「みんなにも音楽に出会えてよかったという気持ち帰ってほしい」『TRUE Live Sound! vol.5 ~Acceleration~』レポート
『TRUE Live Sound! vol.5 ~Acceleration~』
2014年からアーティストとしての活動を開始したTRUE。これまで多くのアニメソングを送り出してきた彼女の単独ライブ『TRUE Live Sound! vol.5 ~Acceleration~』が2021年11月23日、TOKYO DOME CITY HALLにて開催され、同時にネットでの生配信も行われた。2021年1月の『TRUE Live Sound! vol.4 ~Progress~』から、約10ヶ月ぶりのソロライブでは何を見せてくれるのだろうか。
ライブ開始時間になると会場は暗転、そしてそこにギターサウンドが鳴り響く。観客は手拍子で応える中、スポットライトが舞台中央を照らす。そこには凛とした姿で立つTRUEの姿があった。カーキ色のミリタリー調のドレスに身を包んだ彼女。その力強い佇まいで一曲目に披露したのは今回のライブタイトルにもなっている楽曲「Acceleration」。中央にそびえるスタンドマイクの前、その場の地面を強く踏み締めるかのように、力強く歌い上げる彼女。その姿は開始早々に見るものを圧倒したのだった。
『TRUE Live Sound! vol.5 ~Acceleration~』
「Acceleration」が終わると続いてピアノソロが始まる。そのピアノの音色を聴いて彼女が一瞬微笑みをもらし、再び気迫のこもった表情に戻る。続いて彼女が披露したのは「リブート!」。彼女の歌声の力強さを二曲連続に全身に浴びた観客は、その歌声にハートを掴まれたはずだ。
さらに鳴り響くシンセサイザーの音色から「Dear answer」が始まる。「みんな盛り上がって行こうぜ!」という掛け声とともに、これまでスタンドマイクを前に直立していた彼女がマイクを片手に舞台上を移動し始める先ほどまで力強く歌い上げていた彼女が距離を詰め、歌を投げかけくる。このたった三曲のパフォーマンスで彼女は会場中を自分の世界の内側に誘い入れてしまったのだ。
三曲を終え、改めて「みんな会いたかったです!元気にしてた!?」と挨拶。声を発することができない客席からは、それに必死に動きで応える。ここから彼女が立て続けに披露したのは『コトバアソビ』に収録されている「inorganic」と「空に読む物語」。共に別れをテーマとし、観客を前に初めて歌唱されるこの2曲。しっとりとした楽曲でありながらも、彼女の歌声の力強さは依然、明確に感じとれた。そして歌う彼女の潤んだ瞳は聴くものの涙を誘う。
『TRUE Live Sound! vol.5 ~Acceleration~』
このしっとりとした流れからもう一曲、更なるエモーショナルを重ねる。2018年にリリースした『Lonely Queen’s Liberation Party』収録の楽曲「酸素」では、舞台上に用意されたチェアに彼女が腰掛け、その姿をスポットライトが照らし出す。その隣で照らし出されるキーボードのゆうりのキーボードの音色にTRUEが歌声を重ねていく。見るもの全てがこの瞬間の美しさを目と耳で感じ取ったはずだ。
「ここからは少し雰囲気を変えてお送りしようかと思います」と彼女からのコメントが入ると、弦楽隊が登場。ブルーのライトが彼女を照らし出し、弦楽器のサウンドともに奏でられたのは「叙情詩とロマンス」。歌が進む中で舞台上は赤と黄のライトが差し込み、そんな幻想的な空間の中に彼女の伸びやかな歌声が会場中を包み込む。
「想いがどうか、届きますように」と語ると「WILL」を披露。バンドサウンドと弦楽隊が壮大な音色を奏でると、舞台上の彼女を白いライトが照らし出す。彼女の伸びやかな歌声は更なる加速度で観客を包み込んだ。
静かに「知らない言葉を覚えていくたび…」と彼女が歌い出す。続いて披露したのはもちろん「Sincerely」。優しく語りかけるように始まった彼女の歌声は徐々に熱を増していき、バンドサウンドもそれに呼応するかのように壮大になっていく。
「Sincerely」を終えた会場内にピアノのサウンドが鳴り響き、「Lonely Queenʼs Liberation Party」が始まる。しっとりとした歌い出しから、演奏は豪奢さを増していく。エモーショナルと熱い想いを同時に届ける彼女の歌声に、聴くものは夢心地にならずにはいられない。これぞまさしくTRUEの持つ歌声の力なのだろう。
『TRUE Live Sound! vol.5 ~Acceleration~』
