演出家・桐山知也がKAATプロデュース公演に初登場 ロンドンで起きた地下鉄とバス同時爆破事件に想を得た意欲作 リーディング公演『ポルノグラフィ』の上演が決定
2021年4月16日(金)~ 18日(日)KAAT 神奈川芸術劇場 中スタジオにおいて、KAAT神奈川芸術劇場プロデュース リーディング公演『ポルノグラフィ』の上演が決定した。
『ポルノグラフィ』は、英国有数の劇場で続々と作品を発表し、トニー賞やオリヴィエ賞等数々の賞を受賞しているイギリスの劇作家・サイモン・スティーヴンスが2005年7月にロンドンで起こった地下鉄とバスで起きた同時爆破事件を題材に、7つのエピソードで構成された物語。本作品は2020年4月に上演予定だったが、政府の「緊急事態宣言」の発令により中止が決定し、2021年4月に公演を延期し上演を行う運びとなった。
演出を手掛ける桐山知也は、白井晃、野村萬斎、蜷川幸雄、サイモン・マクバーニーらの演出作品に演出助手等として参加してきたほか、自身でもアーサー・ミラー作『彼らもまた、わが息子』、別役実『門』など傑作と名高い戯曲の演出を手掛けており、KAATプロデュース公演では初演出となる。
桐山知也
出演は、上田桃子、内田淳子、小川ゲン、奥村佳恵、竪山隼太、那須凜、平原慎太郎、堀部圭亮。
本作の台本には「何人の俳優で演じても、この7つのエピソードをどのように上演しても構わない」という一文が入っている。自由度の高い本作を、個性・実力ともに充実したキャスト陣がどのように上演するのか期待したい。
【概要】
この物語は、2005年7月の数日間に焦点を当てている。当時、イギリス国内は、LIVE8やG8サミット開催で活気づいていたが、そこにロンドンオリンピック開催が決定し、イギリス中が祝福ムードとなっていた。しかし翌日、ロンドンの中心地で、地下鉄とバスで同時爆破テロが発生し、多くの市民が犠牲になり、人々は悲しみにくれた。登場人物の多くは事件に直接関わりはなく、ロンドンで暮らす人々で、誰もが孤独や生きにくさを感じている。人は周りで起きていることよりも、生活の中で感じる孤独感・不満感に支配されやすく、誰もが登場人物のようになりうる危うさを感じさせる。
この1年で、世界は新型コロナウイルスの出現により、人との接触を避ける新しい生活様式を求められ、孤立感・閉塞感を感じながらも次第にその生活に慣れていく私たち…。奇しくも私たちと同じような状況を生きる登場人物たち。脅威に晒された世界の中で、ひとりひとりの行動にどんな理由があるのか?そこに違いはあるのか…?
【物語】
家庭と仕事の両立をこなす女性、先生につきまとう男子生徒、近親相姦にふける兄妹、教え子を誘惑する大学教授、夫を失った孤独な老婦人、さらに爆破事件の実行犯。 登場人物の多くは事件に直接関わりは無いが、誰もがそれぞれに不満を抱き、鬱屈とした日々を過ごしている。各々が一歩を踏み出すことにより歪む世界…。そんな彼らの生活を通して見えてくるロンドン同時爆破事件とは…。黄色い線の内側とはどこなのか…。
【ロンドン同時爆破事件】
ロンドンオリンピック・パラリンピック開催決定の翌日の2005年7月7日、午前8時50分ごろに地下鉄の3カ所が爆破。また、同9時47分ごろにブルームズベリーに位置するタビストック・スクエアを走るダブル・デッカー・バスが爆発した。死者は計52人(そのほか、実行犯4人も死亡)。全員がイギリス在住者で、うち32人が英国籍保持者。それ以外に20近い国籍の人たちが犠牲となった。