「エレン・イェーガーから“決して逃げない強さ”を学んでいきたい」~「進撃の巨人」-the Musical-主演・岡宮来夢インタビュー
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エレン・イェーガー:岡宮来夢 (C)諫山創・講談社/「進撃の巨人」-the Musical-製作委員会
世界的大ヒットマンガ『進撃の巨人』が 2023年1月、「進撃の巨人」-the Musical-として舞台化される。主人公のエレン・イェーガーを演じるのは近年、ミュージカルを中心に舞台俳優として目覚ましい活躍をみせてくれている岡宮来夢。歌と、芝居と、バトルと“巨人”。画期的なステージングを駆使して舞台ならではのスペクタクルを展開する注目の一作に向け、その真ん中に立つ決意を語ってもらった。
ーーあの『進撃の巨人』、いよいよ舞台化実現です。出演が決まった時のお気持ちは?
僕は『進撃の巨人』と聞くと、学生時代の友達が「本当に面白いから読んでくれ」ってずっと勧めてくれていたことを思い出すんです。もちろん、当時から大きな話題になっているのは知っていました。でも「読み始めるとすごく面白いけど、すごく難しいから一気読みするのが良いよ」とも聞き……結局ちゃんと触れる機会を作れないまま過ごしてきてしまって。なので、このたびこのお話をいただいて「やっとこの作品に触れられる」という嬉しさをまず感じました。また、命を懸けて挑む人間のストーリーだということも教えてもらっていたので、「これはまたすごい覚悟を持って挑む作品になるだろうな」というピリッとした思いになったのが、最初の印象です。だから……その友達には舞台化の情報が発表された瞬間に連絡しよう、と思っているんですけど(笑)。
ーーでは、満を持して踏み入れた原作の世界は……。
読み始めたらもう、ページをめくる手が止まらないです。今、ちょうどここに(コミックスが)ありまして、本当に怒涛の展開というか、ずっとドキドキハラハラしながら読んでいて……でも「すごい」と同じくらい「難しい」と言っていた意味もわかったというか、ちょっと現代社会への風刺的な感じもあるのかな、と思ったり、予想以上に深い作品だということを実感しているところです。あるときから巨人のせいで自分たちの日常が変わってしまって、強い憎しみを抱くことになってしまう人々の様子とか、人間の営みを阻んでくるモノに対して、自分の夢や自由な人生を奪われないためにこんなにも強い気持ちで立ち向かっていくということもすごいと思うし、調査兵団の人たちの意志も……いやぁ「僕だったらどうするだろう」って悩みますよね、やっぱり。物語中にも規律違反とわかっていても戦いの途中で背を向けて、大切な人のもとへ戻ることを選択してしまう人もいて。
ーーでもその気持ちもわかるな、と。
「うん、そうだよね」って思いますよ。あんな圧倒的な巨人たちの力を前に、自分だったら……普通だったら、ずっと戦ってなんていられないです。
「進撃の巨人」-the Musical- メインビジュアル (C)諫山創・講談社/「進撃の巨人」-the Musical-製作委員会
ーーそんな状況の中、岡宮さん演じる主人公のエレン・イェーガーは率先して戦うことを選んでいきます。
はい。だからそのエレンの精神力の強さは、自分としても憧れる部分でもありますね。原作に描かれている彼のバックボーンがまた壮絶で。小さい頃から人間の汚い部分もたくさん見てきて……憎悪のようなネガティブな感情、すごくリアルな体験からの思いを持って生きている。そこを踏まえての精神力とか「俺がこの手で一匹残らず駆逐してやる」みたいな思いの強さはやっぱり並大抵の人じゃない。自分だったらきっとその強さを保ち続けられないと思うので……。
