タレント、アイドル、ダンサーとしても活躍する名古屋拠点の俳優・岩崎真が、初の一人芝居に挑戦。名古屋の小劇場と配信でまもなく上演

インタビュー
舞台
2021.11.17
 本作『ALL in ONE』で初の一人芝居に挑む岩崎真

本作『ALL in ONE』で初の一人芝居に挑む岩崎真

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名古屋を拠点に俳優として舞台作品やテレビドラマに出演する一方、ダンス&ボーカルグループ〈GPS〉ではリーダーを務めるなど、全国的にタレント活動も行っている岩崎真。20代半ばに差しかかり、キャリアを重ねていく中で役者としての更なるステップアップを目指した岩崎は、一人芝居に挑むことを決意。当初は2021年1月の上演を目指して準備を進めていたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響によりやむなく公演延期となってしまった。

そこから約10ヶ月の時を経て、この度ようやく11月19日(金)~21日(日)の3日間に渡り、名古屋・伏見の「G/pit」にて岩崎真一人芝居『ALL in ONE』の上演が決定。最終日の21日(日)15:00の回には、ツイキャス配信も行われる。

『ALL in ONE』チラシ表

『ALL in ONE』チラシ表


本作『ALL in ONE』の演出を手掛けるのは、CBCテレビのプロデューサーとして数々のドラマ演出を手掛け、近年は、俳優・タレントの憲俊率いる演劇ユニット〈SCANP〉などの舞台演出も務める小森耕太郎。岩崎は〈SCANP〉の作品に出演しており、小森の演出を経験。そこでまず小森に相談を持ちかけ、一人芝居への熱意を語ったという。

「演出の耕太郎さんとは7年位のお付き合いになると思うんですけど、芝居について教えてもらってたり演出してもらったりしている中で、「いつか一人芝居やったらいいじゃん」というお話をボソッとされたんです。コロナの状況になって、お芝居をやりたいな、と思っていた時に、複数人だといろいろリスクがあるけど、一人芝居だったら出来るんじゃないかな、と思って相談しました。一人芝居には元々興味はあったんですけど、この状況だからこそ思い切って踏み切れた、という感じです」と、岩崎。

片や小森も、「前から一人芝居はやった方がいいんじゃないか、という話はしていたんですよ。自分の“代表作”じゃないけど、自信を持ってやれる作品を1本ぐらい作った方がいいと。主役芝居というのはなかなか出来ないけど、一人芝居だったら挑戦することは出来るし、観客の全部が自分を観てくれる。いろんなことも試せるから、何か面白いことが出来るんじゃないの? っていう話はずっとしていて。それは岩崎に限らずいろんな役者に言ってるんですけど、「一人芝居をやりたい」という話を聞いた時は、あ、やる気になったのね、と思いました」と。

演出を手掛ける小森耕太郎の肖像画

演出を手掛ける小森耕太郎の肖像画

しかし、岩崎から相談を受けた時点では脚本のアテはなく、「ホンはあるの? って岩崎に聞いたら、「無いんです。演出とホン、お願いします」って言われたので、何がやりたいの?って聞いたら、「いろんな役をやってみたいです。それで最後、温かい気持ちになるものがいいです」って、その2つしか言わなかったんですよ。なんだよ、最初から全部こっちが考えなきゃいけないじゃん、って」

そこから小森は旧知の作家である、池谷雅夫(劇団「くろいぬパレード」代表。劇作家・演出家。舞台の他、近年はテレビドラマや映画の脚本なども手掛ける)に連絡して趣旨を伝え、脚本を依頼。中学生以降、10年間に渡って引きこもり生活を続ける主人公・山本と、ネットを通じて繋がる4人の仲間達との交流や、そこで巻き起こる事件を巡るストーリーが、岩崎のために生み出された。
「僕が初めて長編ドラマを担当した時に作家を探してて、東京で〈くろいぬパレード〉の舞台を観て、このホン書いた人面白そうだな、と思ったんです。彼はその当時、まだドラマの脚本は書いたことがなかったんですけど、そこでお願いして書いてもらってからの付き合いなんですよ。今は本当にあちこちでいろんな脚本を書いてますけど、初めて映像の仕事をやったのが僕の作品だったんで、今回無理言って、「書いて」って(笑)。電話で何度もやり取りして、お互いプロットを書いては送って、送っては書いて…を繰り返して、結構そこに時間を使いました。それで、プロットが上がった時点であとは大丈夫だな、と思って任せたら、2稿ぐらいで完成して。やっぱり作家だから展開の面白さはちゃんと押さえてくれて、仕掛けのアイデアとかも、それいいね、っていう感じに仕上がりました」

