東京タンバリン『絆されて』は「笑えるサスペンス」を目指した作品~森啓一朗×青海衣央里×萩原美智子インタビュー

インタビュー
舞台
2022.2.3
東京タンバリン『絆されて』写真右から森啓一朗、青海衣央里、萩原美智子

東京タンバリン『絆されて』写真右から森啓一朗、青海衣央里、萩原美智子

画像を全て表示(5件)


高井浩子の劇作を本人演出のもと上演する劇団「東京タンバリン」が、2022年2月10日(木)~15日(火)に東京・三鷹市のSCOOLにおいて、新作『絆されて』を上演する。<2月10日より三鷹SCOOLで予定しておりました「絆されて」は関係者に新型コロナウイルス感染者が出たため、残念ですが、中止することになりました。 ご予約のお客様には、劇団より追って、ご連絡を差し上げます。ご確認ください>

2021年6月に上演された劇団公演『その前』は、JR高円寺駅と阿佐ヶ谷駅の間にある高架下空き倉庫という劇場ではない場所を使った「笑えるサスペンス」として好評を博した。今回も引き続き「笑えるサスペンス」を追求した作品になっているという。

作品ごとに新たな要素を取り入れたり、既存の演劇の枠組みにとらわれない公演を行ったりと、常にチャレンジをし続けている東京タンバリンだが、劇団員たちはその活動をどのように受け止めているのだろうか。今回は『絆されて』に出演する劇団員、森啓一朗・青海衣央里・萩原美智子に話を聞いた。
 

■観客参加型の『その前』よりもサスペンス度は上がっている?

ーー今作は、昨年の6月に上演され、お三方ともご出演された『その前』と同様に「笑えるサスペンス」を目指すということですが、やはり同じ路線の作品なのでしょうか?

森:『その前』のときよりも若干ややこしい物語になっていますね。サスペンス度はもしかしたら上がっているかもしれません。ただ、『その前』を見たお客さんの中には、結局犯人がわからなかった、という方も少なくなくて……そのあたり、今回の方が理解はしやすいんじゃないかなと思います。

青海:『その前』では観客参加型のシーンもあったんですけど、今回それは一切ないところが大きく違います。あと、『その前』はワンシチュエーションでしたが、今回はいろいろ場所が変わります。

東京タンバリン『その前』舞台写真

東京タンバリン『その前』舞台写真

森:これまでタンバリンを見たことのある方はわかると思うのですが、シーンとシーンの間の転換の見せ方も、高井さんの「こんなことをやりたい」という思いつきを何とか具現化するために毎回試行錯誤していて、そこが面白さでもあると思っています。今回も転換の見せ方にかなり頭を使っているので、楽しみにしていただければと思います。

萩原:笑えるサスペンスの「笑える」の部分についてですが、私は前回と比べると笑いの質がちょっと上質なイメージがあります。前回より大人な感じだな、といいますか。

森:みんな大人ばっかりですからね(笑)。でも確かに、笑えるかどうかは本当に我々の腕次第だな、という作品ですね。

萩原:前回は観客参加型で、客席も巻き込みながら笑える作品、という感じでしたけど、今回は会話劇なので、どこか「笑っていいのかな」という雰囲気を感じながらも思わず笑ってしまう、みたいなイメージです。

ーー確かに前回はお客さんに語りかけたりする場面もあったので現実寄りというか、距離感が近い感じがありましたが、その空気感とは違うものになりそうですね。

森:おっしゃる通り、『その前』のときはお客さんも作品の世界に入りやすい感じがあったと思うんです。今回はそういう意味では非常に「お芝居です」という感じではありますね。今回の台本が、これまでのタンバリンの台本の書き方とも少し違うところがあるような気がしていて、おかげで正直ちょっと覚えづらい部分があったりもします(笑)。

東京タンバリン『絆されて』森啓一朗

東京タンバリン『絆されて』森啓一朗

ーー今回もやはりタンバリンとしては挑戦的な作品になりそうですね。

森:毎回挑戦的な部分は少しずつあると思いますが、今回は5人で声を出して台本の読み合わせをしたときに、これまでの作品とは違う挑戦的な部分を強く感じました。いつもと違う面白さを個々に狙っていかないと結構大変な作品かもしれないな、と思ったんですよね。

青海:毎公演内容は違うけれども、必ずトライする部分はありますよね。今回は「笑ってもらう」っていうところが結構大きいかもしれないです。 マスクの中でお客さんがニヤニヤしてるぐらいのところを狙っていきたいなと思っています。

森:今回は客演に、『その前』に続いて2度目の出演になる井上薫さんと、タンバリンには初登場だけど、僕と青海と高井さんと事務所が一緒の田中博士を迎えていますので、一緒に作り上げていくのが僕らとしても楽しみです。今回の公演もそうですけど、会場の規模の小さい公演のときは特に、個々にフィーチャーされる時間が増えると思うんです。

ーー話せる範囲で構いませんので、今回それぞれどのような役なのか教えていただけますか。

森:僕と萩原が夫婦役で、田中くんは僕の古い知り合い、井上さんが田中くんの彼女の役です。それで青海さんは……誰?(笑)

青海:そこは見てのお楽しみということで(笑)。今回はみんなそれぞれ個性的で、みんないい役だなと思います。私自身、今回の役にすごくやりがいを感じているんです。今までやったことないようなキャラクターで、とにかく人の話を聞いていなくて自分の話ばっかりする人なんで、やっていて楽しいです(笑)。萩原さんの役もいい役でうらやましいですよ。詳しくは言えないんですけど、すごい面白いシーンがあるんです。

萩原:私は今回初めて夫婦の役をやるんです。そういうところも含めて、今回は挑戦しかないです。

ーー上演時間は今回も『その前』と同じく約1時間になる予定とうかがいました。

青海:でもすごい濃い1時間ですよね。

森:目まぐるしいと思いますね。

東京タンバリン『絆されて』青海衣央里

東京タンバリン『絆されて』青海衣央里


 

■劇団員が感じている、高井作品の魅力とは?