「なんだかしっとりしましたけど、みなさん元気ですか?」ここまでを終えた彼女が会場中に語りかける。ここまで夢の世界にいたような感覚にいた観客に、目覚めを促すかのような彼女の優しい言葉。これまでとは違ったスイッチが入ったかのようにラストスパートが始まる。「歌っていない曲がたくさんありますけど、ブチ上がっていけますか!」と彼女のシャウトに合わせて管楽器のアッパーなサウンドが鳴り響く。ラストスパート一曲目は「Blast!」。ここまで視線を引き込むように一点にとどまって歌を披露してきた彼女がついに動き出す。曲に合わせて全身を動かし、心から楽しんでいるのを感じられる。顔には万遍の笑みが浮かび、歌声もまるで笑顔が乗っているのように弾んだものとなっていく。
そして「Blast!」のアウトロから引き継ぐように次の曲へ。照明がサイケデリックなカラーのものに切り替わり「そんなもんじゃねえだろ!」との発声とともに披露したのは「分身」。パワフルでありセクシーな彼女の歌声に、観客は釘付けになる。舞台上に座り混み、すごむような仕草で歌う姿すらも様になる存在感。
さらなる加速をつけて「カレイドスコープ」が始まると、「みんな準備はいいですか!」とタオルを持ちだす彼女。会場中がタオルをサビに合わせて頭上で回す。間奏では「みんなまだまだ元気あるよね!元気いっぱい伝えてください!」と叫ぶ姿は非常に印象的だ。
『TRUE Live Sound! vol.5 ~Acceleration~』
そんな熱い楽曲のラッシュを一度クールダウンさせると、パフォーマンスには一切影響させず歌い切ったが、先ほど転倒してしまったことを恥ずかしがる。その姿が可愛らしく、ここまでのクールにパフォーマンスと対照的な表情に和まされる。
曲に入る前に「音楽っていいよね」と言い、さらに彼女はこう続ける「みんなにも音楽に出会えてよかった、作品に出会えてよかったという気持ち帰ってほしい」と。そこから披露されたのはライブのラストナンバー「MUSIC」。彼女が心から愛する「音楽」それ自体をテーマとした楽曲で本ライブは締め括られ、「ありがとうございました!TRUEでした!」そう挨拶して彼女は舞台を後にした。
『TRUE Live Sound! vol.5 ~Acceleration~』
彼女が去った後の舞台に向け、拍手は鳴り止まない。アンコールではカジュアルな装いで登場し、披露したのは「Storyteller」。彼女の笑顔溢れる歌う姿は、リラックスした魅力に包まれていた。
ここで1月に放映開始となるTVアニメ『リアデイルの大地にて』のOPテーマ「Happy encount」を紹介。「TRUE史上最もPOP」と語られる本楽曲、ファーストバイオリンを担当する小林修子がTRUEの横に登場すると、アイリッシュポップサウンドをかなで、それにTRUEがリズミカルな歌を乗せていく。多幸感あふれる楽曲に観客は手を振り、楽曲のキャッチーさと歌声に自然と身体を動かさずにはいられなくなる。
そしてついに、本ライブのアンコールパートも最後の楽曲へ。暗転した舞台上に一人、スポットライトに照らし出されるTRUE。そして彼女はこう歌う「LALALA、君の声聞かせて欲しいよ」と。今回のライブの締めくくりとして彼女が選んだのは「DREAM SOLISTER」だった。アカペラパートを歌い終えると照明がつき、バンド隊の演奏がスタート。歌い、そして全身で曲を楽しむTRUE。そして楽曲の終わりには彼女の号令で会場全員が同時に宙に飛び、着地とともに楽曲が締まる。音楽が会場中に大きな一体感を作り出したのだった。そして最後に「必ずまたワンマンライブで再会しましょう!」とステージを後にした。
『TRUE Live Sound! vol.5 ~Acceleration~』
多種多様な楽曲の全てで観客を魅了するTRUE。その多様な歌声を味わい尽くすことのできる濃厚なライブパフォーマンスがそこにはあった。果たして、次に彼女が見せてくれる感動はどういったものなのだろうか。楽しみに待ちたい。
レポート・文=一野大悟
セットリスト
2021.11.23『TRUE Live Sound! vol.5 ~Acceleration~』@TOKYO DOME CITY HALL
01.Acceleration
02. リブート!
03.Dear answer
04.inorganic
05. 空に読む物語
06. 酸素
08.WILL
09.Sincerely
11.Blast!
12. 分身
13. Another colony
14. カレイドスコープ
15.MUSIC
EN1.Storyteller
EN3.DREAM SOLISTER