高杉真宙、“ドキュメンタリー”のような二人芝居『ライフ・イン・ザ・シアター』に挑む心境を語る
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高杉真宙
ベテラン俳優と若手俳優。楽屋で、舞台で、さまざまなやりとりを交わす二人の関係は、時が経つにつれて次第に変化を遂げてゆき——。現代アメリカを代表する劇作家であるデヴィッド・マメットが1977年に発表した『ライフ・イン・ザ・シアター』は、役者同士のぶつかり合いが観られる充実の二人芝居として世界中で愛されてきた。このたびの上演で演出を担当するのは千葉哲也。勝村政信が演じるベテラン俳優ロバートを相手に、若手俳優ジョンに挑む高杉真宙に意気込みを聞いた。
ーーお稽古はいかが進行中ですか。
もう粗通しに入っていて、もうすぐ始まるのかなという気持ちになってきました。まだ本番までは時間があるので、何とか、何とかやっていきたいなと思っていますが、時間が足りないなってちょっと思います。いくらやっても落ち着かないというか、時間が足りないという感覚があります。やっぱり、どう頑張っても緊張をぬぐえないというか。セリフももちろんそうなんですが、舞台に参加させていただくとき、毎回、自分のできないこと、だめだなと思う部分ばかりしっかりと現れるというか。表現的なことが課題というか。今回参加させていただくことになったというのは、皆さんが自分に期待をもってくださっているからだと思うのですが、その期待に、自分のできる中でどれくらい応えられるのか、自分にできるのか、そんなことを毎回思いながらやっているところはあります。舞台をやるときは特にそうですね。
高杉真宙
ーーそれでも舞台に何回も立たれています。
どう言ったらいいかわかりませんが、リセットされるんです、舞台って。これまでやってきたこと、舞台に限らず映画でもドラマでも、その中でやってきたことが何か、舞台に入ると毎回リセットされるというか。ホントに、何やってるんだよと思いながら毎回やってます。ホントだめだなと思いながら。もっと何かできたらいいなとか、できるだろうと思いながらやっているところがあって。
ーーなぜ舞台だとリセットされてしまうのでしょうか。
何かがそうさせるのかなと思いますけど。不思議ですね、マジで。でも何か、それがおもしろいんです。毎回学ぶ機会があるというか。だからこそまた舞台をやりたいとずっと思える。舞台に出演するたびに、学んだことを活用しようと思って……だけど現場に入ると全然できなくて、本当に下手くそだなと思いながら毎回、稽古期間頑張るんです、そのくりかえしばかりで。ただ、納得できないからやっているところはあると思います。僕、めちゃくちゃ、図太さが半端ないんです。だから、めげずにできるといえばできるんですけど。毎回おもしろく舞台をやっていますね。
ーー今回挑戦されるのは『ライフ・イン・ザ・シアター』、まさに劇場での人生を描く作品です。
すごくドキュメンタリーだなと思います。舞台で行なわれていること、稽古でやっていること、休憩時間にやっていること、自分が実際にやっていることとさほど変わりがないというか。だから不思議な感じはしますけど。それが舞台上でできたらいいんだろうなと感じてはいますが、難しいなあって。ずっと千葉さんや勝村さんからもそういうお話をお聞きしてやっているんですが……。無意識にしていることを意識的にできるようになるというのが、まさに今回の目標かなと思います。
高杉真宙
ーー深くて難しいですね。
いやもう本当にそうですよね。俳優ってそういう職業だということは感じてはいたんですが、そうやって言葉で表現されると、まさにそうだよなと理解ができるというか。その言葉が聞けただけで、僕は今回の舞台に出られてすごくよかったなと思いますね。
ーー演出の千葉さんはご自身も俳優でいらっしゃいますが、その意味で、これまで経験してきた現場との違いを感じたりされますか。
そうですね、やっぱりたくさん感じます。今回、出演が決まったときに、スタッフさんや取材をしてくださった方とか、いろいろな方たちから、「千葉さんとやるんだ、いいね」と言われたんです。若手の役者が一緒にやる中で一番お勧めしたい人、という風にも聞いていて。早くご一緒したいな、どんな方なんだろうと思っていて、稽古に入ったら、現場の作り方が他の方たちとは違うなと感じました。枠内ですごく自由にさせてくれるというか、その中で、違ったこと、こんなことをやってみようとか、的確におっしゃってくださって、その上で、もっとわかりやすくするためにたとえ話をしてくださったり。説明をしてくださるのはやっぱりありがたいですし、素敵だなと思います。
ーー現場作りの違いとは?
