今泉佑唯「全身全霊、200%で臨みたい」 11月に上演される舞台『修羅雪姫』で女優復帰
今泉佑唯 撮影=中田智章
2020年10月に活動休止をした今泉佑唯が、2021年11月19日(金)から3日間だけ上演される舞台『修羅雪姫』で、約1年ぶりに女優復帰する。1児の母となり「強くなった」と語る今泉。舞台への思いを聞いた。
日清日露戦争を前に、軍事国家へと傾き始めた明治時代後期の日本。
徴兵のために村に訪れる魔物という汚名を着せられ、家族を殺され、夫を死に追いやられ、自らも貶められ悲惨な目にあった小夜は、復讐相手の一人をどうにかしとめるが、捕らえられ獄中に入る。小夜は獄中で身籠っていた子どもを産み、雪の降る夜に産まれた女の子に“雪”と名づけて命尽きる。やがて雪は剣豪でもあった道海和尚の元で厳しい修行を身に着け、自分を産んでくれた母に代わって復讐の旅を続けることを決意する。
復讐の相手を見つけ出す度に、政府の恐ろしい陰謀が見え隠れし始める。そしていくつもの命を奪う中で次々と現れてくる残酷な真実…雪はそれでも戦い続けるーー。
役と自分の境遇と重ねて、大号泣
ーー率直に「お帰りなさい」という気分ですけども、今回、女優復帰が決まったときのお気持ちは?
気分としてはまだふわふわしているというか、実感があまり湧いていないのが素直な気持ちです。(演出の)岡村(俊一)さんからすごく素敵な夢を見させていただいているのかな? と思っているぐらい、まだ本当に実感が湧いていない感じで。まだ心がそわそわしています。
ーー不安はありますか?
すごくありますね。無事に仕上がるかなという不安です。今までの作品は、殺陣の練習を始めて、お芝居の稽古をして……という感じで、2ヶ月ぐらい準備期間があったんですね。でも今回は、全部同時並行で、1ヶ月しか時間がない。その中で、ちゃんとやり遂げなきゃいけないなという不安が結構あります。
ーー脚本はもうお読みになられたそうですが、読んでみた感想を教えてください。
泣きました。
映画版を見たときは、あまり泣いた記憶はなくて、雪という女性はひたすらに強い女性だなという印象を受けたんですけど、今回の訳本を読んだときに、セリフの一つひとつが自分自身の思いと重なって、気づいたら大号泣していました。家族からも心配されるぐらい(笑)。「なんかつらいことあった?」って(笑)。
ーーあらすじだけ読んでも、なかなかつらい境遇の役ですが、ご自身と重なる部分が多かったんですね。
そうですね。「生まれたことに何の罪があるんだ」とか「お前らに何がわかるんだ」みたいなセリフがあるんですけど、そこがすごく自分の思いと重なりました。やっぱりこの数ヶ月ぐらい、そういう経験を自分もしていたから。いろいろ思い出して、大号泣です。
逆に、脚本を読むだけで、こんなに泣いてたら、私、舞台が務まるかな? と心配に思いました(笑)。
『修羅雪姫』ビジュアル
ーー『あずみ』でもそうですが、今泉さんは何かそういう大変な役が多いですよね。ご自身としては、それを挑戦として捉えてらっしゃるんですか?
それぐらい大変な役の方がすごくやりがいがあるんです。
でも、今回演じる雪という役は自分と重なる点が多いので、大変という感じはあまりしてないかも。あえて言うなら、セリフが「存じます」と「ございませんか」とか、やや古い時代の言葉なので、そこがすっと入ってくるかどうかが気になります。普通に今の言葉で喋ってしまいそう……。
ーー役とご自身がすごく重なる、と。今年1年のいろいろあったことが大きいのかなと思うんですけど、例えば3年前の自分が演じることになったらまた違うと思いますか? 今だからこそ何かできるものがあると感じられますか?
そうですね、まさに今だからできる作品ですし、役柄だなと思います。多分1年前でも、全然違うと思います。
「産後だからこの程度か」は絶対に嫌
ーー演出家の岡村さんからは、舞台復帰にあたって、なんと言われたのですか?