稽古風景より

稽古風景より

脚本を受け取った岩崎は、「最初に読んだ時はまず、セリフを入れるのが精一杯でした。そこから徐々に慣れてきて役を深めていく中で、5役を一人で演じることになるので、普通のお芝居ではひと役深めていくところを5倍深めなきゃいけない、という難しさを実感してます。書かれている内容を調べれば調べるほどいろいろ出てきて、未だに自分がこの脚本を読み切れているのかどうか、不安があります。でも、本当に素敵なホンをいただいて、想像以上でした!」と、日々格闘しながらも本作に取り組むことができる喜びを噛み締め、役を享受する様が稽古の様子からも伺えた。

性質の異なる役柄の演じ分けに加え、スピード感のあるセリフの応酬や長ゼリフ、時に激しいアクションも要求されるなど肉体的な負荷も多い今作は、オーダーした当の演出家も、「結構ハードル高いホンが上がってきたな、と最初は思ったんですよ。作家から、「プロット通りに書いたら、結構大変になっちゃった」って言われて。これ、本当に岩崎がやるの? みたいな(笑)」と言うほど、初めての一人芝居としては課題の多いテキストに。

しかし、「長ゼリフを上手く書き分けてくれたり、その辺りのホンの創り方が上手かったので、結果的に役者はやりやすくなったかな、と思います」と、小森。一方、岩崎も、「いろんな役をやりたい、というのは自分で言い始めたことなので、甘えられないな、と思っています。これまでいろいろお芝居とかやらせてもらってきた中で、この部分は甘えられるだろう、と人任せにしていたところとかも今回は全部自分で担う難しさとか、新たな自覚みたいなものは生まれたなぁとは思います。あとはそれが本番にどう生かされるかわかりませんけど、自分の中では役に対する責任感みたいなものが出てきてるな、と思います」と、成長ぶりを伺わせる発言も。

稽古風景より

稽古風景より

岩崎が最初に〈SCANP〉に出演した際に行われたオーディションで、「代表の憲俊や他のメンバーは別の参加者の方が上手くていい、と言ったんですけど、俺は何か他の役者と違うものを感じたので、岩崎の方が将来面白いんじゃないか、と魅力を感じたんです」という小森。今回の演出では、そう見込んだ岩崎の特性を見極め、その能力がベストなタイミングで発揮できるようディレクションしていったという。

「彼はスロースターターというか、完成形に到達するまでが遅い役者さんなんですよ。独自のリズムがあって、本番にギリギリ間に合うか間に合わないか、という際どさがあるけどギリギリ間に合うので、そこを一番大事にしています。逆に早く創りすぎると、そこからまた先を考えてグチャグチャになっちゃうタイプなので、本番の1週間前位にある程度完成するように持っていこうと。だから最初はずっと輪郭を創り続ける作業をして、だんだん細部を…例えば彫刻で言うと、目尻の小ジワとかを彫るように作り込んでいくんです。実は今回、一週早く出来上がっちゃった感じがあって、それがどう出るかなと。でも、課題は一個一個ちゃんとクリアしているし、細かい所作も出来てきているので、それは嬉しいなと思います。いつもセリフ覚えは超悪い方なんですけど、今回はすごく早く入っていたし、当初俺が思っていたより役者さんとして魅力的になったな、と最近思います」

こんな時期だからこそ、むしろ勇気をふるうことが出来たという一人の役者の挑戦が舞台上でどのように結実するのか、そして、物語が進むにつれて解き明かされていく、タイトルに込められた複合的な意味合いとは一体何か? を知るべく、劇場や配信でぜひ目撃を。

また本作は、山本山(@yamamotoyamaone)アカウントから発信されるツィートと劇世界が連動しており、当初の上演予定日前の2020年12月からメッセージが発信され続けている。「ツィッターを見ずに上演だけ観てももちろん成立するんですが、そこまで見てもらうとちょっと楽しいと思います」と、小森。全公演&ツイキャス配信終了後も更新され、そこにもう一つのエンディグも用意されるというから、こちらも要注目だ。

『ALL in ONE』チラシ裏

『ALL in ONE』チラシ裏

 

公演情報

岩崎真 一人芝居『ALL in ONE』

■脚本:池谷雅夫
■演出:小森耕太郎
■出演:岩崎真

■日時:2021年11月19日(金)19:00、20日(土)11:00・15:00、21日(日)11:00・15:00 ※21日(日)15:00の回はツイキャス配信もあり
■会場:G/pit(名古屋市中区栄1-23-30 中京ビル1F)
■料金:一般4,500円 学生2,000円 ※前売・当日共、ツイキャス配信は3,500円(11月21日(日)15:00の回のみ)
■アクセス:名古屋駅から地下鉄東山線で「伏見」駅下車、⑦番出口から南へ徒歩6分
■問い合わせ:kids heart  プロモーション 052-876-3335
■公式サイト:http://kidsheart-pro.com/
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