ピリついた現場にはしたくないと最初にお会いしたときにおっしゃっていて、その感覚って役者さんをされているからこそだと思うんです。そういうところから違うなという印象はありました。緊張しない、リラックスとずっと言ってくださっていて。僕、緊張するんですよ(笑)。
高杉真宙
ーー今回、勝村さんとがっぷり二人でお芝居されます。
いやあ、本当に素敵ですね。自分にとっては本当に大先輩ですし、こうやって二人芝居をご一緒してくださること自体が本当に光栄だなと思います。勝村さんが経験されてきたことを惜しげもなく教えてくださることがありがたいです。そのありがたいという言葉だけでは足りないですけれど……。僕はまだ、経験してきたことを誰かに伝えるという経験がないので、そのあたりの感覚がまだ少しよくわかっていないところがあるんです。だけど自分がこれからもっともっと俳優をやっていく上で絶対に残しておかなくてはいけない言葉というものを、勝村さんと千葉さんから受け取って学んでいきたいなと思っています。
ーー勝村さんからは、言葉を受け取ったり、演技の中から受け取ったり?
演技でももちろん教えてくださいます。見せてくださるというか、そこから学んでいます。そういうものだと思うんですよね、基本的には。僕は、これまで生きてきた中で、説明するということがあまりなかったから。これは僕の人間的な問題になってくるんですけれど(苦笑)、僕はあまり積極的に、そこまで教えよう、教えたいなと思うような人間としては生きてこなかったんです。きっと僕に教えてくださる先輩とか、たくさんいらっしゃったと思うんですが……。今回、こうやって勝村さんは言葉で伝えて、わかりやすく真摯に教えてくださる。そのことの、自分にとっての大切さとか幸せを感じています。
高杉真宙
ーー勝村さんのどんなどころが素敵ですか。
何から何までかっこいいんです。さらっとかっこいいですね。それが、格好つけたかっこよさじゃなくて、勝村さんがそのままでいる勝村さんだからこそのかっこよさというのが、すごく魅力的だなと思います。それはご自身の、生きてきたすべてが重なって出るかっこよさだともちろん思うんですけど。人としてのかっこよさっていうのはやっぱり感じますね。僕……めちゃくちゃ薄っぺらく聞こえそうなんですが、中身も身体も本当にかっこよくなりたいなと思っていて(笑)。本当にもっと熱い人間になりたいと、ここ2、3年かな、ものすごく思っていて。心も、身体も、そうありたくて……それは、やっぱり、人としてのかっこよさなんだろうなと思うんです。自分がどうありたいかとか、あまり明確にできていませんが、ふわっとはあるんです。ですが、それに向かっていく上で、人生あと何十年しかないと考えると、時間が足りないなと思うこともあって……。それに向かって生きていくことが、もちろん、途中で変わっていくかもしれませんが、もっと目標に向かって明確化していく、ちゃんと行動に移すようにしないとなと。あと、何か、気づくことって重要ですよね。最近すごくそう思っていて。注意深く何かを見つけていけたらいいなと思っています。
ーーその上で具体的に心がけていることは?
何でしょうね。ルール作りがけっこう必要ですね、やっぱり。自分のだめなところを直せるようなルール作りというか。本当に簡単なことだったら、例えば、帰ったらすぐにお風呂に入るとか(笑)。そういう、だらけた生活をしないために、なりたい自分になるために、一つひとつのルール作り、ルールの毎日を強制していくというんですかね、自分に。ただ、人としての熱さって、たぶんそういうところでもないんですよね。本当にどうやったらそうなれるかというのは、いろいろな人を見て、そしてその人のいいところを見つけて、真似していく、それだけでもたぶん変わっていくってありますから。そういうところからなのかなって思ってはいます。
ーー作品の魅力についてはいかがですか。
二人の関係性の変化と、生きていく上で、ロバートがジョンで、ジョンがロバートというか、ずっとその歴史がくりかえしていく感覚というか、そういうところにすごく魅力を感じました。その歴史自体は、歴史をくりかえすという意味においては、必ずしも役者同士の話だけではないなと思うんです。そんな感じがしています。だからこそ、いろいろな人が共感してきた、素晴らしい作品になるんじゃないかなと思います。
高杉真宙
取材・文=藤本真由(舞台評論家) 撮影=iwa
公演情報
●CAST
ロバート:勝村政信
ジョン:高杉真宙
●STAFF
脚本:デヴィッド・マメット
翻訳:小田島恒志
演出:千葉哲也
【日時/会場】
■東京公演:2022年3月3日(木)~3月13日(日) 新国立劇場 小劇場
全席指定 8,500円(税込)
■大阪公演:2022年3月19日(土)~21日(月・祝) サンケイホールブリーゼ
全席指定 8,500円(税込)
■広島公演:2022年3月24日(木) 広島 JMSアステールプラザ大ホール
全席指定 8,000円(税込)
U25
■福岡公演:2022年3月26日(土)・27日(日) 久留米シティプラザ ザ・グランドホール
全席指定 8,000円(税込)
U25
■札幌公演:2022年4月2日(土)・3日(日) 道新ホール
全席指定 8,500円(税込)
■金沢公演:2022年4月10日(日) 北國新聞 赤羽ホール
全席指定 8,500円(税込)
【
【お問合せ】
東京:公演事務局 https://supportform.jp/event (平日 10:00~17:00)
大阪:キョードーインフォメーション:0570-200-888(月~土 11:00~16:00 ※日・祝 休業)
広島:キャンディープロモーション 082-249-8334(平日11:00~15:00)
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札幌:
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