抱腹絶倒の名作に浜中文一、相葉裕樹、日野真一郎、横山賀三ら新キャストが挑む 『ダブル・トラブル』稽古場レポート

レポート
舞台
2022.7.26
ミュージカル『ダブル・トラブル』~2022 夏 Season A~ 稽古場より

ミュージカル『ダブル・トラブル』~2022 夏 Season A~ 稽古場より

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ボブ&ジムのウォルトン兄弟によって書かれた『ダブル・トラブル』。作曲家のジミー・マーティンと作詞家のボビー・マーティンという兄弟がハリウッドのメジャームービーの曲を書くという大チャンスを掴むものの、与えられた時間はたったの数時間。気に入ってもらえなければ即クビという状況の中、二人の元には個性溢れる人物が次々に訪れる――。という流れで、恋に仕事に大奮闘する兄弟を描いた抱腹絶倒のミュージカルコメディだ。

出演者二名とピアノの演奏だけで約十名のキャラクターを演じる本作は、2021年に原田優一・太田基裕、福田悠太・辰巳雄大(共にふぉ~ゆ~)というダブルチーム編成で、同時期に異なる劇場で上演するという意欲的な挑戦を行った。2022年には新キャストを迎えてパワーアップして帰ってくる。今回はSeason AからCまで8名のキャストが集結。皮切りとなる「2022 夏 Season A」のメンバーは、ミュージカルからストレートプレイまで幅広く活躍する浜中文一、高い歌唱力を活かして多くのミュージカルで強い印象を残している相葉裕樹、テノールからハイトーンまで広い音域を自在に操る日野真一郎(LE VELVETS)、『ライオンキング』などの劇団四季作品への出演経験を持つ横山賀三の四名。演出は前回に引き続き多彩なジャンルで活躍するウォーリー木下、翻訳・訳詞は今作で第14回小田島雄志・翻訳戯曲賞(2021年)を受賞した高橋亜子が手がける。公演まで1ヶ月ほどとなったタイミングで行った、Season Aの稽古場取材の様子をお届けしよう。

この日の稽古は相葉裕樹と浜中文一がメインとなっていた。行われていたのは、映画女優のレベッカが兄・ジミーを誘惑するシーンと、ジミーとボビーがお互いの恋の相手を知って仲違いし、一幕が終わるまでのシーンだ。浜中が演じるコミカルだがセクシーな映画スター・レベッカに翻弄され、あたふたと逃げ回るジミーを、相葉はたっぷりの愛嬌を持って演じる。

出会ってすぐにレベッカの虜となるジミーについて、演出を手掛けるウォーリー木下からは「この短時間で彼女に落とされる理由付けがいるよね」という指摘が。「例えばすごくいい匂いがして、くらっと来ちゃうとか」という言葉に「なるほど」と頷いた相葉は、レベッカが近くに来た際の反応を分かりやすく見せることでジミーの心の動きを見事に表現。ジミーが恋に落ちる流れが明確になったことで、対するレベッカの強引な迫り方や二人の噛み合っているようで噛み合わないやり取りもますますユーモラスになった。

浜中はコケティッシュだがどこか雄々しいレベッカを魅力的に見せる。パワフルに暴れ回る姿が面白くて笑ってしまうものの、ジミーがくらっと来てしまうのも納得の色気とキュートさ。妙に心惹かれるレベッカにジミーが思い切り振り回されている様子が可愛らしい。二人の歌声の相性も良く、深みのあるハーモニーが物語に華を与えている。まだ稽古途中の段階ではあるが、初演のコンビとは違う個性があり、演じるキャストによってここまで印象が変わるのかと改めて驚かされた。

二人だけで全ての登場人物を演じるため、同じキャラクターをそれぞれが担当する場面も。声質や身長が違う中、どこで同一人物だと思わせるのかが難しいポイントだ。最初は相葉の声音に寄せていた浜中だが、ウォーリーの「真似をしすぎると台詞がスッと入ってこなくなるし、文ちゃんが出しやすい声でいいよ」というアドバイスもあり、動きのクセを合わせて雰囲気を近付けることに。相葉が提案するインパクト大な動きや台詞回しに稽古場では笑いが起きており、Wキャストである日野と横山が楽しそうに笑いながらも真剣な眼差しで動き方や台詞のきっかけを確認しているのも印象的だった。ところどころで日野と横山も稽古に参加し、四人で振り入れをしたり歌唱の確認をしたり。動線について日野が相葉に意見を伝えたり、セリフと曲の切り替えのタイミングで悩む浜中に相葉がアドバイスをしたりと、チームワークの良さが感じられる。

また、本作で舞台上にいるのはキャスト二名のみだが、それを可能にするために裏で多くのスタッフが動くため、動線や台詞、動きのタイミング、小道具の配置などについてはスタッフ同士で確認・連携しながら緻密に進める。台詞や手数が多い中でいかにキャストの負担を減らすか、それでいて面白さを最大限に引き出すためにはどうしたらいいか。ドタバタ感が楽しい作品だが、その裏には非常に繊細かつ冷静な計算があることが窺えた。

