ヴァイオリニスト石田泰尚、ザ・シンフォニーホールでのソロリサイタルへ 「お客さんを自分のワールドに引き込みたい」
石田泰尚
神奈川フィルハーモニー管弦楽団で首席ソロ・コンサートマスターを務めるほか、ソロやユニットなど幅広く活動するヴァイオリニストの石田泰尚が2021年7月11日(日)、ザ・シンフォニーホール(大阪市北区)で『石田泰尚ヴァイオリン・レジェンド』と題したステージを行う。ブラームスやグリーグなど、巨匠たちの名曲が並ぶ公演を前に石田は「1曲目からお客さんを自分の世界に引き込みたい」と意欲を見せている。
――神奈フィルでコンマスを務めているだけではなく、石田組、DOS DEL FIDDLES(ドス・デル・フィドル)などさまざまな場で演奏をされています。ソロのステージというのは、石田さんにとってどのようなものなのでしょうか。
僕はソロでもオケでも、あんまり変わりはなくて。基本その場の雰囲気で、舞台を楽しんでお客さんにそれが伝わればいいというスタンスでやっています。明日リサイタルだから、どうしようかというのも特にないんですよね。
――ソロだから、オケだからという気持ちの変化みたいなものはない?
そうなんです。ソロだからこうとか、そういうのはなくて。僕切り替えが上手なので。スイッチが入るとか、切れるみたいなこともないんです。
石田泰尚
――ソロとして立たれる際、年間テーマを掲げるなど、何か目標があったりはしますか。
全くないです。オケと何が違うのかな……考えてみると、ソロのリサイタルは全ての責任が自分にあるので、「楽だな」ということでしょうか。「オレの音はこうだよ。みんなはどんな音楽が好き?」と演奏しているので、それを気に入ってくれたらうれしいし。好きになってくれて、また聴いてくれたらうれしいなって。いろいろ自由に遊べるのも、楽しいところではあります。石田組ではクイーンとかロックも演奏していますが、「ヴァイオリンって、色んな表現が出来るんだぜ」というところを見せたいなと思っています。
――7月11日(日)のザ・シンフォニーホールでは、どのような作品を演奏なさるのでしょうか。
前半にブラームスの曲を3曲くらい続けて演奏する予定です。1曲目に演奏する予定の「雨の歌」は激しい曲ではない分、とても難しい。最初はとても美しく弾いて、お客さんを自分のワールドに引き込みたいと思っています。後半はピアソラも演奏する予定です。ザ・シンフォニーホールは今年1月に初めて立ちました。3月にピアソラが生誕100年を迎えたこともあり、1月のリサイタルでは、後半オールピアソラを演奏しましたが、7月のステージでは1月とは全く違うクラシックのピアソラを聴かせたいと考えています。ほかにも、知らなくても割とすっと入ってくる曲を選んでいるので、楽しみにしていて欲しいです。大阪のお客さんは、ノリが良くて演奏していて(観客に)引っ張られるという感覚があるので、僕自身もとても楽しみです。
石田泰尚
――同じ神奈フィルに所属する﨑谷直人さんとヴァイオリンユニット「ドス・デル・フィドル」を結成するなど、どんどん新しい表現に挑戦しています。いま興味があること、また今後やってみたいことなどはありますか。
これ以上増やすと、死んじゃうぐらい忙しいので、新しくやってみたいことはいまはないです。若いときに、クラシック以外の表現でヴァイオリンを演奏してみたいと考えていたことが叶っているので、ドスデルとか、いまやっているものの知名度を上げていくことが、いまの目標です。沖縄や四国、佐渡島など、いろんな土地で演奏したいです。その土地で生まれた曲を演奏するのも面白いかもしれません。
――長く奏者として活躍してこられて、ご自分で感じる変化はありますか。
基本僕は何も変わっていないですね。そうだな、あんまり怒らなくなりましたね。昔は指揮者とかメンバーに結構イライラしていました。でも怒ることに使うエネルギーがもったいないと気づいて。怒ると疲れるじゃないですか。もう十分疲れているので、伝えるためのアプローチが怒りではなくなりました。あとは、「この人に言っても分からないかな」と(他者に対して)諦めることも増えたかなと思います。
石田泰尚
――リラックスするために、何かなさっていることはありますか?
家にいるときが一番リラックスするんです。テレビが大好きなので、家で録画をしておいた(お笑い芸人の)ダウンタウンの番組を観るのが大好きです。『ガキ使(ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!)』から、松本(人志)さんがコメンテーターを務める『ワイドナショー』まで、ダウンタウン関連は、あらゆるものを録画しています。『キングオブコントの会』(松本が民放で20年ぶりに新作コントを披露)ももちろん観ました。僕も父も冷え性なので、こたつが大好きなんです。毎年10月から翌年の5月いっぱいまでこたつを出しているのですが、こたつに入って、ダウンタウンの番組を観て笑って、うとうとしてこたつに入ったまま眠ってしまう……。それが僕にとって至福の時間です。
――最後に、ザ・シンフォニーホールにいらっしゃる方にメッセージをお願いします。
ソロのリサイタルは一番リラックスして演奏している僕の姿を観ることができると思います。期待していて下さい。そのみなさんの期待に応えたいです。
石田泰尚
取材・文=Ayano Nishimura 撮影=池上夢貢