エゴ・サーチをきっかけに明らかになる「謎」と「想い」~鴻上尚史作・演出 舞台『エゴ・サーチ』ゲネプロレポート

レポート
舞台
2022.4.10
舞台『エゴ・サーチ』舞台写真  (C)引地信彦

舞台『エゴ・サーチ』舞台写真  (C)引地信彦

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2022年4月10日(日)~4月24日(日)に東京・紀伊國屋ホール、4月30日(土)〜5月1日(日)大阪・サンケイホールブリーゼにて、舞台『エゴ・サーチ』が上演される。

本作は鴻上尚史の作・演出により2010年に初演された。2013年の再演を経て、今回は今江大地(関西ジャニーズJr.)、結木滉星、吉田美月喜、南沢奈央ら新たなキャストを迎えての3回目の上演となる。

初日に先立ち、ゲネプロが行われた。その様子をお伝えする。

 (C)引地信彦

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筆がなかなか進まない新人小説家の一色(今江)が、担当編集者の夏川(南沢)から一色と同じ名前と同じ経歴を持つ人間のツイッターとブログの存在を教えられ、その人間とコンタクトを取ろうとすることから物語は動き出す。夏川に近づいてくる言葉巧みなカメラマン(結木)や、一色の小説に登場する沖縄の離島を訪れた女性(吉田)、その女性が離島で出会うキジムナー(村上航)など謎めいた人物たちが次々に登場し、話が進むにつれ一見何の接点もないと思われる人物同士が徐々につながっていく。終盤で謎が解き明かされたとき、インターネットと小説と現実が交じり合い、そこに真実が浮かび上がる。

 (C)引地信彦

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タイトルとなっている「エゴ・サーチ」とは、インターネット上で自分の名前などを検索することを指す。一般的には、エゴ・サーチをすることで自身に対する悪口や誹謗中傷を発見してしまう恐れがあるし、エゴ・サーチをするのは自意識過剰だと思われるなど、あまりよい印象のない言葉だろう。

 (C)引地信彦

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本作はいくつかの物語が同時進行していくが、その中にはリベンジポルノの被害者や、インターネットを金の力で利用して有名になろうとする人間が登場する。相手の顔が見えないインターネットでは、情報が凄まじいスピードで消費されていく中で、情報化されてしまった人間の人権や感情は軽視されがちだ。コンテンツとして扱われ消費される人間が本当に抱えている思いなど消費する側には関係ないという風潮がどうしてもある。逆にそこを利用して、消費者側をコントロールするように仕向ける者も現れるわけだが、それはビジネスの新しい形でもあり、消費者側の判断力が問われるところでもあることを、鴻上はアイロニーを交えながら観客に投げかける。

 (C)引地信彦

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そういった社会的な問題を包括しながらも、劇中で編集者の夏川が一色の小説に求めるものとして何度も口にする「事件と恋愛」が本作の主軸となり、ミステリー要素と恋愛の切なさが盛り込まれたエンターテインメントとして楽しめる作品となっている。今江、結木、吉田が演じる3人を中心に、それぞれが抱える「謎」と「想い」が鴻上作品らしいテンポの良さで展開していく。

 (C)引地信彦

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今江はインターネット上にいるもう一人の自分を探す一色のまっすぐさと熱意を瞳に宿し、主人公として観客の目線をけん引する役割を担う。ダンスシーンでの弾けるような輝きが印象的な分、演じるときのまっすぐすぎる表現が時に固さに映ることもあり、本番の舞台ではあと一歩突き抜けることを期待したい。

 (C)引地信彦

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結木は持ち前の軽やかさと華やかさを生かして、どこか憎めないがつかみどころのないカメラマンを演じている。内に秘めた謎の部分をもっと翳りとして出すことができれば、より役柄のコントラストが見えてくるだろう。吉田は物語の重要なカギを握る役を力強くものびやかに演じて、舞台上に広がりを持たせている。舞台経験豊富な南沢や村上が、確かな存在感としなやかな演技力で舞台を支えている。