レベッカが去ると、浜中はボビーとして部屋に戻り、兄弟のやり取りがスタートする。仲の良いわちゃわちゃした様子に癒やされるのも束の間、ケンカが始まって険悪な雰囲気に。相葉と浜中は成人男性というよりは小さな子供のケンカのようなやり取りをチャーミングに演じ、仲良し兄弟の争いにハラハラしつつも笑ってしまう面白みを作り出している。生意気な弟につられてヒートアップしていく兄、それを見て少し冷静さを取り戻す弟という構図を大真面目に演じる二人のやりとりを、ウォーリーも楽しそうに見守っていた。

続いてレベッカの登場から一幕の終わりまでの通しが行われ、熱量と勢いがワンランクアップ。見ているだけで息切れしそうな忙しさだが、息の合ったチームワークによって軽やかにこなしていく様子に舌を巻いてしまう。ウォーリーは細かな部分まで演出を入れつつ、全体を俯瞰した絵作りをしている印象。舞台上で次々に色々なトラブルが起きることもあり、「このシーンではお客さんに何を見せたいのか」「観ている人の視線をどこに誘導したいのか」を話しながら試行錯誤を繰り返し、芝居を洗練させていく。次々に移り変わるシーンや多くの登場人物に観客が戸惑わないよう、台詞のトーンやキャラクターの解釈なども丁寧にすり合わせていた。ウォーリーのちょっとしたアドバイスで面白さが倍増し、稽古場内が笑いに満ちる一場面もあり、今後の稽古でますますブラッシュアップされて迎える本番への期待が高まる。

Season Aは2022年7月28日(木)~8月14日(日)までオルタナティブシアターにて上演。その後、8月16日(火)~30日(火)まで有楽町よみうりホールにて林翔太・寺西拓人によるSeason B、9月5日(月)~13日(火)まで自由劇場にて林翔太・寺西拓人と原田優一・太田基裕によるSeason Cの公演が行われる。

公演情報

ミュージカル『ダブル・トラブル』~2022 夏 Season A~
(A Musical Tour de Farce)
脚本・作詞・作曲:ボブ・ウォルトン&ジム・ウォルトン
翻訳・訳詞:高橋亜子
演出:ウォーリー木下
音楽監督:落合崇史/大塚茜
振付:TETSUHARU
タップ振付:本間憲一

出演:浜中文一 相葉裕樹 日野真一郎(LE VELVETS) 横山賀三

主催/企画・製作 シーエイティプロデュース


【公演詳細】
日程:2022年7月28日(木)~8月14日(日)
会場:オルタナティブシアター
料金(税込):指定8,800円 U-224,800円(22歳以下対象・枚数限定)
※U-22はぴあのみ取り扱い。公演当日、年齢の証明ができる身分証明書を提示の上、座席指定席券と引き換えが必要となります。その際、お座席はお選びいただけません。
※未就学児入場不可
 
公演Twitter:@wtroublejp

公演情報

ミュージカル『ダブル・トラブル』~2022 夏 Season B~
(A Musical Tour de Farce)
日程:2022年8月16日(火)~8月30日(火)
会場:有楽町よみうりホール
 
出演:林翔太 寺西拓人
脚本・作詞・作曲:ボブ・ウォルトン&ジム・ウォルトン 
翻訳・訳詞:高橋亜子
演出:ウォーリー木下 
音楽監督:落合崇史/大塚茜 
振付:TETSUHARU 
タップ振付:本間憲一

 
ミュージカル『ダブル・トラブル』~2022 夏 Season C~
(A Musical Tour de Farce)
日程:2022年9月5日(月)~9月13日(火)
会場:自由劇場
 
脚本・作詞・作曲:ボブ・ウォルトン&ジム・ウォルトン 
翻訳・訳詞:高橋亜子
演出:ウォーリー木下 
音楽監督:落合崇史/大塚茜 
振付:TETSUHARU 
タップ振付:本間憲一
 
出演:林翔太 寺西拓人/原田優一 太田基裕
 
~2022 夏 Season B & 2022 夏 Season C 共通INFORMATION~
 
料金:指定8,800円 U-22:4,800円(22歳以下対象・枚数限定)
料金(税込):指定8,800円 U-22:4,800円(22歳以下対象・枚数限定)
※U-22はぴあのみ取り扱い。公演当日、年齢の証明ができる身分証明書を提示の上、座席指定席券と引き換えが必要となります。その際、お座席はお選びいただけません。
※未就学児入場不可
 
お問合わせ:スペース 03-3234-9999 (平日10:00~12:00/13:00~15:00)
 
主催/企画・製作・:シーエイティプロデュース
 
公演Twitter @wtroublejp
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