僕は、俳優をやっていて素晴らしい才能を持った方に出会うと絶望してしまいそうな時があるんです。最近、刀ミュの“双騎出陣“(ミュージカル『刀剣乱舞』 鶴丸国永 大倶利伽羅 双騎出陣 ~春風桃李巵~)で初めてご一緒した岡 幸二郎さんと唐橋 充さんも本当に素敵な俳優さんで、その稽古では、例えば岡さんがワンフレーズ歌ったのを聴いただけで、唐橋さんがワンシーン演じたのを見ただけで「もう、敵わないわ」って思うこともすごくたくさんありました。自分が実際おふたりの年齢まで俳優を続けられたとして、果たしてあの領域まで行けるのだろうかと思わされるくらいの人たちを目の前にした時、猛烈にその場から逃げたくなる気持ちって、やっぱりありますから。
ーー岡さんや唐橋さんは、いわば岡宮さんにとっての“巨人”。
そうですね(笑)。例えばスポーツでも「自分は今、全力で走っているけど、めちゃくちゃ練習しているけど、それでも相手はどうしようもないぐらいに強くて、何をやっても勝てる気がしない」みたいな気持ちになることってありますよね? だから相手がどんなに強大だろうと逃げ出さないエレン、絶対的なものの前でも引かないというエレンのあの精神の強靭さは、これから深く探っていきたい大きなテーマ。台本に書かれているからとかじゃなくて……形だけじゃなく、彼の“諦めない心”の根底にあるものをこの稽古期間と本番とでしっかり掘り下げていけたら、その経験がもう一周り自分自身を人としても大きくしてくれそうなので……役としても自分としても、とことんこだわっていきたいなと思います。
ーー今回はこの作品世界をミュージカルとして舞台に乗せていく、というところも大きな挑戦になるかと思います。
まだ劇中の音楽はいただいていないのでどうなるのか想像しているところですが、アニメで使われていた曲には恐ろしさや戦う意志が感じられて、音楽の中にもストーリーがあるぞという印象を強く受けました。今回のミュージカルでも、物語のイメージが膨らむ曲をたくさんちりばめていくんだと思うので、きっと壮大な音楽に圧倒される作品になるだろうと思っています。あとはやっぱりアクション! とにかく戦っている作品なので、やっぱりそのアクションをどう見せるか……そして一番は巨人をどう見せるか。僕自身が観に行く側だとしても『進撃の巨人』を舞台化しますって聞いたら絶対最初に「巨人はどうなるんだ!?」って思いますし、やっぱりそこはお客様もすごく楽しみだと思うので、舞台上の表現がどうなるのか、僕自身も相当ドキドキしています。楽しみすぎてあれこれ考えだしたらキリがないんですけど(笑)、単純に“人類対巨人”の対立構造を描くのではなく、登場人物それぞれがどういう思いを抱いているのか。また、仲間の間でもそれぞれの思いは少しずつ違っていて……という人間ドラマの深さも大切に描いていけるんじゃないかなと考えています。それら全部を総合して、重厚でかっこいいステージになることを期待しています。
ーー以前お話をうかがった際の「歌が好き」という言葉が心に残っています。今、歌とはどんな風に向き合っていますか?
刀ミュで言えば、ライブパートの曲だったらポップなものもあればしっとりした曲もあるし激しい曲もあったりと、その曲によって伝えることも込める思いも違います。僕はいつも「その曲を通して何を伝えるか」を毎回結構考えていて、「この曲の中ではこういうことを伝えたい」を必ずひとつは持って歌っています。あと今すごく思うのは……また岡さんの話になってしまうんですけど、稽古場で衣裳もセットもない時から、岡さんが歌うとそこに情景が浮かぶというか、色とかも見えてくるような感じがして「ああ、歌ってすごいな、ミュージカルって、やっぱりこんなにも奥深いものなんだな」って改めて実感して。僕もそんなふうに歌えるようになりたいな、と心底思うんです。やっぱり音楽って人間の記憶とか匂いとか、そういう感覚とすごく直接的に結びついている気がしていて……僕もジブリ映画の曲を聞いたら実家に帰りたくなりますし(笑)、そういう作用も素敵ですよね。なので、音楽の表現にはこれからもいろいろこだわり、お客様に伝えていきたいことや受け取ってもらえたときの感触を想像しながら、より深く丁寧に歌っていければと思います。
ーー岡宮さん自身は個人的に歌や音楽からどんなモノを受け取っているのでしょう。
