Conton Candy、カネヨリマサル、Hakubi、超能力戦士ドリアン、打首、バクシン 日本最大級のライブサーキット『TOKYO CALLING 2021』最終日レポート

レポート
音楽
2021.10.1
打首獄門同好会 Photo by 石村 燎平

打首獄門同好会 Photo by 石村 燎平

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『TOKYO CALLING 2021』3日目 2021.9.20 渋谷

日本最大級のライブサーキット『TOKYO CALLING 2021』が、9月18日(土)から20日(月)の3日間にわたって新宿、渋谷、下北沢で開催された。

昨年は新型コロナウイルスの影響を受けてオンライン配信だった同イベントだが、今年は最大限の感染対策を講じて有観客で敢行。9月18日(土)には新宿9会場、9月19日(日)には下北沢13会場、9月20日(月)には渋谷11会場で実施され、ライブハウスバンドの年に1回の祭典を東京に復活させた。本稿では、快晴に恵まれた最終日の9月20日(月)渋谷編の模様をレポートする。


■Conton Candy

Conton Candy Photo by 清水舞

Conton Candy Photo by 清水舞

会場の外は太陽が燦々と降り注ぐ真夏日の昼12時。『環七フィーバーズNEO』とのコラボステージとなったStar loungeでオープニングを飾ったのは、3ピースガールズバンドのConton Candyだ。高校の同級生で結成された弱冠18歳の彼女たちが、紬衣(Vo&Gt)の力強い歌声や双子のリズム隊であるふうか(Ba)とさやか(Dr)のきれいなコーラスを活かし、スタートからティーンエイジャーの心を打つ切ないラブソング「濁り」を堂々とエモーショナルに鳴らすなど、いきなり目の覚めるようなパフォーマンスでオーディエンスのテンションを気持ちよく上げてくれた。

約8ヵ月の活動休止期間を経て、今年3月から新体制で歩み始めたConton Candyだが、軽快で歯切れのいいビートが印象的な新曲「envy」、近々リリース予定の1st EP『PURE』に収録される「milk」は、しっかりと3ピースの音になっていたし、笑顔を見せながら楽しそうに演奏する姿は前を向いているのが伝わってきて、もう最高にキラキラしていた。ひょっとしたら、すごい存在に化けるかもしれない。そんなバンドと偶然に出会えるという醍醐味を早くも感じて、“ああ、やっぱり失くしちゃいけない!”とサーキットイベントの価値を思い知る。

Conton Candy Photo by 清水舞

Conton Candy Photo by 清水舞

“トップバッターでこんなに多くの人に観てもらえるとは思ってなかったので、本当にありがとうございます! 『TOKYO CALLING』は私たちにとって憧れのイベント。出演できて嬉しいです”と喜びを語る紬衣。ラストは3人の声と音の重なりがさらに映え、会場が一つになったロックナンバー「ロングスカートは靡いて」で鮮やかに締めくくった。


■カネヨリマサル

カネヨリマサル Photo by aoi / アオイ

カネヨリマサル Photo by aoi / アオイ

リハでくるりの「ハイウェイ」を気持ちよく奏でていたカネヨリマサル。『スペースシャワー列伝』コラボステージのCLUB QUATTROは、開演前の時点でフロアに並べられた椅子席がもう埋まっていて、「恋人」でライブが始まれば“待ってました”とばかりにオーディエンスが立ち上がり、4つ打ちのビートに合わせて手拍子を送るさまに、インディシーンにおける彼女たちの高い支持が生々しく窺えた。3ピースのバンドサウンドもそこに乗る繊細なボーカルも凛としたきらめきがあり、「はしる、夜」と続くにつれて興奮はどんどん加速していく。

“こんなにいっぱい来てくれて、心が熱くなります。『TOKYO CALLING』は4回目なんですけど、苦しい状況でもどうにか工夫して続けていってるめっちゃかっこいいイベントなので、私たちの音楽で恩を返したいです! いろんなことが起きて、ステージの重みを知って、音楽にもらえる時間ってホンマにありがたいなと改めて思うようになりました”と感極まった様子のちとせみな(Vo&Gt)。“私たちはライブをするのも、ライブを観ている人を見るのも好きです。音楽が好きな人が集まる空間が大好きで、キラキラさせてもらってます。だから、失くならないでほしいです”といういしはらめい(Ba&Cho)の言葉も、この場にあふれるムードも、すべて有観客ならでは、今日だけのかけがえのない交歓だった。

カネヨリマサル Photo by aoi / アオイ

カネヨリマサル Photo by aoi / アオイ

リハでの振りがじわじわ効いてくる《わたしはくるりを聴きながら》という歌詞が際立つ「ひらりとパーキー」、もりもとさな(Dr&Cho)のパワフルな叩きっぷりが冴えわたる「ラクダ」など、MVも公開されている渾身のナンバーを固めたセットリストで最後まで圧倒したカネヨリマサルは、大きな拍手が鳴り響く中でステージを降りた。


