[Alexandros]川上洋平、カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作『TITANE チタン』について語る【映画連載:ポップコーン、バター多めで PART2】
撮影=河本悠貴 ヘア&メイク=坂手マキ(vicca)
大の映画好きとして知られる[Alexandros]のボーカル&ギター川上洋平の映画連載「ポップコーン、バター多めで PART2」。今回は、『RAW~少女のめざめ~』で鮮烈なデビューを飾ったジュリア・デュクルノー監督の長編二作目にして第74回カンヌ国際映画祭で最高賞であるパルムドールを受賞した衝撃作『TITANE チタン』について語ります。
『TITANE チタン』
俺は好きでした。塚本晋也監督の『鉄男』を感じたんですけど、ネットを見るとそう思った人も結構いるみたいですね。おもしろいと思ったところは色々あるんですけど、まず展開が全然読めなくて。父と息子の愛なのか、父と娘の愛なのか、他人同士の愛なのか、ジェンダーを超えたわけわかんなさがあるんですけど、ラブストーリーなんだろうなと。
――監督も、「最終的にラブストーリーに思える映画にしたかった。もっと厳密に言うと、愛の誕生のストーリーを描きたかった」と話してます。
うん。それは伝わりましたね。『ソウ』とか『ムカデ人間』系の気持ち悪そうな痛さを求めている人にすごくハマる映画だと思うし、そこを抜きにしても一本の映画としておもしろい映画だと思います。グロいのが苦手な人にも観てほしいなと思います。変態監督が撮った変態の弱さを生々しく描いたド変態連続殺人系映画っていうか(笑)。とにかく観てほしいなと思いました。
『TITANE チタン』より
■主人公からは最終的に愛に飢えていたんだなっていうことが伝わってきた
──主役のアレクシア役のアガト・ルセルはキャスティング・ディレクターがInstagramで発掘した新人で今回が長編映画デビュー作だと。俳優の他に、モデル、ジャーナリスト、 写真家としても活動していて、過去にはフェミニスト雑誌の編集長を務めた経験もあるそうです。
すごい存在感でしたよね。『ドラゴン・タトゥーの女』のルーニー・マーラを思い起こさせるところもありますけど、もっと破滅型の主人公でした。パンクというかアナーキーというか。最初「かっこいいな」って思って観てたんだけど、だんだん不気味さの方が増していった。最初は、交通事故に遭ってチタンを埋め込まれたことで車と融合するみたいな。要するに機械に近くなって人間らしさを失ったように見えるんだけど、 最終的には愛に飢えていたんだなっていうことが伝わってきて、生き物的な感じが出ていく。そうやってアレクシアが生き物らしさを取り戻していく様が描かれているところもあるんだけど、そのやり方がすごく乱暴でもあって。殺人を犯して指名手配されているから、行方不明になっている消防士の息子の振りをして父親に匿ってもらうっていう設定がめちゃくちゃですごいなと思いました(笑)。自分の鼻をぶち折って、顔を変えて男になりきるなんて破滅型だなと。その消防士の父親が典型的なマチズモなタイプで。その部分を際立たせたくて消防士っていう職業にしたんだと思うんですけど、それでアレクシアも消防士見習いとしてマチズモな世界に飛び込むっていうね。
『TITANE チタン』より
■カルト映画になる要素はあるんだけど、一貫したメッセージ性が貫かれている
カルト映画になる要素はあるんだけど、アナーキーな映画で終わるんじゃなくて、最後すごく救われた感じがしました。「あー、なるほどな」っていう終わり方で。そこがこの映画が評価されているひとつのポイントでもあると思います。展開は全然予想できないんだけど、一貫したメッセージ性が貫かれていて。アレクシアがそれを全うするために成長していく様が感じられた。
序盤でアレクシアがモーターショーでダンスするシーンがあるんだけど、炎の柄の車がめっちゃかっこよくて。メインビジュアルもお洒落ですけど、いちいち絵になるショットが多かったです。カメラマンさんの働きも素晴らしいと思いました。お洒落なカフェのトイレとかにポスターが飾られるような映画のひとつにもなる気がします。
──今作のプロデューサーはカワカミー賞の2021年ベスト作品賞にも選ばれた『ビバリウム』も手掛けたフィリップ・ロジーで、他に『神様メール』や『わたしは、ダニエル・ブレイク』や『皮膚を売った男』も手掛けている方です。
全部好きな作品ですね。映画のプロデューサーの仕事って、お金を調達するだけじゃなくいろんなことをやっていて、やり方は人によって違うと思うんですけど、「こういうことやったらいいんじゃないかな」とかちょっと提案する感じのはやってみたいですね(笑)。絶対おもしろい映画になると思う。別にギャラとかそんなにいらないんで。
『TITANE チタン』より
■直感的に映像を感じる映画としても楽しめる
ジェンダーの問題をはらんだ映画がここ数年本当に増えましたよね。それが含まれてないといけないのかなぐらいの感じで。今はそういった問題提起をしなければいけない状況だから盛り込んでるところもあるんだと思いますけど、そうじゃなくなった時が新しい時代だと思います。バランス良く入っている映画もあれば、わざとらしく入れる映画もあって映画の本来の目的を損なってる気がするから、そこは無理に入れずにポリコレなしで良いじゃんって思ったりします。『TITANE』はちゃんと必然性があるし、観た人それぞれが考察するような映画でもあると思うんですけど、そういうこと考えずに直感的に映像を感じる映画としても楽しめると思うんですよね。あと、そんなによくわかんない映画でもないと思うから、普通におすすめできる。(庄村)聡泰は絶対好きだと思うので、いち早くおすすめしたかった映画ですね。あと、主演のアガト・ルセルさんのInstagramが恐ろしいぐらいかっこいいので是非チェックしてほしいです(笑)。
取材・文=小松香里
※本連載や取り上げている作品についての感想等を是非spice_info@eplus.co.jp へお送りください。川上洋平さん共々お待ちしています!
上映情報
監督:ジュリア・デュクルノー/出演:ヴァンサン・ランドン、アガト・ルセル
あらすじ:幼い頃、交通事故により頭蓋骨にチタンプレートが埋め込まれたアレクシア。それ以来、車に対し異常な執着心を抱き、危険な衝動に駆られるようになる。自らの犯した罪により行き場を失ったある日、消防士のヴィンセントと出会う。10 年前に息子が行方不明となり、今は独りで生きる彼に引き取られ、ふたりは奇妙な共同生活を始める。だが、アレクシアは自らの体にある重大な秘密を抱えていた──。
新宿バルト9他全国公開中
© KAZAK PRODUCTIONS – FRAKAS PRODUCTIONS – ARTE FRANCE CINEMA – VOO 2020
アーティストプロフィール
ロックバンド[Alexandros]のボーカル・ギター担当。ほぼすべての楽曲の作詞・作曲を手がける。毎年映画を約130本以上鑑賞している。「My Blueberry Morning」や「Sleepless in Brooklyn」と、曲タイトル等に映画愛がちりばめられているのはファンの間では有名な話。
ツアー情報
※タイトル未定
・7月16日(土) 北海道 札幌文化芸術劇場 hitaru
OPEN 17:30 / START 18:30
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全公演: ¥8,800(全席指定)
※未就学児童のご入場はできません / 小学生以上はが必要になります
※枚数制限: お1人様1会場につき2枚まで(申込者様+同行者様)エントリー可
※特定・電子のみ
【プレオーダー受付】
対象公演
7月16日(土)北海道公演~9月17日(土)沖縄公演まで受付
<2次> 4月18日(月)18:00〜4月24日(日)23:59