緒方恵美が脚本・演出・洋楽カバーも!私塾メンバー初の実験公演『囁きの花束 2021 -healing reading live-』鑑賞レポ

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2021.3.22
 撮影:佐伯敦史

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声優・歌手の緒方恵美が2019年6月に開校した無料私塾「Team BareboAt(チーム・ベアボート)」のメンバーによる実験公演が3月7日に東京・代官山豆風ライブハウス「晴れたら空に豆まいて」にて、マチネとソワレの昼・夜2回で開催された。

撮影:佐伯敦史

撮影:佐伯敦史

『囁きの花束 2021 -healing reading live-』と題した本公演では、緒方が脚本・演出を担当。心温まる実話を元にしたオムニバス形式の5つの物語「ドーナツ」「マッピー」「サクラチル」「初めてピアス」「きょうだい」が、緒方の歌唱と目木とーるのギターによる洋楽カバーを挟みながら語られた。洋楽カバーのラインナップは、ランディ・グッドラム「No One Lives Here Anymore」、ビリー・ジョエル「Just The Way You Are」、イーグルス「Desperade」、エルビス・コステロ「Alison」、そして、エリック・クラプトン「Tears In Heaven」と、切なく美しいノスタルジックな洋楽の名曲が並んだ。

冒頭の挨拶で緒方はライブハウス「晴れたら空に豆まいて」について「大好きなハコで公演ができることをうれしく思います」とTeam BareboAtメンバーによる初お披露めを迎えたよろこびを語り、鑑賞時の注意事項なども紹介。「今日は、裏方の緒方です」という言葉通り、軽快なトークで笑いつつ会場をあたため、出番待ちで緊張の表情を見せるTeam BareboAtメンバーをさりげなくフォローしていた。

撮影:佐伯敦史

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緒方&目木による洋楽カバーがしっとりと流れる中、白い衣装に身を包んだ出演者Team BareboAtメンバーがステージに登場。舞台と客席の両サイドにスタンバイし、朗読劇がスタートした。

「ドーナツ」は、大学への提出書類を取りに、久々に帰郷した彩(伊藤梨花子)と父(保科楽人)の物語。何かと口うるさい父に会いたくなくて、わざと時間をずらして帰ったはずなのに、父と顔を合わせてしまい、いつものように衝突する2人。気まずい雰囲気のまま立ち去ろうとする彩に父が手渡した紙袋の中身は……。些細なことで言い合いにもなるけれど、ちょっとしたことから大きな愛も感じられる。不器用な父娘のやりとりに心が温まります。

「マッピー」は、祖母(鷲見友美ジェナ)の17回忌をきっかけに、自称・自宅警備員であるニート・泰三(島倉凱隼)と大学生・祐介(神谷ユウキ)の兄弟が、当時の思い出を語り合ううちに、祖母の秘密を知るという物語。クリスマスプレゼントに秘められた優しく温かい祖母の想い。幼い頃には気づかず、直接お礼は言えないけれど、思い出話をすればその優しさに触れ、感じることができる。会えなくなった人を思うことの大切さを感じさせられた。

撮影:佐伯敦史

撮影:佐伯敦史

「サクラチル」は、声優になりたくて10年養成所に通うさくら(飯野美紗子)の物語。同期がデビューし、声優として着実に前に進む背中はどんどん遠くなっていく。知らず知らずのうちに焦りや嫉妬でメンタルはギリギリに。そんな彼女の前に突然現れた、桜の精がある提案をするーー。桜の精(岸本萌佳:声の出演)が登場し、ファンタジー要素が加わりながらも、声優が声優を演じる物語は、よりリアルに胸に突き刺さってくる。公演後に「めちゃくちゃリアルで、ちょっと怖かった」という感想が漏れ聞こえてきたのも納得だ。

続く「初めてのピアス」はちょっぴり切ない恋の物語。高校時代に付き合っていた梨花(中臣真菜)と和馬(戸谷菊之介)は別れた後も、友達として良い関係を続けている。梨花と久しぶりに会うことになった和馬は、「もう一度、彼女と……」という思いで、プレゼントのピアスを買うーー。本公演は、お祭りや神社、声優養成所などのシーンでは、メインで朗読するメンバーの背後や、客席脇で待機するメンバーもガヤで参加し、臨場感溢れる世界観に誘ってくれた。

撮影:佐伯敦史

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最後の物語「きょうだい」の主人公は、子どもの合格祈願に一家で神社に参拝に行った菜緒(須藤叶希)。そこで、子どもの頃に出会った不思議な少年の面影を見つけた菜緒に、母(オージーメリーアンノオマ)が明かした真実とはーー。物語のキーワードは、記憶、思い出、優しさ、家族。本公演で披露された5つの物語は、タイプは違えどそれぞれ胸に刺さるものがあり、観客の中に涙を拭う姿も見かけた。

撮影:佐伯敦史

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アーカイブ付き配信(3月10日まで視聴可能)もあり、会場に足を運べなかったファンも楽しむことができた公演だが、やはり、会場で直接、声で紡がれる世界観に浸り、熱量を感じたいと思えるものだった。緒方自ら講師をつとめ、セルフマネジメント講座やマイク演技を担当し、さらに、演劇集団「キャラメルボックス」の真柴あずきが演技基礎や実践、さらに、林貴子、森めぐみ、関根翔太らが身体・発声トレーニング、他にも特別講師によるさまざまな講義をを受け、吸収し続けた1年を経て、実験公演と題して開催されたTeam BareboAtの初公演。今後、どのような展開を見せていくのか、期待が高まる。

取材・文:タナカシノブ 撮影:佐伯敦史

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