ワッツ・オン・ブロードウェイ?~B’wayミュージカル非公式ガイド【2022年冬号】
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祝・再開! 私ももうすぐ行ける! と喜んでいた前回の秋号が嘘のように、オミクロン株の蔓延により状況は一変。ブロードウェイは確かに再開されたが、陽性者が出て急きょ休演となる作品が続出し、そして『ジャグド・リトル・ピル』『ダイアナ』『ウェイトレス』はなんと早くも閉幕してしまった。そもそも期間限定公演だった『キャロライン・オア・チェンジ』や、再開されることなく閉幕した『ウエスト・サイド・ストーリー』なども含めると、2019年以降はなんと観逃し作品の多いことか。観る気満々だった秋開幕の作品が年を越せずに閉幕してしまって観逃すことは、回転の速いブロードウェイでは元々よくあることだったが、今回に関しては“観る気満々期間”が長かっただけにやるせない。
そんなわけでもう正直やる気も、そしてお察しの通りネタも尽きているのだが、ディズニープラスの『ハミルトン』についに日本語字幕が付いたという明るいニュースが辛うじてあったので、今号のコラムパートでは日本にいながらにしてブロードウェイ気分が味わえる配信ミュージカル三選をお届けすることにする。といっても筆者、家で、画面でミュージカルを観るのはどうにも苦手な体質なもので、豊富な実体験に基づくオススメというわけにはいかないのだが…。代わりと言ってはなんだが、リストパートにはついに始まったマイケル・ジャクソンのジュークボックス『MJ』の動画やラミン・カリムルーの最新情報など付け加えているので、共に遠い遠いブロードウェイに思いを馳せていただければ幸いだ。
■ディズニープラス『ハミルトン』
『ハミルトン』がモンスター級ヒット作であり必見の革新作であることは既に何度も書いている通りだが、いかんせんほぼ全編ラップなので、歌詞を聴き取ることは正直とても難しい。初めてブロードウェイで観た時は、Wikipediaの「アレクサンダー・ハミルトン」ページ(日本語)を熟読してから臨んだ甲斐あって割と聴き取れたのだが、次にロンドンで観た時は、2回目だし大丈夫だろうと油断して予習を怠ったせいで取り残される時間も多かった。そんなわけで、日本語字幕付きで観られるというのは本当に貴重な機会。そしてこれを機に本作の別格ぶりが日本でも広まり、日本語版上演の機運が高まることを期待したい。
■Netflix『ザ・プロム』
コロナ禍が増やしたミュージカルの映像化には大きく二つのパターンがあり、一つが『ハミルトン』『ダイアナ』『カム・フロム・アウェイ』のように舞台をそのまま配信するもので、もう一つが『イン・ザ・ハイツ』『ジェイミー』『ディア・エヴァン・ハンセン』、公開控える『ウエスト・サイド・ストーリー』のような映画としてのリメイク。ずいぶん前から映画化が発表されていた作品がほとんどなのでコロナ禍の影響とは言えないかもしれないが、今、飢えた海外ミュージカル心を癒してくれる存在であることに変わりはない。その先陣を切るかのように2020年末に公開されたのが『ザ・プロム』で、バックステージものという一面も持つ物語が故に、恋しいブロードウェイの街並(らしきもの)がふんだんに映るのも嬉しかった。あのシーンだけでも何度も観たい。
■Netflix『チック、チック…ブーン!』
オン・ブロードウェイでの上演歴はないが、『RENT』の生みの親ジョナサン・ラーソンの自伝的作品、すなわちこれこそバックステージものなので“ブロードウェイ気分が味わえる度”は高い。描かれているラーソンの人生もブロードウェイの創作システムも、描いている監督リン=マニュエル・ミランダ(こちらは『ハミルトン』の生みの親)の才能もキャストの切実さも、もう全部が全部すごすぎて筆者などは逆に打ちのめされてしまったが、良いミュージカルって何だろうと一度でも考えたことがあるなら絶対に観ておくべき一作だ。
【2021-2022シーズンの新作】
*情報は2021年12月30日時点のもの。また上述の通り、休演中の作品も多いので要注意。
■既に上演されている作品
『Caroline, or Change』2022年1月9日まで
2004年のトニー賞ノミネート作品の、2018年にロンドンで好評を得たリバイバル版。
https://www.roundabouttheatre.org/get-tickets/upcoming/caroline-or-change/
『アメリカン・ユートピア』2022年4月3日まで
映画版も話題となった、ミュージカルに近いコンサート。2019-20シーズン以来の再演。
https://americanutopiabroadway.com/
『Flying Over Sunset』
3人の著名人がLSD(当時は合法)を使用していた事実を元にJ・ラパインが創作する新作。
https://www.lct.org/shows/flying-over-sunset/
『ハミルトン』クリエイター陣が製作する即興ミュージカル。2019-20シーズン以来の再演。
https://freestylelovesupreme.com/
マイケル・ジャクソンの半生を『パリのアメリカ人』のC・ウィールドンの演出・振付で。
https://mjthemusical.com/
H・ジャックマンとS・フォスターが夢の共演。スタッフ陣も盤石で大ヒット確実!
