「常に新鮮な気持ちでアルバスを生きていきたい」 舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』アルバス・ポッター役藤田悠&福山康平インタビュー
──日本という新たな場所でカンパニーのメンバーそれぞれが“新しいこと”に挑んでいる。誇らしいですね。福山さんは先ほどコロナ禍に抱いた思いをきっかけに今作のオーディションを受けたとおっしゃっていましたが、藤田さんはどんなきっかけでオーディションを受けたんですか?
藤田:僕も俳優業を続けていくために「人生を賭けた」オーディションでした。大学で学生演劇を始めて、毎日もうそれしかやってないってくらいのめり込んで。やがて周りは就職を決めたりする時期に入るわけですけど、自分はやっぱりそれが受け入れられず、でも親は「そんな俳優をやらせるために大学へ行かせたんじゃない」って気持ちでもうお互いバチバチになっちゃって。そこで「大学を卒業する前になにか一個納得がいく結果を出したなら応援できるけど、そうじゃなければ就職してほしい」と言われたんですね。で、最後の望みを賭けてこのオーディションに応募を。僕、やっぱり演技することが好きなのでどうしてもこっちを続けたいと思ったんです。受かったときは心底安心しました。
──オーディション中になにか印象に残る出来事など、ありましたか?
藤田:これもういろんなところでも言ってるんですけど、スコーピウス役の(斉藤)莉生くんとオーディション終盤の頃にちょっと二人で話をしたんです。「僕も北海道で学生演劇やってるんです」「ほぉ〜」とか。その時雨が降っていて、僕が傘持ってなかったら「僕持ってますから」って傘に入れてくれて、駅までずっとお喋りして。違う役とはいえその時はオーディションを競うライバルでもあったんですけど、結構長い時間話をして「また会えるといいね」って別れました。で、次のオーディション日に始まるのを待っていたら、莉生が来たんです! お互い「うおおぉぉ〜、また会えたね〜っ」って、あの時はちょっと鳥肌立ちました。
福山:ドラマティック〜。いい話持ってるなぁ。
藤田:ハハハッ(笑)。
福山:僕は絶対「傘入って」って言われても断っちゃうからなぁ。
藤田:ほんと?
福山:なんか……イヤじゃないですか。まだオーディション終わってないし、もし自分はダメで相手が受かったらって思うと……ね。変なところ負けず嫌いなので。
藤田:(笑)そういうの、いいと思うよ。アルバスっぽくて。
福山:うん。オーディション自体、すごくいいオーディションだったと思います。オーディションなんだけど稽古しているような……僕らの実力を高めて「アルバスとしてこうやったら深まるよね」みたいな視点で「もう1回こここうしてみよう」「あ、すごくいいね。じゃあこっちはこうやってみよう」ってその場で演出してくださるというか。
藤田:そうだったね。
左から 藤田悠、福山康平
──「選ばれる」というよりも「共に創る中で見出していく」感じですね。
福山:多分僕らの人間性を見たいと思ってくれてたんだと思います。芝居を見せるのではなく、もっと楽に、楽にって。「カメラとか意識せず自由気ままにやって」という空気でのオーディションでした。
藤田:結局その時に「アルバスってこうじゃない?」と言ってもらったことが、今も自分の中に生き続けたりもするので……ということはやっぱりいいオーディションだったんですよね。
──ご自身の役、アルバスについてはどういうイメージを抱いていますか? ポッター家の次男、劣等感や反抗心を抱いた思春期の少年。
藤田:基本的にはずっと苦しんでいる。友人のスコーピウスと一緒にいるときは多分楽しいとかポジティブな感情になれると思うんですけど、それ以外はいつも「なんとかこの現状を打破してやる」とか「認められたい」「わかって欲しい」っていう気持ちが結構強いから……演じることはもちろん楽しいですけど、役自身は苦しいんだなって感じるので、その彼の思いが最後、報われるのかどうなのか……と。そこの心情や彼の変化はちゃんと肌感を大事にしながら演じたいですね。
福山:父親との関係、学校の中での立ち位置……すごく普遍的な、僕らも実際に体験したことがあるような気持ちでアルバスを演じているんですけど、僕は宗ちゃん(門田宗大)のスコーピウスと組むことが多くて、宗ちゃんとも「できるだけ自由にやりたいよね。特に二人のシーン」って話しています。今回公演期間も長いですが、その中で新鮮さを失わず、ひとつのシーンでもどれだけ毎回お互い自由にライブ感を持って演じられるかってところを大事にしていきたいと思いますし、僕のそういう可能性を宗ちゃんが引っ張り出してくれている感覚もあるので……役を創るうえでやっぱり一緒に演じる人に感謝しなければな、と思って取り組んでいます。
>(NEXT)三者三様な父・ハリー役 舞台ならではの魔法の世界