the peggies、ソールドアウトとなった今年初のライブ 『僕のヒーローアカデミア』第5期EDテーマ「足跡」を初披露
Photo by 上飯坂一
the peggiesが、3月28日(日)に恵比寿リキッドルームで今年初となるライブを実施。ソールドアウトとなっていたこの公演の模様をレポートする。
みんなの代わりに声を張り上げたthe peggies
2020年11月に昼・夜2部制の東名阪ツアーを全公演ソールドアウトさせたthe peggiesにとって今年初となるライブが3月28日、恵比寿リキッドルームで開催された。上り調子の勢いをそのままにこの夜もソールドアウト。the peggiesとともに“自分たちの場所、時間”を作り上げるべく、たくさんのファンが埋めるフロアには、開演前からウズウズした期待感、そして連帯感があふれていた。
そんな仲間たちとの再会の夜。青いストロボライトが点滅するなか北澤ゆうほ(Vo&Gt)、石渡マキコ(Ba)、大貫みく(Dr)がステージに現れる。
Photo by 上飯坂一
the peggiesの歌には、当たり前とされることに素直にうなずけない若者たちの反骨、“一人ひとりが違う自分でいいんだ”という肯定感、イエス・ノーでは簡単に割り切れない恋愛感情、不安や迷いを抱えながらも人生の旅を続けようとする冒険心と勇気が満ちている。そして、一人ひとり違う仲間たちの先頭に立って旅路を走る誇らしさがある。
その思いが大事にしているライブで仲間たちと共鳴し合い、まぶしい光を放ってきた。今は、満足に人と触れ合うことも、話をすることもできぬ日々が続く。やるせない空気が毎日を覆っている。それでも再会の日はやってくる。この夜、ステージ上の3人の立ち姿には、“仲間たちの発せられぬ声”を引き受ける気概がみなぎっていた。
大貫が叩くハイハットのカウントから「スタンドバイミー」が始まる。サビで高音を振り絞る北澤のギリギリ感が迫る。2曲目は「マイクロフォン」。フロアの仲間たちが心のなかで響かせている大きな声を代弁するかのように北澤が歌う。「聞こえているよ」「私がみんなの代わりに声をあげるよ」そんな思いが伝わってくる。北澤と石渡がドラムの前で円陣を組むがごとく身を屈める。そんな一挙手一投足からも“一つになれる空間”を作ろうとするガッツが見える。「まだまだいくぜ!」と北澤が叫ぶ。「そうだ、僕らは」「LOVE TRIP」と迷いを振り切ってくれるパワーポップが続く。
Photo by 上飯坂一
「手のひらに思いを込めて送ってほしい」。そんなMCの言葉に続いて小粋なロックンロールナンバー「I御中」、恋のドキドキ感が突き動かす「DIVE TO LOVE」、the peggies流ディスコティックチューンの「weekend」、骨太なオルタナティブサウンドが轟く「ネバーランド」と一気呵成に畳み掛けた。
the peggiesの3人も辛抱の日々を送っているが、「泣き言は言わない」的な強さと覚悟が見える。「大丈夫!」と仲間を勇気づける優しさが見える。そんな熱気をまとってステージ前半戦を駆け抜けた。
僕らは仲間とつながりあえる
ステージ後半戦は「僕等讃歌」からスタート。北澤がこの日のために書き上げてきた新曲だ。披露する前に北澤はこんなことを言った。
「みんな、苦しみや迷いを抱えて生きている」「一人が寂しいと思う日々だからといって、どこかのグループに属さなくてもいい」「一人ひとり違っていてもいい。バラバラでもいい」「それぞれの場所で、孤立した状況でも、それでも僕らは手をつなぎあえる」「僕らはどこかでつながっていて、それを仲間と呼んでいいんだ」
Photo by 上飯坂一
the peggiesのコアな部分凝縮された「僕等讃歌」。誇らしげなマーチングバンド風のリズムに乗って“僕らの歌”が高らかに響く。讃歌とは褒めたたえる歌のこと。このただならぬ日々のなかで、the peggiesは仲間を褒めたたえてみせた。当然、その仲間にはthe peggiesの3人も含まれている。the peggiesはいっそう強く、優しくなった。そんなことを思った。「僕等讃歌」はこれからのthe peggiesを代表する1曲になりそうだ。
「僕等讃歌」でフロアが華やいだ後、「ボーイミーツガール」「最終バスと砂時計」「アネモネ」とキラキラしたパフォーマンスが続く。
Photo by 上飯坂一
ステージは佳境に。ここからは様々な事情で来場できない仲間たちにも精一杯の歌が届くようにと、YOU TUBEとLINE LIVEでの生配信が加わる(「足跡」から本編最後までの一部を配信)。まず演奏されたのは、この夜の目玉の一つと言うべき初披露のナンバー「足跡」。前日にオンエアが始まった人気のTVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第5期のエンディングテーマだ。北澤は「ヒロアカの登場キャラの言葉ひとつ行動ひとつに何度も救われてきた」と言う。
Photo by 上飯坂一
北澤の弾くギターがメロディアスなアルペジオから、性急なカッティングに移る。石渡と大貫が前のめりなビートで情熱的に支える。3人とは思えぬ分厚くてパワフルなバンドアンサンブルで圧倒する。「さよならさ行かなくちゃ 僕よ僕になれと叫ぶ たどり着く先で君に もう一度出会いたいのさ」と北澤が高らかに歌い上げる。この曲でthe peggiesを知り、人生の冒険をともにする仲間がさらに増えることだろう。
「足跡」が終わると、「青すぎる空」「GLORY」「君のせい」と青春のきらめきが胸をかきむしるナンバー速射砲のように浴びせ、フロアの熱気は最高潮に。「楽しかったかい。最高です!」北澤が叫ぶ。仲間たちは手のひらに思いを乗せ、大きな拍手で応える。非常時でも見事に“みんなと一つの空間”を作り上げてthe peggiesはステージ本編を終えた。
Photo by 上飯坂一
アンコールは「明日」と「センチメートル」。「明日」のサビではフロアでの大合唱が起こるのがおなじみの風景だが、今は心のなかで歌うのみ。しかし、まるで皆の声が聞こえるかのような一体感が生まれていた。今、the peggiesはたくましさを増している。みんなの苦しみを背負う度量を増している。コロナ禍を超えた時、仲間たちが大きな声を存分にあげられる日が戻ってきた時、どんな光景を見せてくれるのか、楽しみに待ちたい。
また、このアンコールでは7月には東名阪ツアーが行われることが発表された。the peggiesはこんな日々でも仲間とサイドバイサイドで走っていく。
取材・文=山本貴政