ワッツ・オン・ブロードウェイ?~B’wayミュージカル非公式ガイド【2023年冬号】

2023.1.2
コラム
舞台

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始まったと思ったらあっという間にクローズした『KPOP』、新年早々のクローズが発表された『Almost Famous』と、秋開幕の作品が悲しい末路を辿る一方で、新作の情報が続々と解禁され活気づいてもいるブロードウェイ。今号より新たにリスト入りした7本のうち、ロンドンでオリヴィエ賞を受賞した『バック・トゥ・ザ・フューチャー』、ブリちゃんのジュークボックス『ワンス・アポン・ア・ワン・モア・タイム』、ジョナサン・グロス&ダニエル・ラドクリフ&リンゼイ・メンデスの豪華キャストが話題の『メリリー・ウィー・ロール・アロング』はどうやら2023-24シーズンのようだが、それ以外は今春の開幕だ。仮に『オペラ座の怪人』千秋楽ウィーク合わせで4月に飛ぶとするなら、観たい新作はこれで既に10本……。これからまた増えると思うと、嬉しい悩ましさである。

とこのように、2022-23シーズンもたけなわの今となっては、筆者が最後にブロードウェイ行脚を遂行した2022年5月なんてもう遠い昔のように思える。思えるが、その際に観てきた10本を毎号2~3本ずつ紹介していこう企画はまだ終わっていないので、今月は『Six』と『ストレンジ・ループ』をお届け。後者は昨年のトニー賞受賞作だが1年と持たず、この1月15日でのクローズが発表されている。観たいなら今すぐ飛ぶしかない!
 

■『Six』

2019年末にロンドンで観て大興奮、その場で日本版妄想を熱く呟き散らかしてしまった作品を再見したら、1回目に興奮し過ぎると2回目では失速する例が個人的に多いなか、やはり大興奮してむせび泣きに至ってしまった。それくらい、とにかく音楽・振付・衣裳・照明の融合度がおそろしく高いが故に果てしなく気ン持ち良く、歴史に埋もれた女性たちの強烈な自己讃歌に、立場は全く違うはずなのに最終的に「そうだよそうだよ!」と大声で叫びたくなるような快作だ。……と、つい感想から入ってしまったが。基本情報に戻ると、ヘンリー8世という、イギリス人なら徳川家康並みに誰でも知ってる王様の、これまたよく知られている6人の妻たちがガールズバンドを結成し、メインボーカルの座を争う物語。日本人にとって、ヘンリー8世は遠い存在かもしれないが、とかく“プリンス”の影に埋もれがちな日本の実力派(地声強め)ミュージカル女優たちのパワーが炸裂したら同じ類の興奮は生まれ得ると信じ、相変わらず日本版を激しく妄想している。ぜひっ!


 

■『ストレンジ・ループ』

ミュージカル作家を目指すクイアで太目な黒人青年が、擬人化された彼の“心の声”6人と対話しながら新作を書き進めるなかで、人種や同性愛差別、ルッキズムといった現代アメリカの諸問題が面白おかしく浮かび上がってくるミュージカル。アメリカでの高評価に異議を唱える資格もつもりも全くないが、外国人観光客が楽しむのは難しいこともきっと確か。あの辛辣で独創的で時事的でもある歌詞と台詞をすべて聞き取って正しく理解することは、少なくとも筆者にはできなかったし、そこ以外で楽しもうには歌もダンスもセットもあまりに地味だった(あとちょっと「脳内ポイズンベリー」みたいで既視感があり、言われているような斬新さも感じられなかった)。日本版はいいから、これくらい辛辣で独創的で時事的な日本オリジナルミュージカルが作られてほしい。


 

【2022-23/2023-24シーズンの新作】
*情報は2022年12月30日時点のもの

■既に始まっている作品

『&ジュリエット』
ロミジュリの後日譚をM・マーティンの大ヒット曲で綴るロンドンのヒット作がBWへ!
https://andjulietbroadway.com/

 

『1776』2023年1月8日まで
1969年のトニー賞受賞作をD・パウラス演出でリバイバル。米国独立宣言の裏側を描く。https://www.roundabouttheatre.org/get-tickets/2022-2023-season/1776/

『Almost Famous』2023年1月8日まで
映画『あの頃ペニー・レインと』を、監督自身の脚本とT・キットの音楽でミュージカル化。https://almostfamousthemusical.com/

『A Beautiful Noise』
ニール・ダイアモンドの伝記系ジュークボックス。M・メイヤー演出、W・スウェンソン主演。
https://abeautifulnoisethemusical.com/

『イントゥ・ザ・ウッズ』2023年1月8日まで
好評だったコンサート版の期間限定BW公演…のはずが延長を重ねたがついにクローズ。https://intothewoodsbway.com/

『Kimberly Akimbo』
オフの賞を総なめにした話題作がオンに。早老症の女子高生の物語をJ・テソーリの音楽で。https://kimberlyakimbothemusical.com/

 
『お熱いのがお好き』
マリリン・モンロー主演の名作映画をC・ニコロウ(『アラジン』)の演出・振付で舞台化。
https://somelikeithotmusical.com/
 

