味方良介がつかこうへい十三回忌で再び名物部長刑事に 『「新・熱海殺人事件」ラストスプリング』会見&フォトコールレポート
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(左から)一色洋平、新内眞衣、味方良介、高橋龍輝
つかこうへいが1973年に発表した『熱海殺人事件』。最年少で岸田戯曲賞を受賞して再演を重ね、プロアマ問わず推定累計8,500ステージと日本の演劇史上最も上演され、映画化もされている作品だ。つかこうへい十三回忌にあたり『「新・熱海殺人事件」ラストスプリング』として新たな息吹が吹き込まれる。“東京警視庁にその人あり”と言われる木村伝兵衛部長刑事を演じるのは、2017年〜2021年で同役を演じた味方良介。ヒロインの水野朋子婦人警官は元乃木坂46の新内眞衣、熊田留吉刑事は高橋龍輝。そして大山金太郎を一色洋平が演じる。演出は、つかこうへいの没後2011年から12年にわたって紀伊國屋ホールでの『熱海殺人事件』をプロデュースし続けている岡村俊一。実力と実績を兼ね備えたキャスト・スタッフ陣が、今年の『熱海殺人事件』を作り上げる。
フォトコールと会見に先駆け、北区つかこうへい劇団の12期生・久保田創より「1973年に書き下ろされましたこの作品も、今年で49年目。紀伊國屋ホールを拠点に繰り返し上映され、東京の春の風物詩と呼ばれるまでになりました。2005年、私が北区つかこうへい劇団に入団した春、熱海の演出をされていたつかさんが「今やってるものと同じものをお前たちもやってみろ」と台本をくださったんです。それが私にとって全ての始まりでした。つかさんは稽古をしていると「稽古は楽しいか? 本番はもっと楽しいからよ」と言っていました。十三回忌となる今年、こうして紀伊國屋ホールで『熱海殺人事件』を上演できることをとても嬉しく思います。これから先も、皆様一人ひとりの心にこの作品が届き続けることを祈っております」と挨拶が寄せられた。
久保田創
キャスト陣の会見では本作に対する意気込みを尋ねられ、味方良介から「意気込みとしては、見ていただいた通りです」と、会見前に行われたフォトコールへの手ごたえを感じさせるコメント。新内眞衣は「久々なので緊張していますが、精一杯頑張ろうと思います」と気を引き締め、高橋龍輝は「念願の『熱海殺人事件』に出演できて嬉しいです」と笑顔に。一色洋平は「4日間という短い公演ですが、幻の熱海と言ってもらえるように頑張ります」と意欲を語った。
木村伝兵衛を演じ続けている味方に、キャラクターの魅力とつかこうへい十三回忌に関する意気込みについて質問が出ると、「今回が5回目ですが、毎回他のキャストさんが変わるので演じる感覚も変わります。木村伝兵衛はみんなに持ち上げられて生きている存在だと感じます。僕一人の力ではできない、キャストと全てのスタッフさんがいて続いている作品です。十三回忌の公演を任されたのは本当に嬉しいこと。僕はつかさんにお会いしたことがないのでそこは悔しいですが、それをバネにして演じることを届けられたら」と思いを語る。
また、改修を終えた紀伊國屋ホールの印象を聞かれ、高橋が「僕は7~8年ぶりに紀伊國屋ホールに立ちました。『熱海殺人事件』を何度も観て出演したいと思っていたこともあり、今回は本当に嬉しいです。この作品を通して生きる素晴らしさを伝えたい」と話す。味方が「改修を終えて初めて立ちましたが、見える景色が全部変わり、新しくなったなと感じています。一番は響きですね。声の出しがいがあります」と語ると、司会から「若干ボケてますか?」と質問がとび、味方は「伝わりませんでした(笑)」と肩を落とす。新内は「壁の模様などは何ひとつ変わっていなくて安心しました(笑)。これまで歴史を積み重ねてきた劇場に、自分も名前を刻めるように頑張りたいです」と味方のボケにフォローを入れる。一色も「僕もそんなに変わっていない印象です。見やすさなどはアップしつつ、変わってほしくない部分は全部そのままなのが嬉しいですね」と語り、それぞれに伝統ある劇場への愛情を語ってくれた。
