「背景に思いを巡らせる面白さは絵画も演劇も同じ」~尾上松也に聞く、舞台『怖い絵』の魅力や意気込み

2022.3.3
インタビュー
舞台

尾上松也

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名画に隠された陰謀や殺人、聖書や神話の血生臭い物語、歴史上のドラマといった背景を解説した、中野京子による美術書『怖い絵』。美術書としては異例のベストセラーとなり、2017年には東京と兵庫で展覧会を開催した。

舞台『怖い絵』は、投資家・絵画コレクターである男が復讐執行人として活躍する物語だ。歌舞伎やミュージカル、ドラマ、映画、バラエティと幅広いジャンルで活躍している尾上松也、NHK連続テレビ小説『どんど晴れ』のヒロインを務めて以来映画や舞台で活躍している比嘉愛未、『HiGH&LOW』シリーズなど人気作に出演している劇団EXILEの佐藤寛太、2.5次元を中心に様々な作品で存在感を見せている崎山つばさ、『相棒』シリーズをはじめとする人気ドラマや映画、舞台に数多く出演している実力派・寺脇康文という、そうそうたるキャストが集結している。

主演の尾上松也に、公演への意欲や『怖い絵』に関する思いを聞いた。

ーーまずは出演が決まった時の気持ちを教えてください。

(鈴木)おさむさんとは以前から何かご一緒しようとお話ししていましたので、それが叶ったという喜びが大きかったですね。ラジオでお会いして、そこから共通の友人を通じて飲みにいく機会があったりしたんです。なかなかタイミングが合わなかったのですが、ようやく形になりました。

尾上松也

ーー松也さんが演じるキャラクターはどんな役どころですか?

主人公の絵田光は、お金持ちの投資家であり絵画コレクターでもあり、絵画を通して依頼者の謎を解き、復讐を手伝う。謎に満ちたダークヒーローという感じですかね。ダークヒーローというとクールなイメージがあると思いますが、脚本を読んだところ、この作品はちょっと違う印象になりそうですので、固定概念に捉われず、おさむさんのイメージに近づけたらと思っています。

ーー今回は「絵」がテーマになっています。松也さんは普段から美術に親しんでいますか?

休みの日に美術館に行くことなどはほとんどなく、『怖い絵』という美術書も、このお話をいただいてから読みました。家に絵は飾っていますが、特定のアーティストが好きというわけではなく友人などの作品が多いんです。どちらかというと村上隆さんのような、部屋を明るくしてくれる作品が好きかなと思います。ですが、『怖い絵』に触れてからは、背景を踏まえて鑑賞するのも興味深いと思うようになりました。技術的な美しさとは別に、ストーリーを探るのは面白いですね。

ーー『怖い絵』を読んだ印象を教えてください。

淡々とした説明なのに、非常に鳥肌が立ちました。チラシに使われている『レディ・ジェーン・グレイの肖像』もそうですが、名画にはいろいろないわくがある。映画でいうと『ダ・ヴィンチ・コード』もそうですよね。とても興味をそそられます。それ以外ですと、僕が最初にインパクトを受けたのがウォルター・リチャード・シッカートの『切り裂きジャックの寝室』。家主から「ここに切り裂きジャックが住んでいた」という話を聞いてわざわざそこに引っ越して絵を描いたそうなのですが、後になって親族からシッカートが犯人だという告発があって、彼のDNAもジャックから送られてきた手紙に残っていたものと一致したらしいんですよ。確定ではないですが、本当だとしたら彼が関わっていたのは間違いないという感じがしますよね。そういったところに着目した京子さんの発想が面白いなと思います。

ーー今回演じる絵田は投資家・絵画コレクター・復讐執行人という三つの顔を持っています。今のところ考えている役作りはどのような感じでしょうか。

彼がなぜ絵画コレクターをしていて復讐を手伝っているのか、きっと理由があるはずなんです。でもまだ劇中でどう描かれるか、実は僕自身もわかっていなくて。ただ、三つの顔を持っているのはどう考えても変ですよね。まあこの作品の登場人物は全員変なのですが(笑)。僕も日頃からコレクションしているものはありますので、気持ちは分かります。普段の喋り方から、コレクションしているものの話になると急にワントーン上がったりする気持ち悪いところというか、オタク気質を持っている。好きなものに対するテンションの変化などでリアリティを出せたらと思っています。

ーー松也さんがオタク的に夢中になっているものはなんですか?

いくつかありまして、今とてもハマっているものはスニーカーとキャンドルです。スニーカーは家に200足くらいありますし、キャンドルのストックも100個以上。あと、Marvelのヒーローものとかも、話し始めたらずっと語れちゃう気がしますね。

尾上松也

ーー台本はまだ途中とのことですが、現時点まで読んで、印象はいかがですか。

とてもたくさんの絵画の紹介をしていて、説明セリフも多いですね。物語の主軸になるのは絵画で、絵画の背景を語りながら事件の真相に迫るような推理の方法。舞台上には様々な名画が飾られる予定と聞いていますし、印象に残る絵もたくさん出てくると思います。

ーー鈴木さんと一緒に何かやりたいと思ったきっかけは。

おさむさんも変った方ですし、もはやメインの職業がよく分からなくて面白い存在。放送作家なのかプロデューサーなのか、演出家なのかタレントなのか、ただの大島(美幸)さんの旦那さんなのか(笑)。多才すぎて職業不定ですよね。僕がおさむさんの好きなところは、常に楽しいことや面白いことを探り出そうとしている姿勢。ジャンルを問わず色々なところに目を向けていらっしゃるのは尊敬できますし、一緒にものを作って、おさむさんから生まれる発想を近くで見てみたいという感覚になりました。

ーー松也さんから見たら鈴木さん作品の魅力はどこでしょう。

最近のドラマなどを拝見しても、いい意味でのオカルト感がありますよね。世界観の作り方も個性的だと感じます。まだ脚本は途中なのですが、僕がこの題材で想像するものはなく、全く行きつかないところにお芝居やセリフが飛んでいく部分がいくつもある。その発想力は唯一無二のものがあると感じています。

ーー絵の背景を知ることで絵の印象が変わるという話がありました。演技に関しても、深読みするのが好きなファンの方は多いと思います。『怖い絵』の鑑賞を通してファン心理が理解できたということもありますか?