まず、この映画を見てみろと言われたので、すぐに見ました。それで、面白かったと感想を伝えると、脚本が送られてきて。脚本もすぐに読んだんです。雪に共感してしまって、泣きました、本当に。
それから岡村さんからは「私生活は置いといて、表に出たときに、どれだけ自分を武器にできるかだから。修羅雪姫として怒って、修羅雪姫として戦えばいい。別に他人が興味本位に思うことなんかどうでもいいから。役としてやっていけばいいだけだから」と言われて。励まされましたね。
ーーやはり岡村さんは今泉さんにとって信頼できる演出家ですか。
もちろんです。
岡村さんから言われたことをすぐには理解できないときが時々あるんですけど、セリフの裏にある背景をサッと教えてくださったり、わかりやすい言葉に言い換えてくださったりするので、助かっています。
『熱海殺人事件』のときからお世話になっていますが、今後も舞台をずっとやっていきたいなと思ったきっかけをくださった演出家さんです。すごく感謝しています。
ーータッグを組むのは、今回3作品目。成長を見せたいという思いもあられるのですか?
成長は見せたいですね! 「やっぱり産後だから、この程度だよな」とは絶対に思われたくないので。何としてでも、全身全霊をかけて、200%ぐらいでやり遂げたいです。
ーー早期に復帰は考えられていたのですか。
はい。早めに復帰したいとは思っていました。
ーーやはり1児の母となって、だからこそ「強み」を感じられるのでは。
そうですね。なんだろう、あまりブレなくなったかもしれません。いろいろな言葉をかけられますけど、もちろん全部が全部大丈夫というわけではないんです。でも、この子のために頑張ろう、家族のために頑張ろうと思えるようになったので。自分のことよりも大事な存在に出会えたことで、強くなれた部分が絶対にありますね。
ーーもともと芯が強い方だなと思っていたのですが、ますます強くなられたわけですね。
はい。1ヶ月ぐらい前かな、不意に大号泣した日があって。その時、子どもがすごく心配そうな顔で私のことを見ていたんです。あのときの表情がすごく印象に残っていて。「この子にそんな顔をさせたくない」と思い直して、強くありたいなと思うようになりました。
『修羅雪姫』ビジュアル
「待っていてよかった」と思える最高の作品に
ーーいよいよ稽古が明日から始まると聞きました。どうですか、稽古を前日に控えて。
もうやってやるしかないですね。不安なことももちろんあるんですけど、「どうしよう」と言っている時間ももったいない。とにかく目の前のことを一生懸命やるしかないなと思っています。
ーー育児との両立も大変そうです。
そうですね。まだ小さいので、いつお腹が空くのか分からなかったり、ちゃんと寝てくれなかったりして、不安もあるんですけど、家族がいるおかげで、今回舞台に復帰することができました。申し訳ないけど、家族に育児のサポートをお願いして、稽古に励みたいと思います。
今までは煮詰まると、エステやジムに行って、ストレスを発散していたんですが、今は子どもや家族と接している時間が一番心安らぐんです。大変なこともあると思うんですけど、その時間は大切にしていきたいなと思っています。
ーー共演者の皆さんについては。
初めましての方が何人かいらっしゃって、楽しみもありつつ、不安もありつつです。でも、久保田(創)さんなど、『あずみ』からずっと一緒にやらせていただいているメンバーもいるので、安心感もすごくあります。出演が決まった時に、「大丈夫」とか「安心して任せておけ」なんていう言葉をかけていただいて。なんて心強いんだろうと思いました。
ーーコロナ禍で舞台に立つことが大変な時代になってしまいました。その辺りはどうですか。どんな心境ですか。
なんとか無事に終えたいですね。最後まで全員誰一人欠けることなく、終えたいなという気持ちしかないです。
ーーお客様との向き合い方は変わりました?
今、この状況でも私のことを応援してくださる方って、今後もずっと大切にしていきたい方たちなので。もし今回の舞台を観に来てくださるのであれば、私を応援していて良かったな、待っていてよかったなと思ってもらえるように、この1ヶ月頑張りたいと思います。
ーー最後に、楽しみにされているお客様やファンの皆様に改めて見どころや一言お願いします!
とにかく、皆様の大切なお時間をつくって、時間を割いてきてくださるので、絶対に後悔をさせたくはありません。来てよかったなあとか、また見たいなって思ってもらえるように、この作品に携わってくださる皆さんと最高の作品をお届けしたいなと思っています。
取材・文=五月女菜穂
公演情報
■会場:CBGK シブゲキ!!
■構成演出:岡村俊一
■脚本:久保田創
■出演:今泉佑唯/高橋龍輝 細貝圭 松村龍之介/大西桃香(AKB48)
安田愛里(ラストアイドル)/久保田創 濱田和馬 大串有希 近藤雄介
河本祐貴 久道成光 松本有樹純/吉田智則
■料金:全席指定 9,500円(税込/クリアファイル付き)
※クリアファイルは、当日会場にてお渡しいたします。
■企画・製作・主催:アール・ユー・ピー