[Alexandros]川上洋平、シェフのスリリングな一夜を90分間ワンショットで捉えた『ボイリング・ポイント/沸騰』について語る【映画連載:ポップコーン、バター多めで PART2】

2022.7.6
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『ボイリング・ポイント/沸騰』より

■そこまでしてやったのがすごいなって思う

──英国インディペンデント映画賞では最多11部門にノミネートされ、助演女優賞とキャスティング賞と撮影賞と録音賞を受賞したそうです。

いやー、これを撮った技術チームに拍手を送りたいですよね。

――チャンネル数が38に及んでマイクが店内中に仕掛けられたって、すごい数ですよね。

基本は何人かの登場人物の周りだけで良いわけだけど、この映画の場合、たくさんの出演者が同時に動いてるわけだから。あとレストランの外にも移動するし。あの大移動の時とか、音響的には大変ですよね。

──チャンネル数が多すぎて、警察の無線システムを妨害しないように規制機関の許可を得たという。

そこまでしてやったのがすごいなって思う。でも監督のインタビューが飄々としていて、やろうと思ったらそれを実現する手法はあるってことなんだと思うけど。そういえば、ワンカットといえば、我らが[Alexandros]の「涙がこぼれそう」のミュージックビデオはワンカットですから(笑)。

──そうでした(笑)。あのMVめちゃくちゃ良いですよね。

ありがとうございます。洋MVのアプローチですよね。

──映画好きの川上さんっぽいアイディアですよね。

ですよね。しかも飯豊まりえちゃんが一瞬歌詞を間違えてるところもいいんですよね。

――初々しくてね。ワンカットっていうことは、カメラのフレームの外で、メンバーみんな衣装を早着替えしたっていうことですか?

しましたね。懐かしい。2、3テイク撮ってすぐ終わりましたね。

──リハは何回ぐらい?

リハも2、3回しかしなかった。カメラの構図を決めてそれくらいで終わった気がする。だからマップアウトしかしてないです(笑)。マップアウト‼

──その言葉気に入ってますね(笑)。自分が90分ワンショットを演じることになったらどうですか?

いや、90分はちょっときついですね(笑)。失敗のハードルをちょっと下げながらやるとかないと無理だと思うな。人が転んでかすり傷くらいだったら続行するとか。セリフの面でも、普通に生活してても言い間違いや言葉が出ないことはあるわけだから、それぐらいだったらとちっても許容範囲で進めていくとか。ライブですからね。舞台は止められないわけだから。

──ひとり芝居の舞台とかだと別ですが、基本は転換や自分が出ない場面があるわけで。でも『ボイリング・ポイント』はずっと背景として存在してますからね。

そうなんですよね。ずっと料理はしてないにせよ、包丁をいじったり、ずっと何かやってそうな感じがありますよね。皿洗いの男性が外に出て女性と会ってるシーンとかはさすがに次の準備をしたりしてるのかもしれないけど。よく練られてますよね。

――そうですよね。

今年、こういうワンシチュエーションで進行する映画があまりなかった気がしてたんですけど、久々にそういう映画が観れて良かったです。

──ちょっと前だったら『search』とか。

そう。あと、俺の好きなジェイク・ギレンホールがリメイクした『THE GUILTY』も良いですよね。さっき名前が出た『1917』も厳密にはワンカットじゃないけど、すごく好きな映画ですね。

『ボイリング・ポイント/沸騰』より

■レストランでスタッフさんたちの仕事ぶりを見るのも海外旅行の醍醐味

──登場人物それぞれの人生模様が交錯していく作品ですが、特に印象的な人物はいました?

