りょう×上條恒彦、小島聖×平田満が語る、濃密な2人芝居 『Heisenberg(ハイゼンベルク)』取材会レポート
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平田満、小島聖、りょう、上條恒彦(左から)
2022年7月29日(金)から中野 ザ・ポケットにて『Heisenberg(ハイゼンベルク)』が日本初上演される。
本作は、conSeptがストレートプレイを取り上げる「Dialogue in Theaterシリーズ」第二弾。『夜中に犬に起こった奇妙な事件』でトニー賞演劇作品賞を受賞した脚本家、サイモン・スティーヴンスによる2人芝居を2組の演出家とキャストによって上演する。
タイトルが示すように、ドイツの物理学者であるヴェルナー・カール・ハイゼンベルクの「不確定性原理」を下敷きにした本作。「二つの離れた粒子の運動量や相関関係を正確に測り決定することはできない」という意味を男女の関係性に置き換えて語っている。なにやら難しい話に聞こえるが、本公演ではウィットに富んだコメディタッチの会話の中から「互いの関係性が常に揺れ動き変化するさま」をじんわり炙り出す。
都内で取材会があり、出演するりょう、上條恒彦、小島聖、平田満が作品への思いを語った。
平田満「シンプルな生きている実感が伝わったら」
りょう
ーーまず、脚本を読んだときの感想をお願いします。
りょう:『Heisenberg(ハイゼンベルク)』は難しく聞こえる題材ですが、私としてはとてもシンプルでストレートな本だなと思いました。言葉、会話から見えるジョージーの決まった位置を私自身がしっかりと持って、お客様が「この人これからどうなるんだろう?」「何を言っているんだろう?」と多様に感じられるよう、お客様をストーリーに巻き込んで、お客様を揺らしていきたいなという気持ちでいます。
ストレートにそのまま。分からないことは分からないものとして、その中にジョージーの真ん中というものが見えてくるかなという感じで、稽古に臨みたいなと今は思っております。
上條恒彦(以下、上條):まず2人芝居は初めてなんですね。歌のない芝居に出るのもそうあることではなくて。ですから、ああいう芝居がやりたいな、歌のない芝居やりたいなとずっと思っていたので、両方の思いが叶って、すごく楽しみにしています。
実は……2月に『ラ・マンチャの男』がありました。幕が開いて、コロナの陽性者が出てしまって、公演を止めなくてはいけなくなって。そういう綱渡りのときに、僕も陽性になったんです。療養所に連れて行かれて、言い尽くせないぐらい辛い思いをした。でも、助かったのはですね、『Heisenberg(ハイゼンベルク)』のまだ準備稿だったんですけど、プリントもクリアじゃない台本だったんですけど(笑)、それを読むのが唯一楽しみで。
読めば読むほど、いい本だなぁと思いました。それを自分が演じるという前に、読み物としてですね、すごく思っていた通り、僕がやりたいなと思っていた世界が描かれている。それで全部合わせて十数日間、なんとか療養を頑張れたんですね。ですから幸先いいなと今は思っています。
りょう:上條さん、その期間でセリフを覚えちゃいました? どうしようと、ドキドキしている。
上條:大丈夫、僕は何度読んでも覚えられない。記憶力が減退する年齢ですしね。あなたについていきます(笑)。
上條恒彦
小島聖(以下、小島):分からないです。でもこの物語は分からないままでいいのかな。何回か読んでいるうちに、子どもと接しているときもそうなんですけど、たまに嘘をつく。嘘でしょと注意することがいいのか、嘘を肯定して物語として楽しむのがいいのか、いろいろ日常でもあって。ジョージーも子どもがいるのが本当なのかなとか、どれが本当なんだろうと今は思っている状態。
それを確かにしていくことも大切なことなのかもしれないんですけど、分からないまま、ずっと2人で会話を進めていくと何かが正しいことになるかもしれないし、そういう時間になっていったらいいのかなと勝手に思っています。
平田満(以下、平田):『Heisenberg(ハイゼンベルク)』というから科学者の知的な会話が続くのかなと思っていたら、いただいた本は男女の会話がずっとあって。しかも日常会話。普段だったら日の当たらない男女、しかも最初から惹かれ合うことはないだろうなという男女が、ある意味でラブストーリー的に展開していくんですけど、その2人が実はいろいろなことがあったんだろうなと。
恵まれていない2人がたまたま話す。しかも話がなんか食い違っているし。これって世の中によくあることだけど、聞いてくれる相手がいるというのは、ある意味幸せなことだし、そういう意味でやっていても、あるいは見てくださるお客様にも、シンプルな生きている実感みたいなものが伝わったら、あるいは伝えられることができたらいいなと思いました。