本作はエゴ・サーチを起点に、現実とインターネットの乖離と融合の両面を描き出すことで、消費社会への批判をのぞかせながらも、そこに希望や温かさもあることを感じさせる。初演と再演から時を経て、インターネットの功罪がより広く認知されるようになった今、本作を初めて見る人にも既に見たことがある人にも、新たな気づきのある作品になるはずだ。一色が自分と同じ名前の人物を追いかけることでたどり着いた真実とは何なのか。ぜひ劇場で確かめてほしい。

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今江大地(関西ジャニーズJr.) コメント

舞台エゴ・サーチ』で一色健治を演じます、今江大地です。とても素敵なキャストの方々に囲まれて、日々助け合いながら稽古に臨んでいます。
無事に舞台の幕が上がり、全ての公演が行えるよう感染対策をしっかり行いながら、最後まで走り抜けたいと思います。
カンパニー一同で協力し、来てよかったと思ってもらえる時間にします!
一人でも多くの方に観ていただきたい作品ですので、皆様のご来場を劇場にて心よりお待ちしております。

結木滉星 コメント

本番まで鴻上さんをはじめとするエゴ・サーチ』カンパニー全員で、本当に大切にこの作品を創ってきました。一人一人が意識を高く持ち、皆様にお届けできる水準まで持ってこられたと思っています。そしてやっと、皆様の前でお芝居できること、凄く楽しみで仕方ありません。このキャストだから表現できる舞台エゴ・サーチ』の世界観がここにあります。是非エゴ・サーチ』の世界に浸ってほしいと思っています。最後まで全員で全力で駆け抜けたいと思います。お待ちしております。

吉田美月喜 コメント

今回、舞台に初めて挑戦するのでかなり緊張もあったのですが、稽古で何度も練習していく中で少しずつ緊張もほぐれて、毎日楽しく沢山のことを学びながら演技させていただいています。
この作品で美保が経験する困難や壁に一緒に向き合っていると、大変で辛く思うことも多いですが、キャスト、スタッフの皆さん、そして鴻上さんの言葉にとても助けられているなと感じています。
舞台エゴ・サーチ』は、出てくるキャラクター1人1人全員が負けない強い思いや力を持っていると私は思います。それが作品全体を通して、とても大きなエネルギーとなっている舞台です。
皆さんに楽しんで頂けるように、全身全霊を尽くして美保を演じたいと思います。是非劇場でお待ちしております!

南沢奈央 コメント

約一ヶ月、刺激的で充実した稽古の日々でした。良い感じに作品の深みが増してきたところです。幕が開けてお客様に観てもらうことで、さらに変化していくと思うので、ここからまた楽しみです。今回のエゴ・サーチ』も、鴻上さん作・演出ならではのテンポの良さ、セリフの面白さで、ぐいぐい物語に引き込まれていくと思います。笑いながら、最後には胸が熱くなるような作品になっていますので、ぜひ色んなものを生で感じ取っていただきたいです。劇場でお待ちしています!

作・演出:鴻上尚史 コメント

いよいよ開幕しました。俳優一人一人が頑張って、とても素敵な作品になったと思います。ぜひ、一人でも多くの人に2022年版の新しいエゴ・サーチ』を見ていただけたらと思います。ネット上にもう一人の自分を見つける、愛と記憶と謎の物語。ご期待下さい。

取材・文=久田絢子

公演情報

『エゴ・サーチ』
 
作・演出:鴻上尚史
出演:今江大地(関西ジャニーズJr) 結木滉星 吉田美月喜 南沢奈央/
村上航 渡辺芳博 阿久澤菜々 佐藤修作 古木将也 木村友美
 
【東京公演】
日程:2022年4月10日(日)~24日(日)
会場:紀伊國屋ホール
 
東京公演・お問合せ:サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(平日12:00-15:00)
 
【大阪公演】
日程:2022年4月30日(土)〜5月1日(日)
会場:サンケイホールブリーゼ
 
大阪公演・お問合せ:キョードーインフォメーション 0570-200-888(11:00-16:00/日・祝休業)
 
代:8,800円(税込/全席指定)
一般発売:2022年4月2日(土)AM10:00~
Twitter:@egosearch_2022
 
制作協力:サードステージ
主催・企画・製作:プラグマックス&エンタテインメント サンライズプロモーション東京
 
公式サイト https://egosearch.srptokyo.com/
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