■これから開幕予定の作品

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』2023年6月30日プレビュー開始予定
言わずと知れた大ヒット映画の舞台化。ロンドンでオリヴィエ賞を受賞してのBW入り。https://www.backtothefuturemusical.com/new-york/

 

『Bad Cinderella2023年2月17日プレビュー開始予定
ロイド=ウェバー大先生の新作。ロンドンでは『シンデレラ』だったが改題された。https://badcinderellabroadway.com/

『Camelot』2023年3月9日プレビュー開始予定
ラーナー&ロウ(『マイ・フェア・レディ』)の古典をリバイバルの名手、B・シャー演出で。
https://www.lct.org/shows/camelot/

Dancin’2023年3月2日プレビュー開始予定
鬼才ボブ・フォッシー(『シカゴ』)の振付に焦点を当てたレビューが41年ぶりに登場。https://www.dancinbway.com/

 

『メリリー・ウィー・ロール・アロング』2023年秋プレビュー開始予定
オフでがプラチナ化している豪華キャスト版がオンへ。M・フリードマン演出。https://merrilyonbroadway.com/

『ニューヨーク・ニューヨーク』2023年3月24日プレビュー開始予定
カンダー&エッブ音楽、LMミランダ追加作詞、S・ストローマン演出ってなんかすごい。https://newyorknewyorkbroadway.com/

Once Upon A One More Time2023年5月13日プレビュー開始予定
ついに登場、B・スピアーズのジュークボックス。但し伝記ではなくオリジナルストーリー。https://onemoretimemusical.com/

Shucked2023年3月8日プレビュー開始予定
J・オブライエン(『ヘアスプレー』)の最新演出作。とうもろこしが題材のコメディのよう。https://shuckedmusical.com/

『スウィーニー・トッド』2023年2月26日プレビュー開始予定
ソンドハイムの傑作を『ハミルトン』の演出家がリバイバル。ジョシュ・グローバン主演。
https://sweeneytoddbroadway.com/

【2021-2022シーズンの準新作】

『ファニー・ガール』
58年ぶりのリバイバル。M・メイヤー演出。『glee』のリー・ミシェル登板以降、バカ売れ。
https://funnygirlonbroadway.com/

『MJ The Musical』
マイケル・ジャクソンの伝記系ジュークボックス。祝トニー賞振付・主演・照明・音響賞!
https://mjthemusical.com/
→2022年夏号で紹介済(https://spice.eplus.jp/articles/304899)

『ザ・ミュージックマン』2023年1月15日まで
H・ジャックマンとS・フォスターが夢の共演。元旦までの予定だったが少しだけ延びた。
https://musicmanonbroadway.com/
→2022年秋号で紹介済(https://spice.eplus.jp/articles/308724)

『SIX: The Musical』
ヘンリー8世の6人の妻がガールズパワーを炸裂させる痛快作!バンドまで全員女性。
https://sixonbroadway.com/
 
『A Strange Loop』2023年1月15日まで
2022年のトニー賞受賞作。ミュージカル作家を目指す太めでクイアな黒人青年の物語。
https://strangeloopmusical.com/
 

【ロングラン作品】

■日本で既に上演された/されている作品

『アラジン』
ディズニーアニメが舞台ならではの手法で表現された秀作。魔法の絨毯は本当に魔法。
https://www.aladdinthemusical.com/

『シカゴ』
『オペラ座の怪人』が終われば上演中の作品としては最長ロングランとなる名物作。
https://chicagothemusical.com/

『ライオンキング』
開幕から20年以上経つというのに、未だ入場率がほぼ毎週100%を超える大ヒット作。
https://www.lionking.com/

『オペラ座の怪人』2023年4月16日まで
35年間ロングラン中のメガヒット作。千秋楽発表以降、バカ売れにつき2か月延長に。
http://www.thephantomoftheopera.com/

『ウィキッド』
開幕から20年近くが経ち、ようやくに多少の余裕が。定期的に観たい傑作。(日本では劇団四季が2023年10月~期間限定上演を発表)
https://wickedthemusical.com/
 

■日本未上演の作品

『ビートルジュース』2023年1月8日まで
2019年作品の再演。『ムーラン・ルージュ!』でトニー賞に輝いたA・ティンバース演出作。
https://beetlejuicebroadway.com/
 
『ブック・オブ・モルモン』
2011年のトニー賞を制した、もはや“古典”の領域の傑作。1周回って日本語版を妄想中。
https://bookofmormonbroadway.com/
 
『Hadestown』
『グレコメ』の演出家が現代的に描くギリシャ神話。2019年のトニー賞で8冠を達成。
https://www.hadestown.com/
 
『ハミルトン』
近年最大のモンスター級ヒット作。ディズニー+で配信中(日本語字幕付き)。
https://hamiltonmusical.com/
 
『ムーラン・ルージュ!』
2021年のトニー賞受賞作。原作はB・ラーマン監督の映画。日本での上演が接近中…。
https://moulinrougemusical.com/