デザートコーナーのちょっと年配の女性と若い男性っていうパティシエの二人組ですね。男の子の腕にためらい傷があって、それが目に入った瞬間に女性が涙目になって「何があったのか言わなくていいから」みたいなことを言う。そこで気まずくなるんじゃなく、ちゃんと受け止めてあげるのがいいなあと思いました。

──監督は12年間のシェフの経験があるということで、飲食店の労働環境のハードさをはじめとする様々な問題を盛り込んだそうです。

ああ、なるほど。ただ思ったのは、アメリカとかイギリスのこういう高級レストランの雰囲気って、ちょっと似てるなあって。どっちも割とオープンにキッチンの人同士が話し合ったり、お客さんに対してもチップがほしいからっていうのもあるかもしれないけど(笑)、おもてなしも含めてかなりフランクに話しかけて。

──会話でもお客さんを楽しませるみたいな。

そうそう。お客さんにあまり隠そうともせずに、厨房の人とホールの人が「今日こういう感じだよね?」とか喋ってて。レストランでそういうスタッフさんたちの仕事ぶりを見るのも海外旅行のひとつの醍醐味だったりするけど、日本だとそういう感じが許されないお店が多いイメージがあって。

──私語厳禁的な。

そうそう。もちろん向こうもダメなところはダメなんでしょうけど、日本ほど厳しくなさそう。そういうのが垣間見える感じも含めて良い映画だったなって。

――色々とリアルでしたよね。

すごいリアルだった。キッチンの子とホールの子が付き合ったりとか。ああいうシーンも好きだったな。驚いたのが、40分も遅刻してあんな軽い感じなんだ?みたいな。

──そうですよね(笑)。

全く反省してない感じでしたよね。40分って相当ですよ?

──日本の高級レストランだったらあの感じじゃ済まされなさそうですよね。

そういうところも含め、イギリスの文化がよく出てるなって。 あと、僕がちょっと気になったのは、シェフが小さいスプーンでソースか何かを味見するシーンで。ああいうシーンってよくあるけど、あのスプーンってちゃんと毎回洗ってるんだよね?って(笑)。

──綺麗好きの川上さんとしては気になるところですよね(笑)。

プチ潔癖なもので。もしSPICEの読者の方でシェフの方がいたら、「あれはこうしてるんです」っていうのを教えていただけたら嬉しいです。

――あははは。

でもあの仕草、かっこいいですよね。素早く味見して、「これでOK!」みたいなこと言って出すっていう。シェフは無理だけど、あれだけやってみたい(笑)。

 

取材・文=小松香里

※本連載や取り上げている作品についての感想等を是非spice_info@eplus.co.jp へお送りください。川上洋平さん共々お待ちしています!

上映情報

『ボイリング・ポイント/沸騰』
製作・監督・脚本:フィリップ・バランティーニ/出演:スティーヴン・グレアム、ヴィネット・ロビンソン、レイ・パンサキ、ジェイソン・フレミング、タズ・スカイラー
あらすじ:一年で最もにぎわうクリスマス前の金曜日を迎えたロンドンの人気高級レストラン。この日、オーナーシェフのアンディは妻子と別居しストレスで疲れきっていた。仕事に集中できず、衛生管理のチェックや食材の発注を怠ったアンディは、因縁深いライバルシェフのアリステアとグルメ評論家の来店にもプレッシャーを受けていく。さらに厨房とフロア係の罵り合いが発生し、スタッフの間に気まずい空気が流れる。そしてアンディはアリステアから脅迫まがいの取引を持ちかけられ、レストランの客に緊急事態も勃発。もはや心身の限界点を超えつつあるアンディは、この波乱に満ちた一日を切り抜けられるのか──。
7/15(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開
© MMXX Ascendant Films Limited

アーティストプロフィール

川上洋平(Yoohei Kawakami)
ロックバンド[Alexandros]のボーカル・ギター担当。ほぼすべての楽曲の作詞・作曲を手がける。毎年映画を約130本以上鑑賞している。「My Blueberry Morning」や「Sleepless in Brooklyn」と、曲タイトル等に映画愛がちりばめられているのはファンの間では有名な話。