■Hakubi

Hakubi Photo by aoi / アオイ

Hakubi Photo by aoi / アオイ

続いても、CLUB QUATTRO。京都発の3ピース、Hakubiは入場規制がかかる大盛況の中、メジャーデビューアルバム『era』の収録曲をぶっちぎりの演奏で聴かせてくれた。ゆったりした曲調の「灯」で幕が開け、「辿る」以降は“刻みつける刻みつける刻みつけるこの30分間、絶対に忘れさせない!”と叫ぶなど、片桐(Vo&Gt)の表現力が爆発していく。赤と青と緑のライティングが鮮やかだった「道化師にはなれない」では、ポエトリーリーディングやギターのトレモロ弾きが豪快に炸裂。それを支えるヤスカワアル(Ba)とマツイユウキ(Dr)のビートも強く揺るぎない。

MCでは“私も昨日今日と『TOKYO CALLING』を回っているんですけど、SNSとかじゃなくて自分の足で歩いて新しい音楽、好きな音楽に会いにいくことって大切なものだなと思いました。開催してくださって本当にありがとうございます。繋げていけるのも守っていけるのも、私たち、あなたたちです”と話す片桐。そんな言葉に続いて、《数えきれない光をくれたあなたに 私は今何を返せるのだろう》と歌われる「栞」が涙を誘う。「悲しいほどに毎日は」も素晴らしい。過ぎてしまった時間に対し“もう2度と戻らないと知った!”と原曲以上に強調して歌うさま、サビで拳を高く掲げ共鳴するオーディエンスの姿は迫真性に満ちていて、シンガロングできずとも声が聴こえてくるような感じがした。

Hakubi Photo by aoi / アオイ

Hakubi Photo by aoi / アオイ

ラストは結成時から大事にしてきた「mirror」を、“すごく不安もあった。だけど、ここに立ったらいっしょに音楽を、ライブを作りたいと思えた! それを『TOKYO CALLING』もあなたも気づかせてくれた!!”と、この日の感情をめいっぱい乗せて解き放ったHakubi。すべてを出し切るパフォーマンスがさすがだった。


■超能力戦士ドリアン

超能力戦士ドリアン Photo by 石村 燎平

超能力戦士ドリアン Photo by 石村 燎平

duo MUSIC EXCHANGEに移動して、超能力戦士ドリアン。早くから集まってくれた人たちのために、本番ではやらない「口から炎を吐けたら強い」「レモン1個分のビタミンC」を開演前に大サービスしちゃうのが彼ららしい(四星球の「クラーク博士と僕」もワンフレーズ披露)。リハの時点でオーディエンスも超ノリノリだ。

コール&レスポンスなどがライブの肝になるバンドだけに、観客が声を出せないシチュエーションはかなり不利かと思いきや、おーちくん(Vo)が登場と同時に恐竜の着ぐるみで大暴れしたり、TBS/MBS系『プレバト!!』のEDテーマになっているビバノンノンな歌「家のお風呂でさっパーリーナイト」、敬老の日にこじつけて“おじいちゃんおばあちゃんに感謝の気持ちを伝える曲をやります”とやっさん(Gt)が前置きしたヘドバンありの「尊み秀吉天下統一」でブチ上げたりと劣勢をものともせず、巧みなトークや身振り手振り、映像モニターを駆使しながら、場内を狂喜乱舞させてみせた。

超能力戦士ドリアン Photo by 石村 燎平

超能力戦士ドリアン Photo by 石村 燎平

その後もduo初出演となる超能力戦士ドリアンは、《死なないで 頼む 死なないで》のサビで両手を天に掲げるフロアの芳しみがエグかった推し愛ソング「好きな漫画のキャラ is DEAD」、けつぷり(Gt)の速弾きやメンバー全員による反復横跳び&ヲタ芸&寸劇(おーちくんが曲中でおばあちゃんに電話)込みでバンドの自己紹介を繰り広げる「いきものがかりと同じ編成」など、コロナ禍を忘れさせてくれる楽しさでタフに激走! “恥ずかしい人は無理に踊ったりしないで、みんな自由に楽しんでください。我々は多様性を大切にしております!”と何度も念押しするやっさんのスタンスもよく、初見のお客さんをしっかりと惹き付けていた。11月には彼ら史上最大規模の渋谷TSUTAYA O-EASTでのワンマンが控えているので、こちらもチェックしよう。


■打首獄門同好会

打首獄門同好会 Photo by 石村 燎平

打首獄門同好会 Photo by 石村 燎平

『TOKYO CALLING 2021』3日目も終盤に差し掛かり、TSUTAYA O-EASTには打首獄門同好会が登場。バセドウ病のためドラム演奏を休止している河本あす香(Dr&Vo)は特設静養中ブースでの歌唱参加、サポートドラムにバックドロップシンデレラの鬼ヶ島一徳を迎え(SEもバクシン「池袋のマニア化を防がNIGHT」だった)、VJに風乃海を敷いた布陣で、《しかし 開催できてよかったね TOKYO CALLING》という歌詞を盛り込んだ、現代を象徴するアンセム「新型コロナウイルスが憎い」からライブがスタートした。