※以下、舞台写真あり
まずはお馴染みの「白鳥の湖」が流れ、味方演じる木村伝兵衛部長刑事が電話に向かって叫ぶシーンからスタート。今回が5回目となる味方は、全力ながらもどこか落ち着きを感じさせる堂々とした演じっぷり。風格を感じさせる舞台セットやタキシード姿というビジュアルの強さに負けない存在感を放っていた。矢継ぎ早に繰り出される膨大な台詞も自分のものにし、奔放だが威厳ある木村を魅力的に見せている。
『「新・熱海殺人事件」 ラストスプリング』舞台写真
『「新・熱海殺人事件」 ラストスプリング』舞台写真
『「新・熱海殺人事件」 ラストスプリング』舞台写真
富山から出てきた熊田刑事役の高橋も、味方に負けない熱量と勢い。自らの境遇への恨みや出世への執心といった泥臭さも感じられるものの、風変わりな木村や水野に振り回される姿は可愛らしく応援したくなってしまう。激昂しながらの台詞も聞き取りやすく、流れるように話す木村との対比によって双方の魅力が際立っていると感じた。
『「新・熱海殺人事件」 ラストスプリング』舞台写真
『「新・熱海殺人事件」 ラストスプリング』舞台写真
紅一点で木村の愛人の婦人警官・水野を演じる新内は、凛とした刑事の顔と木村への恋心が表に出た乙女の顔のギャップが見応え抜群。非常に可愛らしいと同時に、熊田との言い争いや木村との駆け引きから強さも見え、ヒロインらしい華と存在感を見せている。
『「新・熱海殺人事件」 ラストスプリング』舞台写真
『「新・熱海殺人事件」 ラストスプリング』舞台写真
そして、犯人・大山金太郎の一色洋平は鮮やかなオレンジ色のツナギにサングラスという出立ちで登場。歌いながら通路を練り歩き、観客にバラの花を渡すなど、客席を巻き込んで盛り上げる。刑事たちに弄られたことで軽薄そうな雰囲気から田舎で生まれ育った素朴な素顔に戻るのだが、その変化も魅力的だった。
『「新・熱海殺人事件」 ラストスプリング』舞台写真
『「新・熱海殺人事件」 ラストスプリング』舞台写真
昭和の雰囲気が色濃く出ているセットや衣裳、それを引き立てる照明、怒涛の台詞回しに、全員が強烈な個性を放つキャラクター、作中で繰り広げられるダンス、時折挟まれるメタネタなど、圧倒的なパワーと勢いを持つ本作。フォトコールで披露されたのは冒頭30分ほどながら、全力で役と作品に向き合うキャスト陣の熱演のおかげで『熱海殺人事件』の世界にどっぷり浸かることができた。
『「新・熱海殺人事件」 ラストスプリング』舞台写真
『「新・熱海殺人事件」 ラストスプリング』舞台写真
『「新・熱海殺人事件」 ラストスプリング』舞台写真
本作は3月31日(木)より4月3日(日)まで、紀伊國屋ホールにて上演される。
取材・文・撮影=吉田沙奈
公演情報
『「新・熱海殺人事件」ラストスプリング』
■日程:2022年3月31日(木)~4月3日(日)
■会場:紀伊國屋ホール
■作:つかこうへい
■演出:岡村俊一
■出演:
味方良介 新内眞衣 高橋龍輝 一色洋平
■料金:8,500円(税込/全席指定)
※未就学児童入場不可
提携:紀伊國屋書店 協力:ゴーチ・ブラザーズ 制作:つかこうへい事務所
企画・製作・主催:アール・ユー・ピー