めちゃくちゃ落ち込んだ時にこれを聴く、とかはありますよ。例えば、ベリーグッドマンさんの「ライオン」っていう曲はよく聴いていて、稽古中や本番中もすごく助けてもらってますね。歌詞を自分に置き換えると、すごく元気をもらえるんです。あとは、僕は結構本番前とか心が浮ついちゃうので、ルーティンとして気持ちがしっとりとする曲、ふーって落ち着ける曲を聴くことが多いです。
ーー高めるのではなく、「ちょっとチル」っていう感じの効果ですね。
そうですね、確かにチルっていう感じかもしれない。そして最近はそういう誰かの力になるような音楽を自分でも作れるようになりたいな、と考えるようになりました。
エレン・イェーガー:岡宮来夢 (C)諫山創・講談社/「進撃の巨人」-the Musical-製作委員会
ーー俳優としてだけでなく、アーティストとしての可能性も広げていこうと。
やっぱり「帝劇の0番に立つ」っていう夢はひとつ、目標として掲げ続けているのでそれは絶対に叶えたいこと。でもそこに限らず、それこそ今年もたくさんいろんな歌を歌わせていただいていますけど、作品とか劇場にこだわるだけではなくて、自分の伝えたいことや思いをどうやって表現するか、ということをやれるようになりたいので……作曲とか、作詞とか。最近はスマホのメモ機能に「歌詞」という項目を作って、気になったことをメモするようにしてるんです。まだ全然ありきたりなことしか書けてないんですけど、だからと言ってひねくれたことを書くつもりもなくって。やっぱり自分の思いの丈をその時の等身大な言葉で伝えることが僕は一番素敵だと思うから……。
ーーストレートに形にしていくことを目指している?
うーん……ストレートに伝えてはいくんですが、ただそのストレートが平凡な表現じゃなく、受け取ってくれた方の中でいろんな情景が浮かぶような素敵な言葉、自分らしい言葉をいろいろ見つけられるように日々を過ごしていきたいんです! 舞台のお仕事でも精進し、ちょっとずつ自分の思いを音楽でも伝えていける。そんなことができるようになっていけたら嬉しいですね。
ーークリエイティブの行方、想像すると楽しいですね。では最後に改めてこの注目作、「進撃の巨人」-the Musical-本番へ向けての思いをお聞かせください。
まずはここまで読んでいただきありがとうございます。『進撃の巨人』がミュージカルになる、と言っても、どういった作品になるのかは、今公開されているビジュアルだけではまだ全然想像がつかない部分がたくさんあると思いますし、カンパニー一同、ここから本当にたくさん考え、話し合って一つひとつ積み上げていくことになると思います。個人的には僕が大好きな三浦春馬くんが映画で演じた同じ役をミュージカルで演じる、作品を通じてエレン・イェーガーというキャラクターを共有できるのもすごく嬉しいです。とにかくみなさんの期待を超えられるよう一生懸命頑張っていきますので、舞台を観たことがない方も、原作が好きだから観に行ってみようかなという方も、ぜひ楽しみにしていてください。応援のほど、よろしくお願いいたします。
取材・文=横澤由香
公演情報
【大阪】2023年1月7日(土)~1月9日(月)オリックス劇場
【東京】2023年1月14日(土)~1月24日(火)日本青年館ホール
脚本:畑 雅文
音楽監督:KEN THE 390
作詞:三浦 香
エレン・イェーガー役 岡宮来夢
ミカサ・アッカーマン役 高月彩良
アルミン・アルレルト役 小西詠⽃
ジャン・キルシュタイン役 福澤 侑
マルコ・ボット役 泰江和明
コニー・スプリンガー役 中西智也
サシャ・ブラウス役 星波
ハンネス役 村田 充
キース・シャーディス役 林野健志
ディモ・リーブス役 冨田昌則
カルラ・イェーガー役 舞羽美海
グリシャ・イェーガー役 唐橋 充
ハンジ・ゾエ役 立道梨緒奈
リヴァイ役 松田 凌
エルヴィン・スミス役 大野拓朗
<Blade Attackers>
Toyotaka RYO gash! SHINSUKE HILOMU
Dolton KENTA GeN KIMUTAKU
下尾浩章 下川真矢 横田 遼 橋渡竜馬 中西彩加
MARISA 松本ユキ子 陸 NONN 河島樹来
主催:「進撃の巨人」-the Musical-製作委員会
一般発売日:2022年11月5日(土)10:00~