曲中にスクワットタイムを爆誕させた「筋肉マイフレンド」までの流れはメドレーのように淀みなく、ゴリゴリにヘヴィなサウンドとはちゃめちゃにキャッチーなノリが圧倒的で痛快だった。一徳がドラムを叩くことによって曲がいつもと違う味わいで聴こえるのも面白い。MCでは“こういう空気、本当にひさしぶりです!”と嬉しそうに語り、進行が予定より5分押しているのは四星球のせいだとバラして場を沸かせる会長こと大澤敦史(Vo&Gt)。“これからライブハウスがすごい楽しくなる時代がまた来るでしょう。多感な年頃をこの状況で迎えてる若者たちがどんな激しいパンクを作ってくるのか楽しみ”とも話す。

打首獄門同好会 Photo by 石村 燎平

打首獄門同好会 Photo by 石村 燎平

あと数時間で3連休が終わるオーディエンスに捧ぐjunko(Ba&Vo)と河本のハーモニーが美しい「はたらきたくない」、河本がしまじろうパペットを手に煽る「カンガルーはどこに行ったのか」、凄まじい音圧でコミカルに猛進する「きのこたけのこ戦争」……こうしてどこまでも滑稽にはっちゃけられるのも、やはり有観客ライブの醍醐味だ。持ち前の“生活密着型ラウドロック”で満員のフロアをがっつり踊らせた打首。最後は問答無用のキラーチューン「日本の米は世界一」で劇終となった。


■バックドロップシンデレラ

バックドロップシンデレラ Photo by 石村 燎平

バックドロップシンデレラ Photo by 石村 燎平

O-EASTの大トリは、バックドロップシンデレラ。『TOKYO CALLING』へ感謝を伝えるオープニング「およげ!たいやきくん」の替え歌を経て、トリッキーなノリの性急なダンスロック「台湾フォーチュン」で勢いよく攻め、会場のハートを瞬く間に掴むあたり、2年連続でラストを任されるのも納得がいく。さらに、大型イベントに打ってつけのお祭りソング「フェスだして」を投下。その途中では鬼ヶ島一徳(Dr&Cho)がせっかく叩けるコンディションにあるということで、前のステージで打首獄門同好会が披露した「カンガルーはどこに行ったのか」のパロディも唐突にブッ込む。豊島“ペリー来航”渉(Gt&Vo)が《かんがえることを》を謎ワード入りで連呼し、でんでけあゆみ(Vo)が舞台上をカンガルージャンプでぴょんぴょん飛び跳ねるカオスな展開を、アサヒキャナコ(Ba&Cho)が“やめてーーー!!!”と制止する流れが面白すぎた。

観客の熱いリアクションを見て、“何かが変わり始め……つつある!”と恒例の掛け声を叫ぶ渉。もちろんコールできる状況ではないのだが、“つつある”のリズムに合わせてすぐさまフロアから自然と手拍子が沸き起ったのは驚きだった。その反応に“ありがとよ、本当に嬉しいぜ”と返し、飛沫の心配がない小さなハミングと手拍子でのコール&レスポンスを提案する活路の開き方がまた愉快。フロント3人がボーカルを繋いでいく爆速ナンバー「免許とりたい」、コロナ禍の夏が爽やかで切ないメロディに滲む「8月。雨あがり」と、10月リリースの『セカンドe.p』収録の新曲も繰り出されてもう止まらない。

バックドロップシンデレラ Photo by 中山優瞳

バックドロップシンデレラ Photo by 中山優瞳

ステージを所狭しと動き回ってコサックダンスや大ジャンプをしながら“なあ、みんな踊ろうぜ?”と呼びかけるあゆみ、モヤモヤを晴らすように盛り上がるオーディエンスを目にするうち、ロックバンドっていいな、ライブハウスっていいな、と改めて思った。後半に“いろいろあったけど、僕は人が笑っている姿が好きで、それを生で見るといちばん幸せを感じるんです。だから、今日は本当にありがとう”と伝えていたあゆみは、自分なりにできる対策として定期的にPCR検査を受けるようにしたこと、陰性の結果が出て楽しみに『TOKYO CALLING』へやって来たことを明かす。

“3日間いろんなアーティストが出て、いろんなお客さんが来て、みんなが守ってきたものを受け止めて最後まで無事にやり遂げなければならない……こんな重圧が私たちのようなバンドに降りかかってくるとは思わなかったです。『TOKYO CALLING』は感染対策をバチバチにちゃんと行なってくれて嬉しかった。フロアに自由が戻ったら、あと1回だけO-EASTのトリをやらせてください!”と、渉も充実の表情を浮かべた。

中秋の季節にぴったりの「月あかりウンザウンザを踊る」など、特にクライマックスは無敵の“ウンザウンザ”サウンドで駆け抜けたバクシン。アンコールラストを《どうしてこんなに貴女に貴方にまた会いたいんだろう》と歌う「祝え!朝が来るまで」で清々しく締めたこの日の彼らは、コミカルな要素がありつつもかっこいい側面のほうがかなり勝っていたと思う。


取材・文=田山雄士
 

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