リリース情報

[Alexandros] 8thアルバム『But wait. Cats?』
7月13日(水) リリース

[Alexandros]『But wait. Cats?』

・通常盤
UPCH-2243 ¥3,000(+税) CD 収録曲全13曲予定
 
・初回限定DVD付盤
UPCH-7628 ¥6,000(+税) CD+DVD
 
・初回限定 Blu-ray 付盤
UPCH-7627 ¥7,000(+税) CD+Blu-ray
 
<共通収録内容>
DVD / Blu-ray 
「12/26 直前の年末パーティー」~1 部・2 部制~ 2021.12.18 Zepp Tokyo
「THIS SUMMER FESTIVAL 2022」2022.4.28 東京国際フォーラム ホール A 他
 
・完全生産限定盤
UPCH-7626 ¥12,500(+税) 2CD+2Blu-ray
 
<収録内容>
CD Disc2
Rare Tracks & Demo CD
 
Blu-ray Disc1
「12/26 直前の年末パーティー」~1 部・2 部制~ 2021.12.18 Zepp Tokyo
「THIS SUMMER FESTIVAL 2022」2022.4.28 東京国際フォーラム ホール A 
 
Blu-ray Disc2
「Yoohei Kawakami's #room665 at Warehouse TERRADA」2021.12.25 他
 

ツアー情報

[Alexandros]アルバムリリースツアー
 
■日程 / 会場 / 時間
「But wait. Tour? 2022」
・7月16日(土) 北海道 札幌文化芸術劇場 hitaru
OPEN 17:30 / START 18:30
・7月18日(月祝) 北海道 北斗市総合文化センター かなで~る
OPEN 17:00 / START 18:00
・7月22日(金) 宮城県 仙台サンプラザホール
OPEN 17:30 / START 18:30
・7月24日(日) 岩手県 盛岡市民文化ホール 大ホール
OPEN 17:00 / START 18:00
・7月30日(土) 岡山県 倉敷市民会館
OPEN 17:00 / START 18:00
・8月8日(月) 京都府 ロームシアター京都 メインホール
OPEN 17:30 / START 18:30
・8月10日(水) 兵庫県 神戸国際会館こくさいホール
OPEN 17:30 / START 18:30
・8月12日(金) 熊本県 市民会館シアーズホーム夢ホール (熊本市民会館)
OPEN 17:30 / START 18:30
・8月14日(日) 広島県 広島文化学園HBGホール
OPEN 17:00 / START 18:00
・8月19日(金) 石川県 本多の森ホール
OPEN 17:30 / START 18:30
・8月21日(日) 新潟県 新潟テルサ
OPEN 17:00 / START 18:00
・8月30日(火) 神奈川県 相模女子大学グリーンホール (グリーンホール相模大野)
OPEN 17:30 / START 18:30
・8月31日(水) 神奈川県 相模女子大学グリーンホール (グリーンホール相模大野)
OPEN 17:30 / START 18:30
・9月7日(水) 静岡県 アクトシティ浜松 大ホール
OPEN 17:30 / START 18:30
・9月9日(金) 福岡県 福岡市民会館
OPEN 17:30 / START 18:30
・9月11日(日) 愛媛県 松山市総合コミュニティセンター
OPEN 17:00 / START 18:00
・9月17日(土) 沖縄県 那覇文化芸術劇場 なはーと
OPEN 17:00 / START 18:00
 
「But wait. Arena? 2022」
・10月15日(土) 愛知県 ポートメッセなごや 新第1展示館
OPEN 17:00 / START 18:00
・10月16日(日) 愛知県 ポートメッセなごや 新第1展示館
OPEN 16:00 / START 17:00
・11月16日(水) 大阪府 大阪城ホール
OPEN 17:30 / START 18:30
・11月17日(木) 大阪府 大阪城ホール
OPEN 17:30 / START 18:30
・12月7日(水) 東京都 国立代々木競技場第一体育館
OPEN 17:30 / START 18:30
・12月8日(木) 東京都 国立代々木競技場第一体育館
OPEN 17:30 / START 18:30
 
料金
全公演: ¥8,800(全席指定)
※未就学児童のご入場はできません / 小学生以上はが必要になります
※枚数制限: お1人様1会場につき2枚まで(申込者様+同行者様)エントリー可
※特定・電子のみ   
 
TOTAL INFO.
Livemasters Inc.
03-6379-4744(平日12:00~17:00)
 
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