元々お芝居って、登場人物の生い立ちから生涯まで全てを描くことはほぼなくて、基本的には長い人生の一部を切り取っていますよね。描かれていない箇所は演者が想像することになる。見る側も演じる側もどれだけ背景を想像できるかが演劇の面白さで醍醐味だと僕は感じています。演じる側がこう思ったから見る側もこう思う、とはなりませんが、見えない部分を深読みするのは演劇的な要素があると感じたので、『怖い絵』の捉え方には共感できる部分があります。ですが、僕がドラマで演じている変な顔に関してはノリで、深いことはひとつも考えていません(笑)。ですが、もちろん効果的な見せ方やお役のことを考えながらやってはいるので、見た方がそこまで考察してくださったりするのは面白いですしやりがいを感じますね。

ーーファンの方から、思いがけない反応をされる場合もあると思うんですが。

そうですね。そういう意味では、僕はSNSというものが向いていないと感じます。自分が面白いとは思っていなかったものが後にすごくウケて拡散されたりしていて、その最たるが『大きなイチモツをください』。友人達から「バズってるね」とYouTubeやTikTokが送られてきました。もちろん真剣にやりましたが、僕は反対派だったんです(笑)。恥ずかしいからではなく、いろいろな方が散々なさっているので、せっかくどぶろっくさんとご一緒させていただくなら違うことがいいと……。内心、絶対スベると思っていました。ですので、本当に分からないものだなと感じました。

尾上松也

ーーカンパニーを率いる座長として心がけていることはありますか?

ドラマや映画、歌舞伎でもそうなのですが、僕が主演をさせていただくときには、作品がシリアスであっても出演者とスタッフが楽しめる現場を作ろうと思っています。もちろん色々なやり方があり、どれが正解ということもありませんが、僕の中ではそれが最優先。それを見て僕自身も楽しいと思えるのが重要ですので雰囲気作りを大切にしています。色々な先輩方などを見てきた中で、主演というのは役を務めあげることにプラスして現場の雰囲気を作る責任もあると思います。ですので、演出家がキレない程度にふざけます(笑)。嫌がる方もいらっしゃるかもしれないので空気は読みつつ臨機応変に。まずはスタッフ、出演者がひとつのチームになり、いい作品を作ることを最優先に考えています。

ーー皆さん初共演ですが、印象や楽しみなことは。

寺脇さんの舞台は何度も拝見しているのですが、こうやってご一緒させていただけるとは思っていませんでしたのでとても楽しみです。比嘉さんも僕の周りの友人たちとよく共演されていて、拝見していたので楽しみです。今回は出演者で唯一の女性ですから肩身の狭い思いをさせたくないですね。崎山さんは、2.5次元舞台で活躍されていますよね。僕は時折2.5次元舞台も観ていて、とても表現力のある方だと思っていましたので、ご一緒できるのは嬉しいです。佐藤さんはまだお若くて、今後がすごく楽しみな方。この舞台に出たことがご自身にとって良い経験になるように、一緒にいいものを作れたらと思っています。

ーー2.5次元舞台を観られるというのは意外です。

歌舞伎も漫画原作のものなどがありますし、色々な技術を用いて新作を作ることもありますので。2.5次元の舞台って、最新技術を使いつつ急にアナログな表現をしたりする。そこからヒントを得ることもあります。

ーー改めて、舞台に立つことについての思いを教えてください。

やはり僕は基本的に舞台人ですので、お客様の前で何かを披露することに一番幸せを感じます。どんな状況でも、舞台に立てるということは自分の中では一番充実した時間。舞台に立てない時間が急に増えたからこそ実感しますね。

いろいろなことを考慮して公演を中止せざるを得ないというのも分かるのですが、僕個人としては可能な限り演劇自体は止めるべきではないかなという風に思っています。今よりも苦労の多い時代を生きてきた先祖・先輩たちが演劇を紡いできてくださった結果で今がある。最近はテクノロジーの進化で劇場に観に行かなくても観たような気分になれたりします。僕らもそういう時代に対応した見せ方を試みなければなりませんが、諦めずに残していくべきだと思っています。

尾上松也

本作は2022年3月4日(金)~21日(月・祝)まで東京公演、3月24日(木)~27日(日)まで大阪公演が行われる。

取材・文=吉田沙奈   撮影=池上夢貢

公演情報

舞台『怖い絵』
<東京公演>
日程:2022年3月4日(金)~3月21日(月・祝)全20公演
会場:よみうり大手町ホール
入場料金:11,000円(全席指定・税込)
 
<大阪公演>
日程:2022年3月24日(木)~3月27日(日)全5公演
会場:COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール
入場料金:11,000円(全席指定・税込)
 
作・演出:鈴木おさむ
監修:中野京子
出演:尾上松也 比嘉愛未 佐藤寛太 崎山つばさ 寺脇康文

企画・製作:関西テレビ放送
 
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