https://musicmanonbroadway.com/
■これから上演予定の作品
1969年のトニー賞受賞作をD・パウラス演出でリバイバル。米国独立宣言の裏側を描く。
https://www.roundabouttheatre.org/get-tickets/upcoming/1776/
2019年作品の再演。『ムーラン・ルージュ!』でトニー賞に輝いたA・ティンバース演出作。
https://beetlejuicebroadway.com/
黒人女性の内面を詩や音楽で描く“Choreopoem(舞踊詩)”。1976年初演作のリバイバル。
https://forcoloredgirlsbway.com/
『ファニー・ガール』2022年3月26日プレビュー開始予定
58年ぶりのリバイバル。ロンドンで好評を得たM・メイヤー演出版。R・カリムルー出演!
https://funnygirlonbroadway.com/
『Paradise Square』2022年2月22日プレビュー開始予定
『生きる』の作曲家J・ハウランドの新作。19世紀マンハッタンを舞台に人種間の絆を描く。
https://paradisesquaremusical.com/
『シング・ストリート』2022年プレビュー開始予定
同名のアイルランド映画(副題「未来へのうた」)の舞台化。オフでの好評を受けてBW入り。
https://singstreet.com/
『お熱いのがお好き』2022年プレビュー開始予定
M・モンロー主演の名作映画をC・ニコロウ(『アラジン』)の演出・振付で舞台化。
『A Strange Loop』2022年春プレビュー開始予定
2019年のオフ公演がドラマデスク賞やピューリッツァー賞に輝いた秀作が待望のオン進出。
https://strangeloopmusical.com/
【2019-2020シーズンの新作】
『カンパニー』
ソンドハイムの傑作コメディの、主人公を女性に置き換えたリバイバル。P・ルポン主演。
https://companymusical.com/
『Girl From the North Country』
ボブ・ディランの楽曲がちりばめられてはいるが、作りとしては完全にプレイ。要英語力。
https://northcountryonbroadway.com/
『ムーラン・ルージュ!』
2021年のトニー賞受賞作。原作はB・ラーマン監督の映画。2023年に日本で上演される。
https://moulinrougemusical.com/
『ミセス・ダウト』
同名映画を『サムシング・ロッテン!』の作家兄弟と売れっ子演出家J・ザックスが舞台化。
https://mrsdoubtfirebroadway.com/
『SIX: The Musical』
ロンドンで大ヒット。ヘンリー8世の6人の妻がガールズパワーを炸裂させる痛快作!
https://sixonbroadway.com/
『Tina:ザ・ティナ・ターナー・ミュージカル』
ティナ・ターナーの半生を彼女の楽曲で綴る。ロンドンでの好評を受けてBW入り。
https://tinaonbroadway.com/
【ロングラン作品】
■日本で既に上演された/されている作品
『アラジン』
ディズニーアニメが舞台ならではの手法で表現された秀作。魔法の絨毯は本当に魔法。
https://www.aladdinthemusical.com/
『シカゴ』
『オペラ座の怪人』に次ぐロングラン記録を更新中の名物作。出来は割とキャスト次第。
https://chicagothemusical.com/
『ライオンキング』
開幕から20年以上経つというのに、未だ入場率がほぼ毎週100%を超える大ヒット作。
https://www.lionking.com/
『オペラ座の怪人』
言わずと知れた世界的メガヒット作。圧倒的な知名度ゆえ、劇場では日本人に遭遇しがち。
http://www.thephantomoftheopera.com/
『ウィキッド』
開幕から15年が経ち、ようやく
https://wickedthemusical.com/
■日本未上演の作品
『Ain’t Too Proud』2022年1月16日まで
『ジャージー・ボーイズ』のチームが描くテンプテーションズの軌跡、コロナ禍に散る…。
https://www.ainttooproudmusical.com/
『ブック・オブ・モルモン』
日本では永遠に上演されなさそうだが超絶面白い。モルモン教だけwikiで調べて観るべし。
https://bookofmormonbroadway.com/
『カム・フロム・アウェイ』
「911」の日、カナダの小さな町に起こった実話をシンプルだが力強い演出で描く感動作。
https://comefromaway.com/
『ディア・エヴァン・ハンセン』
深遠なテーマをスタイリッシュに描く、2017年のトニー賞受賞作。映画版も話題に。
https://dearevanhansen.com/
『Hadestown』
『グレコメ』の演出家が現代的に描くギリシャ神話。2019年のトニー賞で8冠を達成。
https://www.hadestown.com/
『ハミルトン』
近年最大のモンスター級ヒット作。ディズニー+で配信中(日本語字幕付き)。
https://hamiltonmusical.com/