ーー今回、劇団員のお三方にお話しをうかがいたいと思ったのは、高井作品の魅力というものを実際に演じている皆さんはどう感じていらっしゃるのかをぜひお聞きしたかったんです。これまでタンバリンは、劇場ではないところでの上演だったり、「わのわ」のような和をモチーフにした企画公演だったり、過去には同時2本立て公演をされたりと、様々な挑戦をして来られました。見る側としては毎回楽しませてもらっているのですが、やっている側の皆さんにはもちろんご苦労もあったと思います。

青海:チャレンジが毎回毎回あるので……大変です。

森:一言で言うと、大変です。

青海:言葉も体もリズムも、と考えることが多くて、悩んで稽古の時間が止まってしまうこともあるんですけど、でもいつも高井さんが楽しそうに笑っているんです。だから、難しいこととか細かいことをやってるけど、とにかく楽しいっていう印象です。

森:高井さんから「こういうことをやりたいんだけど」って言われて、それに近づけるように試行錯誤してなんとか形にはなったけど、多分高井さんが思っていたものとは違うものになって、でも面白いね、みたいなことが毎回あるように感じています。「わのわ」企画のときも「茶道をやるの?」ってびっくりしましたし。でも稽古場で相談しながらやっているうちに何とか生まれたものを面白がってもらえているのかな、と思います。そうやって何とかしようと試行錯誤する時間というのは劇団として大事なことだと思うので、これからも諦めずに頑張ってやっていきたいと思います。

萩原:私は高井さんの作品と出会って、劇団員として様々な形で携わるようになってから、「女でよかったな」と思うことが増えている気がします。作品の中に女性の持つ様々な要素が散りばめられていたり、いろんな女性像が出てくるところが毎回楽しい部分で、そこに俳優として挑戦できるのは嬉しいことだなと思います。

ーー高井さんの作品を演じていて、この瞬間がたまらない、と思うのはどんなときでしょうか。

青海:ユーモアとか滑稽さとかのセンスが魅力だと思っています。例えば「わのわ」企画も、小さな会場のあの距離感で、しかも照明がないから自然光と蛍光灯だけで、センスのないことをやったら多分恥ずかしくて見ていられないと思うんです。でも、毎回お客さんが楽しそうに見てくださっている光景を見ると、やっぱり高井さんのセンス力だな、と思います。演じる側としても「やってやろう」と思う部分でもあります。

萩原:やっぱり出てくるキャラクターの書かれ方が魅力的なので、それをどうやってさらに魅力的にできるか、というところを頑張りたいといつも思っています。

森:僕がお客さんとして高井作品を見たときに、まず思ったのは言葉の面白さ、会話の面白さがあって、そこにフィジカル面の要素もたくさん入ってくるところが魅力だと思ったんです。いわゆる「現代口語演劇」に分類される作品ですが、そこに見世物としての面白さを高井さんが大事にしながら演出しているところが見ていても楽しいですし、やっていても楽しいなと思います。

東京タンバリン『絆されて』萩原美智子

東京タンバリン『絆されて』萩原美智子

ーーそれでは、今回の公演に向けて意気込みをお願いいたします。

森:では私から。「得意技を使わずに面白くする」です。

青海:はい、私は「絶対に笑えるくらい面白くなる」です。

萩原:私は先ほども言いましたが、上質でオシャレな笑いを届けたいです。

ーー皆さん「笑い」の部分への意気込みなのが、今作が一筋縄ではいかないユーモアを持った作品であることを感じさせますね(笑)。なかなか感染状況が厳しい中ではありますが、観客の皆様が「笑えるサスペンス」をひとときでも楽しんでくださることを期待しています。

森:感染予防対策は我々公演をやる側としても当たり前のこととして、万全を期して皆様をお迎えいたします。わざわざ足を運んでいただいたお客さんの日常の中に、少しでも楽しい時間を持っていただけるように努力しますので、劇場でお会いできることを楽しみにしております。

青海:大変な時期にやるということはもう重々わかった上で、今この作品をお届けしたいと強く思っています。面白い作品なのでぜひ見に来ていただきたいです。

萩原:来ていただいたからには最大限に楽しんでいただけるよう頑張っていきたいと思いますので、もし機会があってご来場いただける方はぜひよろしくお願いします。

取材・文=久田絢子

公演情報

東京タンバリン『絆されて』
<2月10日より三鷹SCOOLで予定しておりました「絆されて」は関係者に新型コロナウイルス感染者が出たため、残念ですが、中止することになりました。 ご予約のお客様には、劇団より追って、ご連絡を差し上げます。ご確認ください>
 
■日時:2022年2月10日(木)~15日(火) 
■会場:SCOOL(東京・三鷹)

 
■作・演出:高井浩子
■出演:森啓一朗、青海衣央里、萩原美智子/田中博士、井上薫
■料金:3,000円(日時指定・全席自由)
取扱い・問い合わせ:東京タンバリン http://tanbarin.sunnyday.jp
シェア / 保存先を選択