこに新しいダンサーも入ってきたりします。ダンサーとの関係は深まっていると私は思っています」と話した。

井関佐和子、金森穣、秋山瑛、大塚卓 photo Shoko Matsuhashi

井関佐和子、金森穣、秋山瑛、大塚卓 photo Shoko Matsuhashi

東京文化会館が5月7日以降改修期間に入るため、休館前最後の公演となる。斎藤は「東京バレエ団にとって本当にホームグランドであって、歴史も全て刻まれてきました。とても感慨深いです。一時でも早く開いてくれることを願っていますし、その間どうやって上手く活動していくかを皆で考えている最中です」と首都圏のバレエやオペラに適した劇場の休館・閉館が相次ぐ現状に複雑な胸中を明かす。いっぽうで、今回は「上野の森バレエホリデイ2026」の一環でもある。「親子で、ファミリーで楽しめるので本当にふさわしいと思いますし、また新たな『かぐや姫』をできるのはとてもいいタイミングです」と意気込んだ。

斎藤友佳理、金森穣 photo Shoko Matsuhashi

斎藤友佳理、金森穣 photo Shoko Matsuhashi

取材・文=高橋森彦

公演情報

東京バレエ団
『かぐや姫』全3幕
 
日程:
2026年
5月5日(火・祝)13:00/18:30 
5月6日(水・振)14:00
会場:東京文化会館  大ホール 
上演時間:約2時間40分(休憩 2回含む)
音楽は特別録音による音源を使用します
 
音楽:クロード・ドビュッシー
演出振付:金森 穣
衣裳デザイン:廣川玉枝(SOMA DESIGN)
木工:近藤正樹
映像:遠藤 龍
照明:伊藤雅一(RYU)、金森 穣
演出助手:井関佐和子
衣裳製作:武田園子(Veronique)

■キャスト 
5月5日(火・祝)13:00
5月6日(水・振)14:00
 
かぐや姫:秋山 瑛 
道児:大塚 卓 
影姫:沖 香菜子 
帝:池本祥真 
翁:岡崎隼也

■キャスト
5月5日(火・祝)18:30
 
かぐや姫:足立真里亜
道児:柄本 弾
影姫:金子仁美
帝:生方隆之介
翁:岡崎隼也
 
入場料金(税込)
S:¥16,000 A:¥13,000 B:¥10,000 C:¥8,000 D:¥6,000 E:¥4,000
※クラブ・アッサンブレ会員は、S~E の各席種1割引。
5歳以上、入場可 ※4歳以下のお子さまはご入場いただけません。
 
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